見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2010/12/24

11m$のクリスマスツリー


◇WikiLeaks外電:人殺しの狙撃兵の陰にイスラエルがいたのはたしかだとシリアは思う

シリア大統領の保安首席補佐の暗殺が政治的なエリートの中に不安をもたらしたと米外交公電が明らかにする

シリアの海岸の都市Tartousで狙撃兵が致命的な銃弾を発射したのは、2008年8月1日夕刻だった。標的はアサド大統領の側近、保安補佐官のムハンマド・スレイマン将軍だった。その暗殺事件でイスラエル人が「何より一目瞭然の容疑者」だったとダマスカスの米大使館は報告した。

WikiLeaksによって公表される米国務省外電は、当局のうろたえる反応をていねいにたどる。「シリアの国家保安機関はすぐに非常線を張って狙撃が起こった海岸近辺全体を詮索した」と大使館員は知らせた。シリアに配置されたジャーナリストは顛末を報じるなと指示された。同年もっと早くにダマスカスでのクルマ爆弾がヒズボラの軍指導者イマド・ムグニエ(Imad Mughniyeh)を殺害するもう一つの不可思議な暗殺と同様、それはセンセーショナルな事件だった。

最初の報告はスレイマンの身元と地位についてあいまいだった、加えて4日間ニュースの報道管制が続いた。けれども米政府は彼が誰であるか正確に知っていた。数カ月前に秘密文書が彼の的確な職務内容説明書を提供していたのだ:「武器調達と戦略上有用な兵器の点でシリア大統領の特に親しい相談相手」と。

大使館員がまさしく表現するように、一般的なシリアの軍指導部には未知のものであったかもしれない、どうやらスレイマンがやってのけた例外的な事業のひとつのユーフラテス川に接するal-Kibarの核疑惑用地をすでに11カ月前にイスラエル機が攻撃し破壊していた。イスラエルメディアは彼がヒズボラとのアサドの密偵としても仕えていたと報じた。

スレイマン殺害でイスラエルは一目瞭然の容疑者だったと米国の役人は報告した。「沿岸の都市Tartousは、ダマスカスのような内陸の場所よりぐっとイスラエルのスパイに近づきやすさを提供するものなのをシリアの国家保安機関は十分に承知してきている。スレイマンは必ずしも大いに人の目にさらされている役人ではなかった、それなのに狙撃兵の採用は、暗殺者が遠くから視覚によってスレイマンを見分けることができたのを思い起こさせる。

首都では、恐らく政府はだんまりのままであったろうと大使館員は推測した、というのは、「(1)誰がやったかわからないために、(2)このような非難はシリアのイスラエルとの新興の和睦交渉を損ねる又は終わらせる、(3)事件を宣伝することはシリアご自慢の保安機関のもう一つの過失をどうしてもあばくことになる。」

内部の論議に関する報告は、Tartous殺人がイスラエルとの和平交渉に反対だったシリアの保安機関の役人の助力で強まったことを暗示する。

10日後、暗殺がシリア政府の内政審議で「たびたびの論争の原因」になっていたことを米大使館員の連絡が報告した。「8月12日上級政策協議会の間に、国家安全機構の高官が公然とイスラエルとの回りくどい交渉とレバノンとの任侠で政府の継続に異議を唱えたとき、怒りがぱっと広がった。」シリアは譲歩して、魅力のあるレバノンでもイスラエルに対して遠回しに交渉することでも、少しも実体のある益をもらわないだろうと保安機関のボスらは主張した。

「この緊張した応酬の下にあるのは、シリア政府がほとんどスレイマンの暗殺を黙殺しているとの、保安機関内部の欲求不満だった。もしもイスラエル人がスレイマン殺害をやったのなら、なんだってシリア政府は対話を継続していたのか?と国家安全機構の役人が言いだしていた」と大使館情報源が付け加えた。「また、それが内部の者の犯行だったとすれば、国民は彼らの前途について知りたがっている。」

アサドはこうやって保安機関のボスに彼らの身分についての確約と、政府の意図について早まった譲歩をしないことで確約を与えるにつき、ますます圧力をかけられていた。

大使館の外電はまた、アサド政権を弱めるための取り組みの一環として、米国がかねて金融制裁をスレイマンのせいにしたがっていたことも明らかにする。けれども彼に関する情報が明るみに出せないほどそれは高度に機密扱いにされたので、そうするのは困難だとわかった。

「ムハンマド・スレイマンは比較的報復の少ないターゲット」だと外交官らはワシントンに帰って報告した。「彼の活動は広く知られていない、それが表向きの申し立てに適した機密扱いでない情報をどうしても入手困難にさせる、同様に、シリア内部で彼の指示は共鳴されただろうに、それをありそうもなくする。」

(ガーディアン紙 20 December 2010)
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/20/wikileaks-cables-syria-sniper-killing

写真はドバイ・パレスホテルのロビーの1100万ドルの価値があるゴールドと宝石で飾り付けられたクリスマスツリー(Photograph: Hussein Malla/AP)
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/19/abu-dhabi-hotel-christmas-tree

▲実はシリアではこの1年ほど前から奇妙な暗殺事件が続いている。▽2007年9月28日、シリア北部のアレッポで、マフムード・アブ・アルカカ師が金曜礼拝の後、モスクから出たところを銃撃されて死亡。アルカカ師は反米強硬派の宗教者として有名だった。▽2008 年2月12日、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラの海外の破壊活動の責任者イマド・ムグニエ氏がダマスカスの住宅地で車爆弾の爆発によって死亡。 ムグニエ氏は83年に241人の死者を出したベイルートの米海兵隊司令部爆破事件や85年の米TWA機乗っ取り事件など多くのテロや破壊活動を指令したとされる。▽今年8月初め、アサド大統領の右腕ともされるシリア軍最高幹部の一人、ムハンマド・スレイマン氏がシリア西部の港町トルトサで銃撃され死亡。スレイマン氏はシリア軍とヒズボラとのつなぎ役ともされる。
(朝日新聞社"シリアの不穏"2008.10.22より抜粋)