セロファンはアナーキー
ミシェル・ゴンドリーの映画は外せません。「The Sience of Sleep」の邦題「恋愛睡眠のすすめ」には「?」です。むしろ「セロハンはアナーキー」のほうが、「ヒューマンネイチュア」や「エターナルサンシャイン」を創り出した監督の「へんだけどかわいい」創造性を表すのに適していると思うんだけど。映画のなかでまるで双子のステファニーとステファンが夢中になって想像する世界を形にしていく最中に「セロハン!」とひらめくように。よく知りぬいた睡眠術というのはすなわち「夢中でなにかする」術でもあるのかなーとふと思いました。
ところで監督ゴンドリーはパリでグラフィックデザインを学ぶ美術系の人、結成したバンド「Oui-Ouiウイウイ」ではドラムを担当してました。音楽でなにかやりたいと思っていたところ、93年ビョークに出会ったことで幸運をつかみます。ビョークの「ヒューマンビヘイヴィア」はすべてのアワードで受賞。ベック、ケミカルブラザーズ、ダフトパンク、ホワイトストライプスなどなどと、もりもりミュージックヴィデオクリップの傑作を生み出していきます、そしてミュージックヴィデオ界の天才と呼ばれるまでになりました。
今回の映画の上映に先立って来日した監督は、「The Sience of Sleep」についてこう語っています。
ガエル・ガルシア・ベルナル演じる主人公ステファンは「まさにボク自身のこと」「ボクが見る夢というのはとても鮮烈な部分が多くて、起きても憶えていることが多いんだ。さまざまな夢にまつわる体験が、この作品のそもそものスタートだった。夢のなかでは自信に満ちた男なんだけど、実世界ではちょっとシャイで奥手なところがある。そんな男性像を作るのと同時に、ボクの個人的な恋愛体験などいろいろのものがミックスされて仕上がった。」
また音楽は、ヒューマンネイチュアでもかかわったコンポーザー、ジャン・ミシェル・ベルナール。今回は、ピアノを弾く警官としても登場。あるオリジナルスコアではゴンドリー自身がドラムを叩いているそうです。その他、フレンチポップスのディック・アネガルン、そしてガエル、シャバたちによるルー・リードのカバーなどがある。
写真は映画のワンシーン、このぬいぐるみの馬はステファニーの宝物。これを見つけたとたん寂しげな表情に魅了されたと彼女は告白。ステファンはこの馬を機械仕掛けで動くようにする、彼はへんなテクにすぐれているのだ、あとは夢のなか.....
ステファンはイラストレーターを夢見ていて、とっておきのカレンダーの構想を売り込もうとします、これが傑作なんです。売れるわけはない!のですが、世界のディスアスター(大災難、不幸)を描いていて彼の夢のなかではこれが驚くばかりに売れるんです。受賞もしてその際のスピーチでこの大災難にあった人たちのおかげと感謝します。毎月これを見るたびに戦争など世界の災難について思い起こすというのも、さすが「セロファンはアナーキー」なのでした。
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