ニュースにならない死者の報復
反プーチン・デモがあったばかりのモスクワで
◇地下鉄の自爆攻撃が37人を殺害する
ロシアでは朝のラッシュアワーのピーク時に2人の女性自爆者が2つの地下鉄駅を攻撃したとき、少なくとも37人が亡くなっています。70人以上が負傷。爆破のひとつはKGBの主要な後継の連邦保安局の本部すぐ下の駅で起こりました。どのグループからもまだ犯行声明はありませんが、ロシア当局はチェチェンの独立を勝ち取るため戦う反逆者によって実行されたと推測します。先月、チェチェンの反逆者のリーダーが、「軍事作戦のゾーンはロシアの領域に拡大されるだろう... 戦争は結局彼らの都市ということになる。」と言いました。
(デモクラシーナウ!29 March 2010 ヘッドライン)
◇モスクワ爆破:攻撃の裏にいるグループをなきものにするとプーチンが断言
すぐの犯行声明はなかったが、FSB(KGB旧ソ連国家保安委員会の後継、ロシア連邦保安庁)の長官アレクザンダー・ボルトニコフは、これに責めを負うべきは北カフカスにつながりがあると言った。
朝のラッシュアワーの中のモスクワの満員のメトロで2人の女性自爆者が自爆した後、ロシア人たちは今夜、すさまじいチェチェン・テロキャンペーンになりそうな見通しに直面していた。少なくとも38人が殺される。どうやら身元不詳の2人のロシア人女性に助けられたらしい爆弾犯は今朝早くにメトロに乗り込んだ。一人は午前7時56分に赤の広場から歩いてすぐのメトロ駅ルビャンカで自爆。二人目の爆弾犯は8時37分にパルク・クリトゥーリ駅で起爆性のベルトを爆破させた。
ロシア政府への象徴的な攻撃を意味するため、どうやら標的は慎重に選ばれていたらしい。最初の爆弾はロシアのFSB反テロリズム諜報機関の本部向かい側で破裂した。二つ目の爆弾は次のロシア内務省の駅、Oktyabrskayaのつもりだったかもしれないと情報筋は示唆する。
ウラジミール・プーチン首相は「テロリストどもをなきものにする」と宣言するため、シベリア訪問を急に終わらせてモスクワに戻った。だが、その爆破、6年間で最もすさまじいロシアの首都での攻撃は、チェチェン、イングーシ、ダゲスタンというイスラム教の共和国を静めるクレムリンの活動に重大な痛手を加える。
少なくとも64人がその爆破で負傷。8人は危篤状態にあった。どちらの爆弾犯も、ボルトと小さな鉄の棒まきちらす、腰に縛り付けた爆発物を起爆させたと当局は言った。インターファクス通信によると、監視カメラがYugo-Zapadnaya駅でメトロに乗り込む年齢18歳から20歳の女性をとらえたとの警察の情報筋を引用する。警察は他に、駅に爆弾犯を導くのが見られるスラブ人の外観の女性2人を捜していた。4人全員が顔を見える状態にしていた。
「女性爆弾犯はおそらくカフカス山脈から連れてこられた」と情報筋はインターファクスに言った。「彼女たちは前に一度もメトロに乗ったことがなかったので、迷ったかもしれなかった。」
「連続爆破に筋が欠けているのをこれが説明する。」
先週、ロシアのメドベージェフ大統領と(第一次戦略兵器削減条約に代わる)核軍縮新条約に合意したバラク・オバマ大統領は、爆破を非難した。「アメリカ国民は、人命軽視を具体的に説明する暴力による過激主義とテロリスト攻撃に反対するロシアのみなさんと一心同体の立場にあります。私たちはこのとんでもない攻撃を非難します。」
EUの指導者と国連もまた憤りを表した。ゴードン・ブラウンは肝を冷やしてクレムリンにお悔やみを送ったと言った。欧州委員通商担当キャサリン・アシュトンは、悲劇の人命損失を「深く遺憾に思った」と言った。
メドベージェフ大統領は花を置くためにルビャンカ駅を訪れて、すべての行動が攻撃を画作した「けだもの」を捕まえることになると言った。
メトロの電車で自爆犯が少なくとも39人を殺害して100人以上を負傷させた2004年2月以降、これがモスクワで最も破壊的爆発だった。チェチェンの分離独立派が責められた。先月、その地方全域でイスラムの統治を求めて戦っている分離独立派リーダー、ドク・ウマロフは、戦争をロシアの都市に連れて行くと約束した。
