見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2020/10/18

科学誌ネイチャーの社説

 


◇科学と政治の離れがたい関係

英科学誌ネイチャー社説 06 OCTOBER 2020


科学誌ネイチャーが今まで以上に政治を報道範囲に入れる必要がある理由


科学と政治は分けられない、ネイチャー誌は次の数週間から数ヶ月のあいだにもっと多くの政治ニュース、コメント、プライマリーリサーチ(ある目的を達成するために新たに企画してデータを収集する調査)を公開していく。

ネイチャー誌は初期の号から科学と政治に関するニュースや解説、プライマリーリサーチを公開してきた。だが、なぜ科学誌が政治を報道範囲に入れる必要があるのか?これは読者がよく尋ねる重要な質問だ。


今週、ネイチャー誌の記者は、11月3日のアメリカ大統領選でジョー・バイデンが勝利した場合、科学にどんな影響があるか概略を述べてドナルド・トランプ大統領の科学に対する困ったレガシーを記録に留める。わたしたちは世界中から政治報道を増やし、政治学および関連分野でもっとプライマリーリサーチを発表することを考慮して準備する。科学と政治は常に互いに依存してきている。


政治家の決定と行動は学術研究資金と学術研究方針の優先順位に影響を与える。同時に、環境保護から事実や知識の倫理まで、科学と学術研究は情報を提供してさまざまな公共の政策を具体化する。政治家の行動は大学教育環境にも影響を及ぼす。彼らは学問の自由が支持されること、そして平等や多様性や包含関係を守るため、以前は疎外されたコミュニティからの意見にもっと多くの機会を与えるため、教育機関がより一生懸命に取り組むことを教育機関に確約することを保証できる。しかしながら、政治家には反対のことをする法律を可決する力もある。


これまで100万人以上の命を奪ったコロナウイルスの世界的流行は科学と政治の関係をこれまでにないほどおおやけの場に進ませてきており、かなりの深刻な問題を目立たせた。コロナ関連の研究は感染症として前例のない速さで示されてきており、当然、政治指導者たちが彼らの決定を導くためにいかに科学を活用しているかに、そしてまたいかに真意を理解しないか科学を誤用または隠すかに強い世界的な関心がある。そして政府が意見を聞くかまたは政府に雇われる科学者と政治家とのあいだの揺らぐ関係に多くの関心がある。


脅威を受けている学術的な自主性


ことによるともっと厄介なのは政治家が学術的な自主性または学問の自由を保護するという原則を後退させている徴候だ。以前の文明を含め、何世紀にもわたり存在してきたこの原則は現代科学の核心に位置する。


今日、研究のために公的資金を入手する研究者は科学の指導または最終的な結論において政治家から口出しが来るものと思えないかまたは介入は非常に限られていることをこの原則は意味するとみなされる。そして政治家や役人が研究者から助言または情報を求めるならばその答えを命じることはできないというのが条件だ。これは科学と政治との間の盟約の基礎であり、研究、教育、公共政策、規制のさまざまな分野に適用される。


研究者と政治家のあいだには各自が約束を守るという程度までの信頼が欠かせない。そしてこの信頼がだんだん衰えだしていくと、組織もまた脆弱に見え始める。


その信頼が今や世界中で無視できない圧力を加えられている。気候変動の分野では、人間が原因であることを示す争う余地のない証拠を無視したり陰険な手段で傷つけようとする政治家のせいで何年にもわたり裂け目がはっきりそれとわかってきている。だが、効果的な政策立案に検証可能な知識と研究が必要とされる他の公共の領域でもこの信頼の欠如が見られるようになった。


昨年、在任期間中にアマゾンの森林破壊が加速したという機関の報告書を大統領が認めようとしなかったので、ブラジルのボルソナロ大統領は国の国立宇宙研究所の所長を解任した。同じ年に100人以上の経済学者がインドのモディ首相に手紙を書き送り、国の公式統計、特に経済データに対する政治的影響力の終わりを迫った。そしてちょうど先週、日本では後継の菅首相がこれまで政府の政策について批判的だった6人の会員候補の学者の日本学術会議への任命を拒否した。日本学術会議は日本の科学者の意見に相当することになっている独立した組織だ。これが起きたのは2004年に首相が任命を承認することが始まって以来、初めてのことである。


パンデミック(世界的流行)もまた、科学への政治的口出しの例をさらけ出している。イギリスで6月に統計規制当局が政府に手紙を書き送り、コロナウイルス感染症の検査データについて繰り返される不正確さを強調した。検査データは「考えうる最大限の検査数」を見せることを目的としているようだと規制当局は言う。


公衆衛生と感染症研究の分野ではパンデミックの影響とそれをいかに抑制するかについて多くのことが明らかになっている。今年、コロナウイルス感染症に関する大量の研究がウイルスと病気の両方の性質、行動に説明の光明を投じた。だが、世界中の政治家からわたしたちが遭遇している態度、ふるまいを許さない。トランプの悪名高い行動によって典型的に示される、攻撃されて名声を傷つけられ掘り崩される科学者といっしょに混沌とした常に情報不足の反応である。


国が学術的な独立性を尊重するという原則は現代の研究を支える基盤のひとつであり、その低下、衰退は、研究と政策立案に関して質と完全性の基準に重大なリスクをもたらす。政治家がこの約束を破るならば、人々の健康や環境、社会を危険にさらす。


これが、科学誌ネイチャーのニュース特派員が世界中の政治と研究で起こっていることについてじっと監視して報告するための奮闘を倍加する理由だ。そして科学誌が政治学でもっとプライマリーリサーチを発表しようとしている理由である。


そして、これらの社説では、学習と協力の精神を受け入れること、同じでない種々の観点を尊重すること、科学的および学術的な自主性に対する彼らの付託を尊重することを、政治家に促し続ける。


科学と政治との関係を手引きしてきた慣例、約束が脅威にさらされている。そしてネイチャー誌は黙って傍観することはできない。


https://www.nature.com/articles/d41586-020-02797-1