見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2023/08/28

現代美術家 アイ・ウェイウェイ

 


2019年のドキュメンタリー映画(1時間16分)

『AI WEIWEI: YOURS TRULY』を見ました

Amazon Prime Videoでも、Apple TVでも見れます

映画はよくまとまっている


◇『Ai Weiwei: Yours Truly』:映画レビュー

アルカトラズでのアート製作活動には政治的なものと個人的なものが混在している

ガーディアン紙 27 Sep 2019 byピーター・ブラッドショー


2014年、中国人アーティストのアイウェイウェイ(Ai Weiwei )はまだ北京当局によってパスポートを抑えられ、海外渡航を拒まれていた。政治犯に関する新しい展示を検討していたとき、彼はサンフランシスコのギャラリストでキュレーターのシェリル・ヘインズ(Cheryl Haines)から連絡を受け提案を持ちかけられた。彼女にはそのイベントのためにアイウェイウェイにセンセーショナルな場所を提供するコネがあった。1963年から閉鎖され観光目的地になっているアメリカの元連邦刑務所アルカトラズのことだ。


彼らは、これがドラマチックな陳列となり、教育でアメリカ化されることを拒否した先住民のホピ族を投獄したアルカトラズのひどい19世紀の記録につながりがあること、また1969年の先住民の抗議運動アルカトラズ占拠を称えるものであることに同意した。ヘインズは現在、この芸術作品の制作に関するとても魅力的で貴重なドキュメンタリーを監督しており、請願書起草者・積極行動主義(memorialist-activism)としてアートを用いるアイウェイウェイの名誉ある記録とうまく折り合う。


ドキュメンタリーにはアイウェイウェイの母Gao Yingと弟Ai Xuanへのインタビューが入っており、亡き父で反体制派の詩人、Ai Qingに対する1950年代の中国政府の措置、残虐行為と屈辱をじかに触れて目撃する妻と二人の幼い息子と共に辺鄙な強制労働収容所に送ったことなど、アイウェイウェイの作品を個人的な文脈で表す。これがこのイベントに突進する、そしておそらくアイウェイウェイのキャリアを動かす恐ろしい体験だった。


ヘインズがそれについて話し合うために中国とアメリカを行ったり来たりすることで、アイウェイウェイは『@Large』と題されたインスタレーションを遠く離れた所で制作した。主眼となる最重要作品は一種のアナログ・ピクセル化でレゴを使って描いた世界中の政治犯のギャラリーだ。アイウェイウェイの父親、詩人のAi Qing自身が受け取った応援のポストカードをヒントに、訪れた人たちは選んだ囚人に士気を高めるポストカードを書くよう勇気づけられる。この展示は大成功だった。90万人の来場者と9万2829通のポストカードが送られた。ウイキリークスに文書を開示した罪で投獄された元アメリカ陸軍兵士(情報分析官)チェルシー・マニング、記者に情報を開示した罪で投獄されたCIAの元分析官で水責め反対活動家のジョン・キリアコウなど、アメリカ人も含まれた。


展示の後、そこで重要な役割を演じたマニング、キリアコウ、そしてアイウェイウェイ自身を含む数十人が釈放された。アイウェイウェイは2015年にパスポートを返還された。このアート製作活動がこのような状況を創り出すのに役立ったのかもしれない。


状況は少しずつ変わっている。マニングはジュリアン・アサンジに対する大陪審の取調べに従うことを拒否したために刑務所に送り返されたものの、オバマ大統領の恩赦によって生まれた釈放後の状況でインタビューを受けている。そしてヘインズのカメラが2010年以降、釈放されたアウンサンスーチーのレゴによる肖像画を垣間見るむずかしい瞬間があるが、その段階ではまだ人権ヒロインとして称賛されていた。2019年、アウンサンスーチーに対する見方は変わった。