殺害はプーチンの権限に対する個人的な挑戦状だったとロンドンの王立連合行政協会のジョナサン・エーヤルは言った。「これは、権力への完全な出世をロシアの敵を潰滅させる彼の誓約に基づかせるウラジミール・プーチンに、公然と立ち向かうダイレクトな侮辱である... 彼の強いイメージへの侮辱」と彼はロイターに語った。
(英ガーディアン紙 29 March 2010)
◇モスクワの攻撃 プーチンと彼のテロに対抗する記録にとって試金石
モスクワの中心地でのあつかましい自爆はプーチン首相にテロリズムを抑制する彼の記録への重大な挑戦を突き付けて、意味ありげに上からのコントロールを強化することによって、過去に彼がやったように彼が応じる可能性を高まらせた。
朝のラッシュアワーの中の攻撃は国家保安機関を侮辱的にあざけることをもくろんだも同然、国家保安機関はプーチン氏がロシアで権力を掌握して以来10年間、彼によって擁護されてきている。最初の爆発は地下鉄ルビャンカ駅で起こった。隣は1990年代後半プーチン氏によって率いられた、ソビエト時代のKGBの後継機関、FSBとしても知られる連邦保安局の本部だ。
前大統領で依然としてロシアの最高指導者のプーチン氏は、ロシア南部のイスラム教徒の反乱行為を封じ込めて近年のロシアの人口中心地での大きなテロリスト攻撃を防ぐことで、彼の出世の上にいくぶん彼の評判を築いてきている。月曜の爆破が反乱分子によって大都市で再開されるキャンペーンを布告するとすれば、あの過去の蓄積は色あせるかもしれない。
攻撃はまた、プーチン氏の子分、メドベージェフ大統領の政策に疑問を投げたくもなる。メドベージェフは政府の制約を解くことのほうを選んで話してきており、政治上の社会的多元性を増して反乱行為の根本的原因と取り組むことでテロリストを論じる。
メドベージェフ氏がまだ多くの重要な変化をしかるべきところに置いてきていないのに、プーチン氏は方針を遂行するのをおおむね彼に許してきている。とはいえ、いっそう多くのテロリズムがプーチン氏にメドベージェフ氏を押しやってプーチン氏を取り巻く顧問の保安優先の仲間を先頭に進ませることにもなる。「私が確かに成し遂げたことがこれだった、とプーチンは言った、そして彼は成し遂げなかった」とオスロの国際平和研究機関の教授、ロシア人のパヴェル・K・バエヴは言った。
月曜、プーチン氏は主として、攻撃を準備したテロリストをなきものにすると宣言することに彼のコメントを限定した。テロリストは特定されてきていないが、ロシア当局はチェチェンまたはコーカサス山脈の隣接する地域から来たと推測すると言った。だが2004年に最後にそのような暴力の多発に直面したとき、テロリズムに備えて国を結束させると言ってプーチンは全面的な政府の再編成で反撃したが同様にクレムリンに権力を集中させた。
彼は地方の知事の直接選挙を排除する法律を強引に通し、彼らを大統領の被任命者に変えて、無党派(独立派)候補者が連邦議会に選出されるのをほとんど不可能にした。彼はまた保安機関の人数を増強した。
プーチン氏が締め付ける必要性を感じるかどうか憶測するには早急すぎると、モスクワの研究機構、政治応用科学(専門的側面)センターの議長ボリス・I・マカレンコは警告した。大統領在任期間早期のテロリスト攻撃のためにプーチン氏の評判はひどく傷つかなかったと信じるとマカレンコ氏は言った。
だが、ロシアの経済問題が政府を激しく揺り動かしていたときモスクワ地下鉄の爆破が出てきたことにマカレンコ氏は注目した。抗議は幾つかの主要都市でにわかに始まった、比較的まだ弱体とはいえ、反対派はなんらかの支援を獲得してきている。
「財政危機の影響に取り組む政府の能力の限界、無能と警察の不正行為、他の問題のせいで、最近の数カ月、社会は全般的に政府についてより懐疑的になってきている」と彼は言った。「政府に襲いかかりたがる人たちの活動(奮闘)で、このテロリスト攻撃は別の一例かもしれない。」
近年、イスラム教徒の反乱行為は静まってきていないとはいえ、コーカサス地方の外の大攻撃は珍しく、2009年4月、クレムリンはチェチェンの反テロリズム特殊作戦の終わりとして説明したものを発表してもいる。
