ティーパーティ・ナショナリズム
◇全米黒人地位向上協会(NAACP)が、ティーパーティーと民兵組織(極右武装集団)や人種差別主義者集団との結びつきを報告する
中間選挙まで2週間以内、さまざまなティーパーティーとアメリカ合衆国の人種差別主義の憎しみ集団とのリンクと考えるものをさらけ出す新たな報告をNAACPが発行してきています。報告書「ティーパーティ・ナショナリズム」は、国の最も精力的な6つのティーパーティー組織それぞれを分析して、ティーパーティー分派とさまざまな白人至上主義者集団、移民反対組織、民兵組織とのあいだのリンクを説明します。詳しくは下記の番組を視聴するようにーー。
Listen/Watch/Read
http://www.democracynow.org/2010/10/20/naacp_report_ties_tea_party_to
◇オドネル候補が憲法における教会と国家の分離(政教分離)に異議を唱える
遊説のニュースでは、デラウェア州の共和党上院に有望なクリスティン・オドネル候補が、憲法は政教分離を命じていないと主張したあとに最新の論争に火をつけてきています。
民主党の対抗馬クリス・クーンズが公立学校で創造説を教えることに反対すると言ったあとに、オドネルはクリスとの討論会を通じて批評しました。
クリスティン・オドネル:「 憲法のどこに政教分離があるのか?たった今明確にさせてください:米国憲法修正第1条に政教分離が見られると私に言っているのですか?」
クリス・クーンズ:「 政府は教会を国教にしないことになっている。」
クリスティン・オドネル:「米国憲法修正第1条にそうあるんですか?」
(以上、デモクラシーナウ!ヘッドライン 20 October 2010)
◇無経験のティーパーティーという作り話
急進的な保守派による市民運動のティーパーティーはしばしば、「政治経験の浅い素人集団」扱いされる。そうすることが、リベラル派にも保守派にもメリットになるからだ。
保守派にとっては、ワシントンの腐った政治家を追い出したいという理想に燃えるポピュリストたちの純粋な草の根運動というイメージは好都合だ。一方、リベラル派にとっては、ティーパーティー運動の参加者は危険なほどに無知で、自分たちの言動の意味をわかっていないと訴える根拠になる。
先週末に起きた2つの出来事を振り返ってみよう。まず9月15日、11月の中間選挙の候補者指名を争うデラウェア州の共和党予備選で、ティーパー ティーの支援を受けたクリスティン・オドネルが元州知事のベテラン議員に競り勝った。オドネルは悪魔崇拝から性教育までさまざまなテーマについて奇妙な発言を繰り返し、選挙後ずっとニュースを独占している。
オドネルは「無名の新人」と評されている。確かに上院議員への挑戦は3度目だが、勝ったことはない。2006年には党内の予備選の段階で敗北。2008年には共和党の指名を獲得したものの、本選挙では民主党の重鎮でその後副大統領になったジョー・バイデンを相手に惨敗した。
だがそれ以前は、活動家として長いキャリアがあり、政治トーク番組「ポリティカリー・インコレクト」に20回近く出演した経験もある。つまり、彼女は怒りに燃えて突然ティーパーティー運動に加わった平凡なサッカーママではないのだ。
2つ目は、ニューヨークタイムズ紙が、「ティーパーティー素人説」をあおるような記事を日曜版のトップに掲載したこと。ニューヨーク市長のマイ ケル・ブルームバーグについての記事の中で、ネバダ州で共和党の上院議員候補の座を勝ち取ったシャロン・アングルを「政界の新参者」と呼んだのだ。
・ティーパーティーと共和党の密接な関係
実際には、アングルは新参者ではない。1999~2005年の6年間、ネバダ州下院議員を務め、2006年には連邦下院議員候補の指名獲得にあと一歩まで迫った。今ではすっかり忘れられた「バラク・オバマは経験不足」という台詞を蒸し返したくはないが、アングルの州議会議員の経験年数は、オバマがイリノイ州議会議員を務めた期間よりやや長い。
「新参者」とは程遠いのはオドネルやアングルだけではない。ティーパーティーの支持を受けている候補者には、十分な政治経験をもつ者が少なくない。
○マルコ・ルビオ(フロリダ州知事候補):フロリダ州下院議員として8年の経験をもち、そのうち2年間は議長を務めた。
○ケン・バック(コロラド州知事候補):80年代にはイラン・コントラ事件の事態収拾に当たるディック・チェイニー下院議員(当時)の下で働き、後に司法省に勤務。地方検事と連邦検事を務めた。
○スコット・ブラウン(今年1月マサチューセッツ州補欠選挙で連邦上院議員に選出): 同州の下院議員と上院議員として12年の経験がある。
○ニッキ・ヘイリー(サウスカロライナ州知事候補):同州下院議員を6年務めた。
もちろん例外もある。例えば、サウスカロライナ州で共和党の下院議員候補に指名されたティム・スコット。アフリカ系アメリカ人の彼が、人種隔離政策を支持した同州の有力政治家ストロム・サーモンドの息子を破ったことで話題になったが、州下院議員の経験は2年しかない。ケンタッキー州で上院議員候補 に指名されたランド・ポールも政治経験は浅い。
それでも、ティーパーティーの候補者を素人扱いするのは的外れだろう。ましてや、ティーパーティー運動の中心人物はベテランぞろい。彼らの多くは共和党主流派とつながっている。
時事問題をネタにした風刺番組「デーリーショー」のホスト、ジョン・スチュワートは、共和党の元下院院内総務で、著書「我々に自由を:ティーパー ティーのマニフェスト」を売り込むため同番組に出演したディック・アーミーを厳しく非難。アーミーが率いる非営利組織「フリーダムワークス」はティー パーティーの主要グループの一つだが、議会共和党のトップを務めたアーミーが反主流派を名乗るのはおかしいと指摘した。
ニューヨークタイムズ紙は、長年共和党で資金調達を担当してきたサル・ルッソが、今度はティーパーティーの候補者らのために巨額の寄付を集めていると報じた。
・民主党のティーパーティー批判は矛盾だらけ
ティーパーティーが登場した当初、リベラル派は「共和党のやらせだ!」と叫んだ。今となっては、ティーパーティーは単なるやらせを越えた本物の政治集団となっているが、コメンテーターたちは逆に、ティーパーティーこそ純粋な草の根運動だと口をそろえる。
こうした発言は、国民を間違った方向に誘導する。有権者の間に現職議員への反感が広がっていると言われるが、11月の中間選挙で現職を総入れ替えしたいと考えるなら、「反主流派」にみえるティーパーティ系の候補者が実際にはそれほど独立系でないことを理解しておいたほうがいい。
一方、民主党陣営は、ティーパーティーを未熟な愚か者の集まりだと連呼している。だが、それは事実ではないし、その戦略が民主党への追い風になるかどうかもわからない。なにしろ、ティーパーティーの象徴的存在である元副大統領候補サラ・ペイリンを何かにつけて非難する戦略が、かえってペイリンを強くしてきたのだから。
民主党は、デラウェア州のオドネルをワシントンの腐敗体質に染まった体制側の政治家だと訴えるキャンペーンを始めた。ユニークな発想だが、民主党全国委員長のティム・ケインが、オドネルのような候補者がいかに共和党の主流派からかけ離れているかを語っていることを考えれば、あまりに矛盾している。
結局、現実をありのままに語るほうが簡単なのではないだろうか。おっと、政治の世界では、現実をありのままに語るような人間こそ、まさに非主流派の変わり者だ。
(ニューズウィーク日本語版 2010年10月13日)
△写真はオドネル候補
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