ジエチレングリコールが混入
5月10日のWeb版 徳島新聞にこういうニュースがありました。
パナマで販売されたせき止め薬に中国製の有毒な原料が含まれ、服用した少なくとも100人が死亡していたと、米紙ニューヨーク・タイムズなどが9日までに伝えた。米国では中国産の原料を使ったペットフードを食べたネコや犬が死んでおり、中国産食品や原材料への不安が高まっている。
同紙などによると、昨年秋、パナマで原因不明の死亡例が相次いだため、パナマや米当局が調査したところ、せき止め薬に使われた有毒な化学物質が原因と判明。365人の死亡者が薬を服用したとの報告があるという。
せき止めシロップに甘味料として使われるグリセリンのかわりに、中国の業者が安価な産業用「ジエチレングリコール」を使用、「グリセリン純度99・5%」と偽って輸出していたとみられる。
中国当局は8日、「無認可の業者が、医薬品として使えない化学原料を製造した」と中国企業の関与を認めた。(ニューヨーク9日共同)
ニュースにある昨年秋の騒動とはこのようなものだった。
パナマにおける謎の疾病 原因はジエチレングリコール 2006年11月28日
米国疾病予防管理センター(CDC)の国立環境衛生センター(NCEH)で働く科学者らは、2006年9月以降、パナマで多数の死者が出た謎の疾病について、パナマ社会保障機関(政府機関)が製造した無糖咳止め・抗アレルギーシロップ剤に混入された「ジエチレングリコール」が原因であったことを突き止めた。
疾病は下痢と発熱で始まり急性腎不全、麻痺、死亡に至るもので、患者の多くは高齢の男性だった。パナマ保健省は医師らの疾病報告に基づき対応を協議し、米国CDCや米国食品医薬品局(FDA)などに原因究明のための国際協力を要請した。
CDCチームは感染症の可能性も調べると共に、患者宅で見つかった高血圧用の薬や咳止めシロップなどの医薬品を分析。CDCチームがパナマに到着して9日後にジエチレングリコールが原因物質として浮かび上がり、疫学調査の結果、咳止めシロップが患者らに見られる共通因子のひとつであることが判明した。
パナマ保健当局は、ジエチレングリコール混入医薬品及び混入の疑いがある医薬品を病院から直ちに回収すると共に、国民に対してそれらの使用を中止するよう緊急告知した。問題の医薬品はすべてパナマ社会保障機関の工場で製造されたものであり、現在、これらの医薬品になぜジエチレングリコールが混入したのか、その原因について故意、事故などの観点から調査が進められている。
なお、同様な事件が10年前にハイチでも発生している。1995年11月から翌年6月にかけて109人の子供が急性腎不全などを患い、そのうち88人が死亡している。CDC、FDAなどとの共同調査の結果、ハイチ当局はアセトアミノフェンシロップに配合されたグリセリンがジエチレングリコールで汚染されていたこと、また、このグリセリンは中国から輸入されたものであったことを発表した。
食品でもこのジエチレングリコールが絡んだ事件がある。
1985年、オーストリアにおいて、極甘口のデザートワイン市場に目を付けた一部のワイン業者が、糖度の足りないワインに数g/L濃度でジエチレングリコールを混ぜて市場に出していたことが発覚。これを機に日本においても検査が開始されると、ジエチレングリコール混入輸入ワインが見つかり、その後、輸入品に止まらず国内品からもジエチレングリコールが検出された。ジエチレングリコールは甘味があり、粘度の高い無色の液体なので、日常的に消費する普通のワインにこれを添加すると舌触りがとろりと甘くなり、高級感を感じさせることができたようなのだ。当時、これによる健康被害に関する報道はなかった。
問題の「ジエチレングリコール」とは:
エチレングリコール(HOCH2CH2OH)2分子が脱水縮合したHOCH2CH2OCH2CH2OHの化学構造式で示される水溶性の無色無臭の粘稠な吸湿性液体で、甘味がある。医薬品原料、食品添加物として使用が認められている国はない。工業用溶剤、ブレーキ液、不凍液、燃料添加剤などさまざまな用途に用いられる。中毒例の多くは経口摂取によるものであり、中毒症状は吐き気、嘔吐、頭痛、下痢、腹痛で、大量のジエチレングリコールに暴露されると腎臓、心臓、神経系に影響を及ぼす。ヒトに対する経口致死量は体重に対して1000mg/kg。
上の写真は、京都東福寺の方丈庭園の一部です。苔と石が市松にデザインされた小市松は残念ながら時期的に苔の部分のボリュームが足りず、意図した美しさには至っていませんでした。
桜は早朝散歩した京都御所の桜です。写真はクリックすると拡大画面で見ることができます。
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