見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2007/12/10

カヌーマンとピアノマン


数日前にCNNで盛んに流れていたニュースがあり、2002年にカヌーで溺死したとされ行方不明のまま死亡が確定した夫の保険金を受け取った妻がパナマで不動産を買っており、そのアパルトマンで死亡したとされる夫の姿を目撃した住人から話を聞いていた。これはイギリスで連日報じられ一躍有名になった「カヌーマン」の話である。この57歳の男性が詐欺容疑などで逮捕されることになったのは、5年半ぶりに警察署に姿を現して、自分は行方不明の男のようなのだと名乗りを上げたためだった。妻いわく、事情を知らない息子たちにどうしても会いたくなったんでしょう、彼は自分には「2000年から記憶がなく、どこでどうしていたかまるでわからない」と警察に事情を説明した。以下ニュースを追ってみるーー。

◇英国でカヌーで北海沖に出たまま姿をくらまし、死亡保険金を騙し取った疑惑が持たれているジョン・ダーウィン容疑者の妻が9日、渡航先から英国に帰国したところを逮捕された。警察関係者がCNNに語った。
ジョン容疑者は8日夜、旅券不正申請罪と送金詐取罪で起訴された。10日にハートルプール治安判事裁判所に出廷する。
(CNN 2007年12月10日)
◇5年前に行方不明になり、死亡宣告を受けた英国の元刑務官が記憶喪失のまま今月1日警察に出頭した奇跡のような話は、実は全部ウソだった。しかも、死亡保険を受け取った妻とパナマに移住するなど計画的だった。地元警察が詐欺とパスポート偽造の疑いで逮捕、厳しく調べている。ドラマのような筋書きに英メディアは「カヌーマン」と呼び、連日大きく報道している。
「カヌーマン」ことジョン・ダーウィン被告は1日、ロンドンの警察署に「過去の記憶がないんだ」と出頭した。人相や背格好が、02年3月21日に英北東部ハートルプールでのカヌー海難事故で死亡したと思われた人物と一致した。だがダーウィン被告の地元クリーブランド署は9月から内偵捜査を進めており、事故を装った詐欺事件として立件した。
調べで、ダーウィン被告はあっさりと事故の偽装を白状。15万5000ポンド(約3565万円)の死亡保険を妻に受け取らせていたことを認めた。また、刑務官だったため英政府から死亡退職手当、遺族年金も支給されていたことも明らかになった。
供述では1万ポンド(約230万円)の借金があり、その穴埋めで事故を偽装したとしている。失踪から1年後に英中部の自宅に戻り、壁続きとなる隣家に昨年まで潜伏。妻の部屋のチェストをずらすと隠れ家につながる忍者屋敷さながらの細工をしていた。
逮捕が決定的となったのは1枚の写真。ダーウィン被告は「ジョン・ジョンソン」の名前でパスポートを偽造、昨年7月以降にパナマに夫婦で渡り、購入した家の前で記念写真をパシャリ。出頭時には「5年ぶりの生還」として父親らの喜びのコメントが掲載されたが、問題の記念写真を大衆紙ミラーが特ダネ掲載して事態が一変した。また、今年4月に妻が帰国し、10月に自宅を売却した29万5000ポンド(約6785万円)のフランスの銀行への不審な送金も捜査対象となった。
イブニングスタンダード紙では、警察関係者の話で「これは妻がすべての金を巻き上げたことに腹を立てたジョンの仕返しという可能性もある」としている。
(日刊スポーツ2007年12月10日)

2005年にやはりメディアをにぎわせた「記憶喪失」にまつわるもっとおもしろい話。「ピアノマン」って憶えていますか。以下、当時のデイリーミラー紙からカットアップでお伝えします。

