中国のいたばさみ
初めて中国政府は、ラサで始まった激しい抗議デモが近隣の省のチベット人居住区にも広がっていることを認めた。20日の中国外務省の定例会見は各国記者の質問の前に北京のつのるイライラを露呈する形になった。北京オリンピック開会式がどうなるのか、とても興味深い。というのも、オリンピック開催国というのは「ちゃんとした国家」であると、世界がお墨付きを与えることでもあるからだ、これでいいのかしら?
以下、最近のニュースからーー。
◇チベット自治区ラサで起きた暴動にからみ、中国外務省の幹部が20日の定例会見で各国メディアの質問に「逆ギレ」回答を連発した。
会見したのは秦剛副報道局長。イタリア人記者がローマ法王ベネディクト16世が「対話の道を選ぶべき」と憂慮の念を示したことについてコメントを求めると、いきなり激高した。
「イタリアのジェノバで警察がデモ隊に何をしたか、振り返ってみたらどうか」
質問には直接答えず、2001年にジェノバで開かれた主要国首脳会議(サミット)で起きた衝突でデモ参加者が警察に射殺されたことを例に挙げる形で逆質問。「暴力を容認したら法も人権もない」と、あくまで暴動鎮圧の正当性を主張した。
ポルトガル人記者が「捜査状況は」と問うと「あなたの国で暴動が発生したらどうする。警察は何もしないのか? 同じ措置を講じるはずだ」とたたみ掛ける。日本人記者が「平和的デモなら認めるのか」と質問すると、「憲法を読めば分かるだろう。言論の自由はあるが(言論の範囲は)関係法に合致している必要がある」と強調した。
さらに米国テレビ記者が「なぜ現場に記者を行かせないのか」と批判すると、「一部の報道は客観的ではない。不公正だ」と猛然と反論。「そのような報道なら現地に行こうが行くまいが関係ない」。ほとんど「ケンカ腰」状態だった。
一方でラサ市でのデモ隊側の死傷者数は「状況を把握していない」。ラサ以外の死傷者も「分からない」と客観的データを示さず。ダライ・ラマ14世については「チベット独立を放棄していない」として対話を拒否する構えを明確にした。
ラサ暴動についてラサの検察当局は20日、24人を逮捕したと初めて発表。幹部は「ダライ・ラマ一味が組織し綿密に計画した」と述べた。国営の新華社通信は市民13人が死亡し325人が負傷、被害は2億元(約28億円)と伝えたが、デモ参加者側の死傷者の有無は報じていない。
ラサの日本人ツアー客18人が上海発の定期フェリーで20日午後大阪港に帰国した。取材に応じた女性は「危険な目には遭わなかったが、軍に撮った写真をチェックされた」とだけ語った。
(サンスポ 2008年3月21日)
◇EUレベルで北京五輪開会式不参加を
チベット騒乱をにらみ、欧州連合(EU)は8月に開く北京五輪への参加問題を含めて対応策の協議に入る。クシュネル仏外相は18日、EUレベルで北京五輪の開会式への不参加を検討すべきだと語った。騒乱が長期化すればEUの中国批判はさらに強まる可能性がある。
仏外相はEU加盟国に、28日からの外相会合で中国への対応策協議を求めた。EU各国は14日の首脳会議で「事態を非常に懸念している」(英ブラウン首相)と表明。中国に自制を要求することで一致していた。EUのペテリング欧州議会議長は独ラジオ番組で、騒乱が続くのであれば五輪の開会式に出席する予定の政治指導者は「(出席が)責任ある行動かどうかを考える必要がある」と語った。
ただ、加盟国ではチベット情勢と五輪問題を絡めた対応に慎重論も出ている。仏外相も「すべての競技への不参加は適切でない」と述べた。EU各国は18日に実務レベルの会合を開き、チベット情勢を注意深く監視することで合意。イタリアは事態を正確に把握するため、中国へのEU代表団の派遣を提案した。
(日経NET 2008年3月19日)