中国政府はアイウェイウェイの新たな展示と彼の国際的名声に当惑したかもしれないが、おそらく、それが単に中国だけではなく他の多くの国、特にアメリカに向けられたものであるという事実に慰められたかもしれない。したがって、これはアイウェイウェイ側のクールな政治的外交だったかもしれない。だが、2008年四川大地震で亡くなった子どもたちの名前を捜し出し、公表し、追悼する調査芸術のような厳しく、抜け目なく、ねばり強い種類のキャンペーンだった。中国政府は詳細を検閲していた。ヘインズ監督のドキュメンタリー映画はこの冒険とアイウェイウェイ自身の悲劇的な家族の歴史への非常に価値のあるガイドだ。


https://www.theguardian.com/film/2019/sep/27/ai-weiwei-yours-truly-review-alcatraz-artwork-mixes-the-political-and-personal



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今ではサンフランシスコきっての人気スポット、アルカトラズ島


かつては脱獄不可能な「ザ・ロック(監獄島)」としてアメリカで最も危険な犯罪者を収容する悪名高き厳重警備の連邦刑務所として機能した。なかでも、アル‘スカーフェイス'カポネ、ロバート'ザ・バードマン’ストラウド、ジョージ‘マシンガン’ケリー、そして‘初代パブリックエネミーNo1’ことアルビン・カルピスの所番地だった。


だが、そんなザ・ロックのギャングの物語を超えてもっともっと重要な物語がそこにはあった。多くの良心の囚人たちが信念のために投獄されたのだ。
19世紀後半に子どもたちを政府の寄宿学校に通わせることを拒否したホピ族の男たちや第一次世界大戦での良心的兵役拒否者がここに収容された。

政治運動が生まれたのもここだ。刑務所が閉鎖された後、先住民のアメリカインディアンが放棄された島を3度占拠した。これらの占拠は多くの部族がアメリカ政府によって虐殺されているという事実に全米の注目を集め、アメリカインディアン(またはレッド・パワー)運動を引き起こすことにつながった。

現在、アルカトラズは鳥類保護区、国立公園、そして主要な観光名所となっている。毎年11月の「Un-Thanksgiving Day」には先住民のアメリカインディアンが島に集まり、過去の職業とアメリカインディアンの権利のために戦い続けるすべての人々に敬意を表す。

2014年9月以降、この悪名高い刑務所であり名誉ある抗議活動の場が、人権、監禁、刑罰、抗議、自由と釈放(解放)の喪失という問題を探求するアート・インスタレーションの舞台となった。

その中国人アーティスト、監禁され、罰せられ、完全な自由を体験して知ることができないアイ・ウェイウェイは常に人権侵害と改革の必要性について声を上げてきた。

2015年4月26日までアルカトラズで開催される彼の新しい7部構成のマルチメディアの展示は島の刑務所のために特別に制作され、皮肉にも『Ai Weiwei: @Large』と題され、ザ・ロックに思いがけない幸運の明確なインスピレーションと励ましをもたらした。


アイ・ウェイウェイは1980年代より、建築やインスタレーションの現代アート作品を世界各地で発表し続ける一方、2008年5月の四川大地震で多くの生徒が校舎の下敷きになって死亡したことを知り、ブログを通じて実態調査を行うプロジェクトを開始し、すべての生徒の写真を公開した。これをきっかけに2010年に軟禁状態になり、彼のスタジオ(FUCK)に脱税容疑がかけられ、拘束された。
 
アイ・ウェイウェイは今も中国を離れることを許されていないため、全展示は彼がアルカトラズに足を踏み入れることなくデザインされ、組み立てられた。約1万キロ離れた北京のスタジオで彼は頭の中で現場の地図を作成し、展示会を想像して製作し、監督した。結果は驚くべきものだ。


特別に許可された囚人の仕事場、ニュー・インダストリアル・ビルディング(新産業棟)では、恐ろしい現実を表現するためにカラフルな中国の伝統的な凧やレゴが使われている。


花や鳥の描かれた多数の小さな凧で構成される巨大な龍の凧「ウィズ・ウィンド」が天井から吊り下げられた部屋。アイ・ウェイウェイは龍は個人が持つ自由を表現していると言い、「誰もがこの力を持ってるはずだ」と言う。龍の目のなかには中国では禁じられているTwitterのシンボルがあり、小さな凧で構成された龍の長くうねる体には、ネルソン・マンデラ、エドワード・スノーデン(「プライバシーは自由の役目を果たす」)、マニプリの公民権活動家Sharmila Chanu(「わたしは一票を投じたい」)、ベトナムの人権弁護士、民主化運動の活動家、著名なカトリックのブロガー、Lê Quc Quân(「私の言葉は意図的、しかも無害」)、そしてアイ・ウェイウェイ自身(「だれもが潜在的な受刑者」)など、投獄されているかまたは亡命中の活動家の発言が書かれている。


