見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2025/05/20

パレスチナ自治政府ってなんだろう


 ハマス(ずーっと選挙してないとはいえ、軍事部門を抱えた政党のひとつ)と敵対しているとはいえ、こちらも選挙を行わずに安全枠に収まっているパレスチナ自治政府っていったいなんだろうと思いませんか?

ヨルダン川西岸地区のファタハ主導の政権の警察・治安組織がジェニン難民キャンプに侵攻しパレスチナ住民を攻撃したというニュースを読み、なおさらです

アメリカはもちろんのこと、ほとんどの西側諸国を味方につけたイスラエルが永年のシオニスト構想のもとに嘘をつきながらも堂々とパレスチナ人民に対する虐殺行為(ジェノサイドと呼ぶべきもの)を推進するなか、「いったいパレスチナ自治政府とやらはなにをしているのか?」との疑問を持った

わたしが定期購入するパレスチナのオリーブオイルの生産者、ヨルダン川西岸のガリラヤのシンディアナを昨年末から今年初めにかけて訪問した「パレスチナ・オリーブ」の通信にこんなニュースが載っていた
「昨年12月初めから今年1月半ばまで、パレスチナ自治政府(ヨルダン川西岸、ファタハ主導の政権)の警察・治安組織がジェニン難民キャンプに侵攻し駐留した。」
イスラエル軍がやるように、彼らは「住宅の水タンクを銃撃し、電線を切り、インフラを破壊した。ここを拠点とする武装組織を叩くというのが自治政府の言い分だったが、銃撃され死傷し、被害を受けたのはパレスチナの住民。」
「パレスチナ自治政府のこの攻撃に誰もが怒っていた。自治政府はもともと不人気だったが、2023年10月以降も何もできないことで評価を落とし、ジェニン難民キャンプへの侵攻で信頼は地に落ちたと感じた」とある
なお、1998年に合意して以来、パレスチナ自治政府とイスラエル軍は共同で「セキュリティ・コーディネーション(治安維持・協力)」を行っているそうなのだ

昨年12月中旬、ヨルダン川西岸ジェニンにある難民キャンプが攻撃され、多くの死傷者が出た。ここを拠点とするイスラーム組織ジェニン連隊は2023年10月のイスラエルのガザ侵攻以前からイスラエル軍と衝突してきたが、今回攻撃したのはパレスチナ自治政府の治安部隊。激しい銃撃戦でジェニン連帯のヤジド・ジャイセフ司令官の死も報じられている。ガザであれほど多くの犠牲者が出ているなか、なぜ、パレスチナ人同士の争いが激化しているのか。

パレスチナ自治政府は「パレスチナ人を代表する組織」として国連でもその立場を認められている。その配下にある治安部隊はパレスチナの治安維持の権限を担う。自治政府の基本方針は国連決議で「パレスチナの土地」と認められたヨルダン川西岸地区とガザ地区にパレスチナ国家を建設することにある。これは1993年のオスロ合意でイスラエルとパレスチナが約束した内容でもある。

自治政府の中核を占めるファタハは今でこそ政党だが、60年代から80年代にはパレスチナ全土の解放を掲げ、イスラエルとの全面衝突を繰り返した武装組織だった。当時はイスラエル、アメリカから「テロ組織」と呼ばれた。

だが、その後限界に直面したファタハは国際的支持を得られる「2国家建設」に舵を切り、ヨルダン川西岸とガザだけでも確保する道を選んだ。当時、この方針は多くのパレスチナ人から支持された。

ところが、オスロ合意以降もイスラエルとの衝突は止まず、経済も停滞するなか、自治政府の方針に反発するパレスチナ人が増えた。この不満を吸い上げて力を増したのがハマスだ。彼らはあくまでもパレスチナ全土をイスラエルから奪還することを掲げた。自治政府とハマスの方針の違いから2007年に衝突、ハマスはガザを武力制圧する。それ以降、パレスチナは自治政府が部分的に統治するヨルダン川西岸とガザで分裂した状態が続くが、2017年、エジプトが仲介して10年あまりに及ぶ確執に終止符が打たれるかに思えた。

自治政府はイスラエルのガザ侵攻に抗議はするものの、ハマスとは距離を置いてきている。
とはいえ、パレスチナの穏健派と過激派が直接戦火を交えることは決して多くなかった。だが、今回、治安部隊がジェニン連隊(全土奪還を目指す過激派のひとつ)に激しい攻撃を加えたことにはガザ侵攻の影響が無視できない。

昨年8月、イスラエル軍はヨルダン川西岸で大規模な掃討作戦を開始し、ジェニン一帯にも部隊を進めた。難民キャンプがテロリストの巣窟になっていると主張し、ブルドーザーでパレスチナ人の家屋などを次々と破壊した。

中東カタールの放送局アルジャジーラは、「自治政府はハマスに奪われた主導権を回復するためにジェニンを攻撃したようだ」、「ジェニン攻撃で治安部隊はアメリカ製の兵器を用い、イスラエル軍と同じように水道、電気を遮断、一般市民にも無差別に発砲した」との専門家の見解を紹介、自治政府はイスラエルやアメリカの好意を得ようとしていると糾弾した。
これに応えて、自治政府はアルジャジーラのヨルダン川西岸での報道活動を禁じた。アルジャジーラは信頼できる中東メディアとして多くのユーザーを抱えており、これまでイスラエルの軍事作戦を詳細に報じて批判を展開してきた。
昨年5月にはイスラエルでの報道活動を禁じられた経緯がある。

(参考:BBC、ロイター、朝日新聞)
https://www.paleoli.org/about-us/