◇ブラウン英首相がチベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世と会談する意向を表明したことについて、中国外務省の秦剛副報道局長は20日の記者会見で「英政府はダライ・ラマの本質を認識し、分裂活動を支持しないでほしい」と述べた。 ブラウン首相は19日、中国の温家宝首相とラサの騒乱について電話で話し、ダライ・ラマと会談する考えを明らかにした。秦副報道局長は「世界各国と政府、そして国際社会はいかなる形でもダライ・ラマに支援を与えないでほしい」と訴えた。ラサで起きた大規模騒乱が国際社会の関心を集めており、ダライ・ラマとの接近に強い危機感を示した。
当局がラサの騒乱を鎮圧したことに触れ「あのような暴力行為を認めるならば、この世界には法律も人権も真理もない」と正当性を強調した。
(日経NET 2008年3月20日)
◇中国、抗議のニュースを弾圧
チベットの首都ラサでの激しいデモに関する情報を封じる試みで中国は国際メディアをずぶといほど積極的に検閲してきている。
近日、TVの放送番組は妨害されいる、ウエブサイトは中国のキーワード・フィルタリング・システムによって妨害または検閲されており、現場の記者や通信員を妨げてその地区に連絡を取れなくさせている。
(複数の欧米メディアによると、中国政府は17日までに「YouTube」を中国内で利用できないようインターネット経由での接続を遮断する措置を講じた。チベット暴動の映像が投稿、閲覧されるのを防ぐ情報統制の狙いがあるようだ。YouTubeの親会社であるグーグルやヤフーが運営する各ニュースサイトも閲覧が難しい状況。グーグルのサイトではネット検閲も実施され、検索キーワードに<チベット><ダライ・ラマ>と入力すると結果が表示されないという。時事3月18日)
1989年のデモ以来、チベットで最悪の暴力の日だったと言われる金曜日、BBCワールドのダニエル・グリフィス特派員によるライヴのインターヴューは地元の電波送信の故に不通になった。
だがそれらのインターヴューの再放送はどうぞと許された。
17日月曜、18日火曜にはそのような検閲は常ではなくなったようだった。
「警備体制を解くため街の抗議者に投降を促す中国のデッドライン(期限)が昨夜過ぎたー抗議に関与した者の運命について直接の発言はない」とBBCの通信員が報じたとき、送信がただちに不通になった。
他のCNNのような放送会社もまた送信の不通に襲われた、そして許可のない外国人通信員立ち入り禁止のチベットへの物理的アクセスをきつく制限する中で、通信員は道をふさがれた。
亡命チベット人グループが中国治安部隊が抗議者たちを殺していると主張する四川省Ngawa自治州から300キロのところでCNNの特派員とそのクルーが中国警察によって動きを止められたのを、特派員が火曜のCNNのブログIn The Fieldに書いた。
「遅かれ早かれ彼らは私たちを見つけて止めるつもりだった。これが今朝起こった。おもちゃの銃に見える小さな口径のマシンガンで武装した中国警察が私たちを道路の片側に寄せてパスポートを要求した、そして道路はここでお終いだと告げた」と彼は書いた。
(インドに拠点を置くNGOチベット人権民主化センターは19日、中国四川省甘孜チベット族自治州甘孜県で18日午後、反政府デモ中の群衆数百人に向けて中国の武装警察部隊が無差別に発砲し、3人が死亡、15人が負傷したとの情報を発表した。米政府系放送局ラジオ自由アジアは、この衝突では少なくとも2人が死亡したと伝えた。朝日新聞3月19日 )
ジャーナリストのティム・ジョンソンはブログ、China Risesで、「私たち外国の通信員はみな用心していた。頻繁に乗物を交換しなければならなかった。携帯電話のシムカードを交換した者もいる。あるいは電源を切るとかね。それで当局は携帯電話のシグナルを三角法で測定できないし、私たちの居場所を見つけ出せない。」
「私たちの誰も違法なことはしていない。当局にとって、奥地で私たちを止めて延々と質問攻めにし、遅れを創り出すこと、あるいはあっさりと特記しない保安上の理由で私たちが地域に入るのを禁じるのはとてもたやすいことなんだ。」
(BBC NEWS 18 March 2008)
写真はBBCの記事「中国のいたばさみ:チベットは独立またはもっと強度な自治権にたどり着けるのか?」にあったもの
0 Comments:
コメントを投稿
<< Home