だが、2009年11月、モスクワからサンクトペテルブルグまで田園地域を移動していた豪華な旅客列車をテロリストが爆破して、26人を殺害する。先月、チェチェンの反乱勢力のリーダー、ドク・ウマロフは、ウェブサイト上のインタヴューでロシアの人口中心地でテロ行為を準備すると脅した。
「もしロシア人が戦争はもっぱらTVに映るコーカサスのどこか遠くで起こっていると考えるなら、そして彼らに手を出さないと思うなら、この戦争が彼らのわが家にかえるのを私たちは示すつもりである」と彼は言った。
2008年に就任したメドベージェフ氏は、政府は果敢にテロリストを追い詰めるべきだが、貧困と過激主義をはぐくんだと彼がとがめた政府の悪しき行為にも焦点をあてるべきだと言って、反乱行為になんとも彼らしい針路を要求してきている。昨年6月、メドベージェフ氏はその地方を訪れて、強硬なプーチン戦略に暗に意味された拒絶(肘鉄砲)を申し出るように思える珍しいスピーチをした。
「北カフカス、広く一般に私たちの国の南のこれらの問題が全体にわたるものなのは、ここの誰にとってもまったく秘密ではありません」とメドベージェフ氏は言った。「それを言うことで、私は低い生活水準、高い失業率、おそろしく広く行きわたった大規模な腐敗(汚職)のことを口に出しているのです。」メドベージェフ氏はまた、強硬路線の措置は激しい反動をかきおこすだけとの彼の信念をそっくり繰り返した、イスラム教徒の領域イングーシの新しい指導者を任命した。
とはいえ、テロリズムと戦うには政府は断固たる新たな計画を採用する必要性があったのを月曜、すでにプーチン氏の党、統一ロシアの上級党員らが示唆している。議会の保安委員会の議長ウラジミール・A・ワシリエフは、攻撃を許したことで罰せられるべきだと言って、法執行当局を激しく非難した。
「義務を遂行するのを怠った連中すべてが責任を負うことになると私は確信する」と彼は言って、現行の法はムダだったと付け加えた。
彼としては、メドベージェフ氏は攻撃の裏にいる人々を捕まえる決意だけを表明した。「この災難を私たちが無効にするまで、ひるまない決意でもって私たちは反テロリスト活動を続けるつもりである」と彼は言った。
(NYTimes 29 March 2010 by CLIFFORD J. LEVY)
◇ロシア・モスクワの地下鉄ルビャンカ駅とパルク・クリトゥーリ駅で29日午前8時(日本時間同日午後1時)ごろ、連続爆破テロが発生した。事件は朝の通勤時間帯に起き、駅には大勢の通勤客がいたとされ、少なくとも38人が死亡し、72人が負傷。負傷者の多くは重傷だという。
モスクワ市長は29日、連続爆破は女性2人の自爆テロによるとほぼ断定した。
最初の爆発は、ルビャンカ駅に停車していた列車内で発生し、2度目は約35分後にパルク・クリトゥーリ駅で起こった。ルビャンカ駅は、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後 進であるロシア連邦保安庁(FSB)本部の最寄り駅で、北カフカス地方のテロリスト抗戦を続けるFSBへの抗議とみられている。
英メ ディアは、ロシア当局によると、女性自爆犯らはチェチェン共和国、北カフカス地方のテロ組織「ブラック・ウィドウ(黒い未亡人)」メンバーの可能性があると指摘。犯人は爆薬の詰まったベルトをつけていたと報告されているという。
また英BBCニュースは、これまでのテロが女性の自爆犯による例が多いことに触れ、チェチェンでは、長年にわたるロシア兵との戦闘で、無数の女性が家族を失い、身体的にも精神的にも傷跡を残した。テロ組織はその恨みを利用して女性たちを自爆テロ犯に仕立て上げたとの一部の見解を示した。
129人の死亡者を出した2002年の「モスクワ劇場占拠事件」では、チェチェン共和国のテロ組織による42名の武装勢力のうち、17名は女性だったとされている。
(サーチナ 2010年3月30日)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0330&f=national_0330_007.shtml
写真は運転が再開されたメトロと、自爆後のいたましい光景
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