隣の「トレース」と題された120万個のレゴ・ブロックの展示では、古いランドリー室の床一面に信仰や活動のために投獄または国外追放されたアウン・サン・スーチン、マーティン・ルーサー・キングなど36カ国の反体制派の活動家176人の肖像画が広げられている。肖像画の中には有名な人物もいれば、国境の外では知られていない人物もいる。けれども彼らは全員、良心の囚人だ。


割れたガラス窓のギャラリーからその仕事場を見下ろす形で展示されているのが巨大なメタルの翼「リフラクション」。実際の鳥の翼をもとにデザインされてはいるが、羽の代わりについているのは鍋やヤカン、そしてソーラーパネル。中国に長きにわたり支配されてきたチベットで使用されているものだ。


そして、一番広い刑務所棟で「ステイ・チューンド」「イルミネーション」「Blossom」「Yours Truly」の展示を見ることができる。


窓のない牢獄からスピーチや歌が聞こえてくる。このサウンド・インスタレーション「ステイ・チューンド」では中国からの独立を訴えるチベットの詩人ロロやロシアの反プーチン・パンクバンド、プッシー・ライオット、アパルトヘイト時代の南アフリカで活動したロベン島プリズンシンガーズなど、拘留されたアーティストや活動家の詩や歌、スピーチを聞くことができる。


最も美しいインスタレーション「Blossom」では、精神科観察棟の古く汚れきった囚人たちの便器や浴槽、錆びた流しが生まれ変わった。便器、浴槽、流しが白い陶器の花で埋め尽くされる。心がひどく動かされる瞬間だ。このインスタレーションは中国政府が表現の自由を容認していた短い期間、1956年の中国の百花斉放運動(ひゃっかせいほう:表現の自由を政府に認めさせるものだったが運動はすぐに反対派により取り締まりを受けることになる)に言及している。アイ・ウェイウェイは、現実には見舞いのブーケなどなかった入院中の囚人たちへの見舞いのブーケのシンボルだといっている。


感動的なインスタレーション「Yours Truly」は刑務所内の食堂にある。ここでは世界中のたくさんの良心の囚人にあらかじめ宛てられたポストカードの山が訪問者が記入するのを待っている。見学者が「トレース」の展示で紹介されていた拘留中の活動家に宛てて、直接、ポストカードを書くことができるプロジェクトが「Yours Truly」だ。


ポストカードには囚人たちが捕らえられた国の鳥や植物の写真が使われている。メッセージを書いたポストカードはこの展示の主催者により集められ、各所へ送られる。


アイ・ウェイウェイは監禁された人々を苦しめる孤独について語ってきた。政治犯は彼らが戦ってきた理由からも外の世界からも忘れ去られることを非常に恐れる。このプロジェクトはそんな彼らの思いに対し、「わたしたちは忘れていない」「あなたに寄り添いたい」というメッセージを伝えること。そしてまた、彼らからのリアクションも見学者に伝え、アイ・ウェイウェイが直接会いに行って気持ちを分かち合う‘やさしさ’をも伝えている。


彼が釈放後のチェルシー・マニングに会いに行き、横に寄り添い、彼女の気持ちに耳を傾けているシーンは最高に感動する一場面だ。



△Ai Weiweiの一連のシリーズはYouTubeでも見ることができる。

Ai Weiwei: @Large on Alcatraz
2014年9月27日(土)~ 2015年4月26日(日)


https://yourstrulydoc.org/


参考にした記事:

http://www.shift.jp.org/ja/archives/2015/03/ai_weiwei_large_on_alcatraz_island.html/4/

https://newint-org.translate.goog/blog/2015/03/12/alcatraz-ai-weiwei?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=s