見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2008/05/04

ディーン・カーメンのSlingshot




あの画期的な乗りもの「セグウェイ」を憶えているだろうか。ジョージ・W・ブッシュがうれしそうに自分とこのひろーい敷地で乗り回している映像を見た方も多いはず。あれを発明したディーン・カーメン氏がコメディセントラルの番組で実演した浄水器は、もとの水がなんであれ(海水、水たまりの濁った水、化学薬品の毒入り排水、尿やヒ素だって)従来の電力のわずか2%で一つの村に一日1000リットルの「きれいな水」を供給できる設計なんだそうだ。フィルターはまったく使用せず、捨てるものはなにもない。ただ蒸溜するだけ。
スターリングエンジン(セグウェイもそう!)で発電する「スリングショット(浄水器の開発コードネーム)」の目標価格は1000ドルから2000ドル。AP通信はそれを「水とパワーを個人の手に戻すことをめざしたダビデとゴリアテの物語」と形容する。
ワオー、この価格で実現すれば、少なくとも渇きのせいで死ぬ人はいなくなる。
以下、もうひとつの「きれいな水」のおはなしーー。

◇市販のミネラルウォーターよりきれい(オレンジ郡の施設長いわく)
カリフォルニア州ファウンテンバレー発:カリフォルニア州南部が深刻化する水不足に直面する中、同地域のオレンジ郡は4億8000万ドルの費用を投じ、排水を飲用可能になるまで浄化できる最先端のマイクロフィルトレーション(精密ろ過)システムを導入した。
このシステムは「Groundwater Replenishment System(地下水再補充システム)」と呼ばれ、2008年1月10日から、浄化された水の供給を開始している。
この種のシステムとしては世界最大級で、オレンジ郡で暮らす10万世帯以上に、他の地域から買い入れる水なみか、それ以下の安価で水を提供できるという。また、下水を浄化システムに取り込むため、天然の水源に捨てる排水の量も減らせるという利点もある。
新浄水施設が完成したのはここが初めてだが、同じカリフォルニア州内以外にもテキサス州やフロリダ州の多くの都市が導入を検討している。
1日あたり約26万キロリットルの水をオレンジ郡盆地の帯水層に還元するこの施設のろ過プロセスを、かいつまんで写真で紹介してみよう。

写真1:ていねいな表示と矢印がついたこれらのパイプ類は、この浄水施設になくてはならないものだ。一番上の青い管の内部には、細いシルバーのパイプが複数通っていて、マイクロフィルターでろ過された排水を次の工程に送る。
「backwash(逆流させてろ過器を洗う)」と書かれた管は、すでにろ過された水を数時間ごとに一度ずつマイクロフィルトレーションシステムに逆流させ、ろ過システムを通る水の流れをスムーズにしている。
システム全体は週に一度、圧搾空気と酸で徹底的に洗浄される。洗浄に使う空気は「air scour(空気洗浄)」と書かれた管を通って入る。

写真2:逆浸透(RO)シリンダーでは、強い圧力をかけられた処理水が何層もの薄い合成樹脂の膜を通過していく。
RO工程を経ることで、ウイルス、塩類、殺虫剤、その他ほとんどの有機化学物質は取り除かれる。医薬品成分など、取り除けない有機化学物質もあるが、それらは次の段階の紫外線処理で除去される。

写真3:紫外線処理は、カナダに本社のあるトロージャンテクノロジーズ社の紫外線装置「TrojanUVPhox」を使って行なう。
スチール製シリンダーの内部にランプが並んでいて、ここで水に紫外線を照射する。処理水に過酸化水素を加えて紫外線と反応させることで、マイクロフィルターや逆浸透処理で除去し切れなかった不純物をほぼすべて取り去ることができる。

浄化された水は、最後に米ジェネラルエレクトロニック社製の2000馬力の巨大モーターで帯水層へと戻される。この水は、もともとあった帯水層の水と混ざり、いつでも利用可能な状態に置かれる。
現在の浄化性能は1日あたり約13万キロリットルだが、この施設がフル稼働すれば、1日あたり約26万キロリットルの水を浄化し自然に戻すことができる。
この施設は、将来的に増築して処理量を2倍にまで増やせる設計になっている。それが実現すれば、現在オレンジ郡が他の地域から供給を受けている1日あたり約53万キロリットルの水をこの施設ですべてまかなえるようになる。
これは非常に大きなメリットだ。というのも、外部から引き入れている水の販売価格は市場で決まるため、水不足の時には価格が急高騰するのに対し、リサイクルされた水は固定価格で販売されるからだ。
(wiredvisionnews2008年3月11日)