見つけた 犬としあわせ

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2009/06/09

草食男子 herbivore men



「セックス、金儲けに興味のない日本の草食男たち」という記事がCNNにありました。「草食男子:herbivore men」は、日本人作家でポップカルチャー・コラムニスト、深澤真紀の造語です。男らしさとは何ぞやで、この男性たちが日本の概念を変えていると彼女は言います。

写真の男性は、元CNNのインターン、ほり・じゅんいちろう。
自称「草食男子」
(CNN NEWS 07June 2009)

以下は、日経ビジネスで見つけた造語の母、深澤真紀へのインターヴュー記事から抜粋ーー。

◇草食男子 by 深澤真紀 日経ビジネスonline 2009年2月26日

今、「草食男子」が注目を浴びる理由は何か。連載著者であり、名づけ親である深澤真紀氏にお聞きした。
(聞き手:日経ビジネス オンライン編集委員 大塚 葉 構成:橋中 佐和)

深澤:最初に書いたのは、2006年10月です。連載「U35男子マーケティング図鑑」の第5回で「草食男子」を紹介しました。

——もう2年以上前ですね。

深澤:最近になって「草食」という言葉が注目されて、ちょっとびっくりしています。

・「据え膳を食う」方が男らしくない

——連載5回目で登場した「草食男子」ですが、今はいろいろな解釈が出てきています。深澤さんが最初に定義された「草食男子」は、どんな男子だったのでしょうか。

深澤:「平成男子図鑑」で取り上げた男子のすべてに言えるのですが、「上の世代の“男らしさ”に違和感を感じていること」が彼らの前提になっています。
 「草食男子」は恋愛やセックスがカジュアルになった世代ですから、がつがつしていません。
 上の世代がよく言う「据え膳食わぬは男の恥」とか「送り狼」という言葉の意味が、彼らには分からない。「なぜ女と見たら口説いたり、セックスすることを考えないといけないんだ?」と思っています。
 また、「草食男子」は上の世代のように「男女に友情は存在しない」とは思っていませんから女友達も多いですが、その代わり女性とのつき合いを特別なこととは思っていません。
 「草食男子」は「男から告白する」とか「男がデートの段取りを考える」とか「男がデート代を払う」とか「男がプロポーズする」ということにもとらわれていません。“男女関係が割り勘”なんですね。
 よく「草食男子は男らしくない」と批判する人がいますが、「据え膳」をむやみに食ったり、「送り狼」をする方がよっぽど男らしくないと思いませんか?
 それに男女関係でも、男性ばかりが積極的に動くのではなく、女性だって自分でデートの段取りをしたりプロポーズをしてもいいと思いますし。
 私は「草食男子」は「新しい男らしさを持った存在」だと思っています。

——当時は、「草食男子なんているはずがない」「あり得ない」というコメントもありましたが。

深澤:最もあり得ないと言われたのが、一晩同じ部屋で過ごしても添い寝をするだけの「添い寝男子」です。
 「そんなやつは絶対にいない」と言われましたが、最近になってやっとその存在が認められるようになりました。
 そもそも、男女が同じ部屋にいたら必ずセックスしなければいけないと思い込むのも、どうかと思うんですが。

——恋愛やセックスに対してあまり積極的でない男性を「草食男子」と名づけたわけですね。

深澤:はい。もちろん「草食男子」にも恋愛に関わる苦労はあるのですが、上の世代とは恋愛やセックスに対する価値観が違うということです。

・恋愛とセックスのカジュアル化

——「草食男子」が増えた理由を、どのように分析していますか。

深澤:私は「草食男子」がとても増えたとは、そんなに思っていないんです。もともと男性の2〜3割は草食男子のような存在だったと思います。
 もともと日本の男性は、恋愛やセックスにがつがつしている人ばかりではないと思うんです。恋愛至上主義は、戦後、特にバブル期の流行のようなものですし。
 ですから「草食男子」が増えたというより、バブル世代以降、女性の恋愛観やセックス観が変わってきたことに注目すべきだと思います。
 バブル期以降女性の恋愛観とセックス観が一気にカジュアル化して、今は「結婚前にセックスしない方が問題がある」とさえ思われますよね。

——これについては、連載でも興味深いデータを紹介していただきました。

深澤:1987年と2005年の厚労省「出生動向基本調査」によれば、性交経験率が、20年前は20代前半の未婚女性で32%——3分の1だったんですが、今は54%で半分を超えている。この20年間でセックス経験のある女性が1.7倍にも増えているわけです。
 一方男性は、20年前は53%で、現在は58%。微増ですが、ほとんど変化なしと言えるでしょう。女性のセックス経験率が増えて、男性とほぼ同数になっていることは大きいですね。

——それが「草食男子」が増えた(ように見える)理由の1つですね。

深澤:もう1つの原因は、アダルトサイトなどの充実ですね。
 日本人はもともと、恋愛よりも“性愛”に興味があるので、春画などが充実していました。今でもアダルトビデオやアダルトサイトはとても充実していますし、細かい性的嗜好に合わせた様々なジャンルのものもありますし、いろいろなグッズも充実していますから。

——そういった理由で上の世代の男性ほどセックスにがっつかない。だから女性にお金をかけることもない、と。

深澤:そもそも彼らには今、かけられるお金もないわけです。そんなことに使うくらいなら貯金したいと思っています。不況でいつ仕事がなくなるかも分からないし、「この1万円で1週間は食いつなげる」と思ったら、恋愛にお金をかけられない気持ちも分かります。
 草食男子に対して、ドラマチックな恋愛を望むことはできないかもしれませんが、その代わり日常生活を一緒に楽しめる存在だと思います。

 「草食男子」は「恋愛や人間関係が苦手で傷つくのが怖い」とも言われますが、むしろ、相手を傷つけることが嫌なんだと思います。
 「草食男子」は恋愛やセックスで女性を傷つけることが嫌なんです。自分のことだけではなく、他人のことも傷つけたくないんです。つまり彼らなりに、人間関係を考えているということです。

・「草食男子」は多様化している男性の象徴

深澤:もちろん、今でも「肉食男子」はたくさんいます。肉食男子の方がまだ多数派でしょう。「草食男子」という言葉が流行して、彼らの存在が増えたように見えているだけです。
 肉食男子も「いつも肉食じゃなくて、時々草食でもいいな」と思うようにもなってきていますし。
 バブル期に日本の女性の生き方が多様化したように、バブルがはじけて以降長い不況が続く日本で男性の生き方も多様化したのです。
 「草食男子」は、あくまでも男性が多様化した1つの例だと思います。

 今でも旧来型の“男らしさ”や“女らしさ”だって選択できますし、それとは違う生き方も選択できるようになったわけです。
 女性にとっても男性にとっても、生き方が多様化している方がずっと生きやすいはずです。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090224/187180/?P=1