見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2008/04/03

事件そのものが消えてなくなる



ロンドンのベイカーストリートにあるショップから12メートル先のロイド銀行までトンネルを掘って地下金庫室をからっぽにする盗みがあった。イギリス人なら誰でも知っている、1971年9月12日のウォーキートーキー強盗事件だ。ところが政府のD通告の対象となり、事件そのものが世の中から消えた。なんでも、D通告というのは軍事、国防上の機密に触れる事態を封印する特殊法令で、歴史上数回しか発令されていない。この銀行強盗が、なぜこれほどの国家機密になったのか?

この謎に対する、2月28日UKで公開された映画「The Bank Job」の回答は、ロイド銀行の地下金庫室が現行犯の王女たちが主役のみだらな写真の隠れ場だったというのだ。

ロンドン在住のなんにも知らない日本人の女の子がこの映画を見て、「ダイアナ妃の交通事故死(?)も、もみ消しや陰謀の類があっても不思議ない」と思ったというのがおもしろかった。ダイアナ妃の死因審問で3月31日、検視官は王室やMI6関与説を否定している。一緒に死んだドディ・アルファイドの父親は、「フィリップ殿下の命令でMI6が暗殺を企てた」との説を主張した(時事通信2008年3月31日)。

ところで、最近の「ヒースロー空港で見つかった南アフリカからの大金」のニュースがやはり封印されてしまったようなんですが、どなたかご存じないでしょうか。

◇The Bank Job(2008年)
ロイド銀行へ侵入するのにベイカーストリートの地下にトンネルを掘った1971年のウォーキートーキー(携帯用の無線電話器)強盗を映画はベースにしている。彼らは概算50万ポンドを持ち逃げしたが、その前に彼らの無線交信が地元のアマチュア無線技師によってとらえられた。全作戦はマスコミ報道がまったくないことを意味する、D通告(機密保持のため報道を禁止するむね 報道機関に要請する政府通告)の対象だった。ベテラン脚本家クレメントとラ・フレネによれば、不可解なことに対する答は、名声を汚すあの多数のバカンスのスナップ写真だった。
(BBC 27 February 2008 by Paul Arendt)

◇泥棒のひとりはダメなポルノスター。もうひとりは自分をファッションフォトグラファーだとうぬぼれる。見張り人は彼のウォーキートーキーを切らないでおくことができない。無精ひげのタフガイの下に隠れる首謀者は、妻と2人の小さな子どもと山ほどの金の苦労を抱える、腹立ちやすい中古車ディーラーだ。

1971年ロンドンで起こるおもしろい犯罪スリラー「The Bank Job」のこの爽快なギャングたちは、自ら仰天した思いがけない報酬の夢よりもずっとデカいことが判明する強盗にまともによろめきうまく手に入れることができなかった。ロンドンのメリルボン地区にある悪名高きロイド銀行強盗をゆるくベースにするストーリーは、スコットランドヤードの腐敗行為、過激派好み、つまらなくなりだしたフリーラヴ時代、そして能力がなくなっている特権のあるパワーエリート(えり抜きの権力者たち)の時代をめくるのに夢中になる。

支配されていると彼ら全員が考える陰謀事件で、ひとりまたひとりと複雑にもつれてくるのを見ることに楽しみはある。映画のシーンの「おまわり」、手練手管の売春宿のマダム、英国貴族、ありふれた悪党、王室擁護者、カリスマのあるブラックパワーの指導者などが、反主流的傾向や裏切りや同性愛で押さえられる。

著者のディック・クレメント&イアン・ラ・フレネ(「コミットメント」、「スティル・クレイジー」)、監督のロジャー・ドナルドソン(「13デイズ」、「リクルート」)は賢明にも、題材から退屈な教訓話を引きだそうとか社会的注釈を明示しようとはしない。キャラクターのニュアンスでもなりゆきでも時間をムダにしない。

ロイヤルファミリーの一員が名前を汚す性的接触で押さえられたカリブ海での戯れで映画は始まる。サフロン・バロウズ演じる手足のひょろ長いはにかみ屋が銀行の金庫室から罪があることを示す写真を盗む任務を急派されるとき、彼女は彼女のクルマのディーラーの友だち、ジェイソン・ステイサム演じるテリーと彼の落ちぶれたクズ仲間に犯罪をやっつける手助けを頼る。彼らはそれをごまかしのない銀行強盗だと考える。写真は彼女の秘密だ。
(サンフランシスコクロニクル07march2008 からつまみ食い)