◇ピアノマンの正体がついに判明か
これまで4ヶ月におよび沈黙を続けたピアノマンがついに自白、ニセ物であることが明らかになった。最新の報告では「実際にはピアノマンはピアノがまったく弾けなかった」という情報も伝えられている。そして今、ピアノマンは彼を保護していた精神病院のスタッフに自分の正体を明らかにした。彼はドイツ出身のゲイだった。
ピアノマンの告白
父親はドイツで農場を経営しており彼には2人の姉妹がいる。今回イギリスで保護される前はパリで働いていたが、職を失い、ユーロスターでイギリスに向かった。そして4月、イギリスの海岸で自殺しようとしていたところを警察に保護された。
先週、やっとピアノマンはドイツに帰国した。彼を世話するために大金をかけてきたイギリスの病院は今後彼を起訴するつもりである。また医師によれば、ピアノマンはかつて精神病院で働いていた経験があり、そこでおぼえた患者の症状の特徴をまねながら彼独自の症状を作り上げることで医師らをうまくだまし続けてきたものと推測している。
ピアノマンは発見されてまもなく病院のスタッフから渡された紙にピアノの絵を描き、病院のチャペルで「驚くべき才能」でピアノを演奏したと伝えられた。だが今回の情報によれば、実際にはピアノマンはたった一つの鍵盤を繰り返し叩き続けていただけだった。そしてまた彼の自供によれば、彼がピアノを描いたのは「単にそれが最初に頭に浮かんだから」というのである。
病院関係者はこのように語っている。「彼の話によれば、警察に保護されたとき彼は自殺しようとしていた。そのとき彼は確かに心神喪失の状態にあり、警察になにも喋らなかった。そしてそこからすべてが始まったわけです。」
「これまでの多くの報道とは裏腹に、彼はピアノを上手に弾いたことなど一度もなかった。ただ単にひとつの鍵盤を叩き続けていただけなんです。それに彼はまったくピアノは弾けないと認めています。」
メディアとピアノマン
2005年4月8日、その日海岸を彷徨してたその男は、年齢20代から30代、身長180cmほどで心神喪失の状態にあり、警察に対し一言も発することはなかった。男はいったんケントのジリンガムに運ばれた後、ダートフォードの精神病院へ護送された。その後ピアノマンの話題は世界中を席巻し、ドイツから日本までの報道関係者が病院を訪れ、行方不明者連絡会のもとには数千件にのぼる電話や手紙が寄せられることになった。
有力な情報としてフランスのミュージシャン説からチェコのピアニスト説などに基づき、ピアノマンの正体を突き止めるべく情報収集が行われたが、彼の身元はおろか名前さえ明らかにならなかった。
後にこの男性は何らかの心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていると診断され、さらに自閉症の症状だと推測された。自閉症者の中にはピアノマンのように外部とのコミュニケーションを閉ざす一方で、数学や絵画などに驚くべき才能を発揮する人々がいることで知られている。また保護された当初、ピアノマンの衣服からはラベルがすべてはぎ取られており、靴のブランドラベルもこすって消されていたが、これもまた彼が自閉症者であるとの推測に結びつくことだった。
ピアノマンが手渡された地図のオスロを指さしてノルウェー語の通訳から話しかけられた際にかすかな反応を示したことから、アイルランドからノルウェーに渡ったドミニクという留学生ではないかとの推測もあった(これはドミニク本人によって否定された)。またチェコのピアニスト、トマス・ストルナドではないかとの推測もあったが、これも本人がチェコのTVに登場し、否定した。
いよいよピアノマンは詐欺師ではあるまいかとのウワサに対し、先月ケント西部の当局者が明確に否定してこう語った。
「彼は今でも非常に弱っており、神経質な状態が続いております。彼がウソつきに思える要因はまったくありません。」
さらに英国自閉者協会の医師ジュディス・グールドはこのように語っている。
「彼の姿はわれわれが知る自閉症患者の姿とほぼ一致しています。絵画やピアノを延々と続けることや、衣服のラベルを切り取る行為も、彼が自閉症患者であることを連想させるものです。また彼は人のことをじっと見つめる傾向がありますが、それもわれわれがよく知る自閉症患者の症状です。」
英エジンバラ大学臨床心理学者のステファン・ローリーはこのように語っている。
「この種の緊張型症状を見せる患者は統合失調症か自閉症の可能性が高いでしょう。彼の場合には、自閉症の症状である可能性が非常に高いと思われます。あるいは慢性的な鬱症状である可能性も考えられます。」
社会福祉士のマイケル・キャンプは「彼は非常に緊張しているので、そばに近寄ることもできない。」と語っている。
◇ピアノマンの父親、騒動を全く知らず
どうやらピアノマンはアンドレアス・グラッスルという名の人物であるらしい。また、ようやく再会した父親のジョセフ・グラッスル46歳はこれまでの4カ月間、農業が忙しくてTVを見る暇がなかったため、息子が世界中の話題になっていたことをまったく知らなかったというのだ。だが、息子が精神病であったことは明らかであり、現在、世界で報じられているように彼が詐欺師だとはとうてい考えられないと述べている。
「25年間、ただもう一生懸命に農業を営んできただけです。TVや新聞を見ている暇はありませんでした。私たちはこれまで月に一度はケイタイ電話でしゃべっていたんですが、いつからか連絡が取れなくなったので、今年の5月、行方不明として警察に届けを出しました。」
父親の弁護士クリスチャン・バウマンによれば、父ジョセフは先週末、はじめて今の息子(ピアノマン)の写真を見せられたが、それでもまだピアノマンが息子であると認識することができなかったという。
「写真では彼の髪はブロンドではなく白髪でした。そして彼がいつもかけていたメガネをかけていなかったからでしょう。また彼がゲイであったという事実については特にコメントしていません。でも私自身は彼がゲイだとはとても思えません。」
さらに、身元発覚後報じられたようにアンドレアスがピアノを弾けないという事実はおそらく間違いであると指摘している。
「彼は家にいたとき独学でキーボードを練習して何曲か弾けるようになっていました。なのでピアノは弾けると思いますが、プロ級とは思いません。」
優秀な少年時代
かつての友人たちによれば、彼は学校では非常に優秀な生徒であったようだ。特にフランス語と生物学にすぐれていた。
「でも彼は卒業証書も受け取らず、なんにも言わずに、社会奉仕活動を行うためザールブリュッケンに行ってしまったんです。」
また友人らによれば、アンドレアスは熱烈なネットユーザーでチャットルームでは「スキャットマン」のハンドルネームで知られていたという。
彼はザールブリュッケンの病院での奉仕活動(徴兵制を免除するための奉仕活動)を終えた後、フランスに渡り、そこで幾つかの仕事を転々とした。父親と弁護士によれば、その頃アンドレアスに精神障害の兆候が見られ始めたらしい。そしてまもなく彼はフェリーと列車を乗り継いでイギリスに渡り、今年4月シェピーの海岸を歩いていたところを発見され「ピアノマン」として世界中を騒がす存在となった。
(英テレグラフ紙)

写真は楽譜を持ったピアノマン