見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2008/08/22

グルジア戦争はネオコンの選挙策略


◇グルジア戦争はネオコンの選挙策略
サンフランシスコクロニクル紙 13 August 2008 by Robert Scheer

今回「オクトーバーサプライズ」が8月に試みられた可能性はないか?そして、強国ロシアの支配から生き残りをかけて苦闘する勇敢な小国グルジアというくだらない論点が米国の大統領選を左右するため火をくべられた可能性はないか?

この可能性を簡単に片づける前に、共和党大統領候補ジョン・マケイン上院議員の主席外交政策顧問、ランディ・シューネマンという人物の役割についてよく考えてみてくれ。彼は4年におよび雇われたグルジア政府のロビイストで、主席外交顧問になって数カ月後の今年3月に職務上のロビー活動取引関係を終えている。

これより前、彼が「アメリカの新世紀プロジェクト」の理事だったとき、イラク戦争の進展を誘導し工作したネオコンのひとりとして最もよく知られた。マケインの2000年大統領選挙戦で働いた後、米国のイラク侵略の擁護者として働いた「イラク解放委員会」を率いたのがシューネマンだった。

最近のグルジア勃発で彼が同様の役割を演じた内実を暴露する証拠の痕跡がある。なんとまあ、ロシアの反撃を生むのを明確に覚悟した、南オセチアの分離地域への侵攻を指図することで、親しい友人であり元雇用主のグルジア大統領ミハイル・サーカシビリの愚かさを説明したのだ。米国が彼のかたきをとることになる、シューネマンのような彼が信頼する有力なアメリカ人からの保証なしに、サーカシビリがこの危険なエスカレーション(段階的拡大)を引き起こしたとは信じられない。マケインの遊説のため彼が公式に外交政策を発表している前にも、シューネマンはこれらの問題でマケインを長く指導した。

2005年、雇われたグルジアのロビイストとして効果を上げる中で、シューネマンはグルジアのNATO加盟を後押しする議会決議案を立案するためマケインと一緒に働いた。一年後、まだグルジアに雇われている間に、シューネマンはその国への往復でマケインに同行し、そこでサーカシビリと会ってロシアのウラジミール・プーチンに対する好戦的な彼の見方を支持した。

イラク戦争に向けた前段階の繰り返しで、共和党候補の外交政策のスタンスを左右することになっているネオコングループの陰謀の中枢にシューネマンはいる。新たな冷戦の基礎を形成するため、この連中は常に外敵を捜している、サダム・フセイン政権の崩壊で、ますます望みにぴったり見合うようになったのがプーチンのロシアだった。

なるほど、悪魔のようにひどそうに聞こえるが、それは戦争と平和の問題でマケイン選挙戦のデザインの重要性を評価する最も周到な方法かもしれない。どうしても必要な、恐怖を覚えさせる敵を有してアメリカ軍国主義に油を注ぐのに、候補者のプーチンの悪魔化が先のフセインの濫用よりも大計画だとのあらゆる徴候がある。

もっと慎重な外交政策の姿勢を了解しようと急ぐ、民主党大統領選候補バラク・オバマ上院議員が比較すると弱く見えてくるのに、マケインは戦う新たな冷戦でタフに見えるようになる。この間に、イラクの大災害から経済のメルトダウンまで、マケインが継承しているブッシュの恐ろしい結果は都合のよいことには無視されることだろう。だが、すでに世界のその他の国のそれを併合するよりも大きい軍事予算をだましとるための言い訳を、ネオコンの資金を手助けしてきている軍産複合体に提供することになる。

ここで精を出すのが、ロシアが大規模軍縮をだましとる敵になり、プーチンが新たな悩みの種のジョセフ・スターリンとして役を振り当てられる、旧ソ連のイメージを喚起するネオコンの自己達成的な予言だ。「報復主義(失地奪回策)のロシア」はもう一度阻止されるべきだとマケインは非難している。プーチンはポスト共産主義のロシアで選挙で選ばれたものすごい人気のある指導者であったが、彼のDNAばかりかロシア国民のDNAにも常に帝国主義が潜んでいるのは当然のことと想定される。

なんとも都合よく、スターリンがグルジア人だったのを忘れる、そして現にロシア軍が脅迫されたグルジアの町ゴリを占領していたなら、ロシア革命の統制を奪うことで地位を保持したゴリ生まれの彼らの息子が博物館でいまも名誉を与えられていることに気づいたことだろう。それどころか、火曜日、ロシアの爆弾5発が、報じられるところではゴリのスターリン広場に落とされた。

ポスト共産主義者のグルジア人には、南オセチアとアブハジアで帝国のもくろみがあることにも触れられるべきだ。まったくの矛盾した行為とは、セルビアからのコソボ独立を擁護して、いまは民族的に反抗的な州のグルジアの侵攻を無視している米国の行為である。

マケインには選挙のあいだタフに見えるためにロシアを悪霊として描くことでシューネマンのネオコンのおはこをあまりに熱烈に採用するのは、上院議員が年をとってもまだひどく無責任であるのを思い出させるものである。

▲ロバート・シェールは、新著「The Pornography of Power: How Defense Hawks Hijacked 9/11 and Weakened America(権力のポルノグラフィ:国防のタカ派がいかに911をハイジャックしてアメリカをぐらつかせたか)」の作者です。

以下は、田中 宇の国際ニュース解説の最新号から一部抜粋。前回ここで紹介した「ラムゼー・クラーク(IAC)の呼びかけ」も、ぐんとクリアーになってくることから紹介しておく。全文は「米に乗せられたグルジアの惨敗:田中 宇 2008年8月19日」をお読みください。
 
◇マケインを優勢にする策略?
グルジア軍侵攻の数日前から、南オセチアではグルジア人とオセチア(オセット)人の武装住民どうしの散発的な銃撃戦が続き、ロシアとグルジアの両方がOSCEの交渉枠組みを使い、仲裁に入っていた。8月7日午後、グルジアのサーカシビリ大統領は国営TVを通じ、自治を与えるので交渉しようとオセチア人に停戦と和解を呼びかけた。しかしこの和解提案は、オセチア人とロシアを騙すトリックだったようで、数時間後の同日夜、800人のグルジア軍が州境を超えて進軍し、ツヒンバリの市街を破壊し、軍事占領した。

グルジアが侵攻したタイミングについてアメリカのアナリストの間ではこんな推論が出ている。8月7日が選ばれたのは、翌日から米大統領選挙戦で優勢な民主党オバマ候補が夏期休暇で故郷ハワイに戻って選挙活動を1週間休んだためであり、ブッシュ政権が共和党マケイン候補を挽回させるため、グルジアのサーカシビリ大統領をたきつけて侵攻させたというのだ。

サーカシビリは2003年の民主化運動「バラ革命」によってシュワルナゼ前大統領を追い出し、政権に就いたが、バラ革命のノウハウを提供したのは米国務省やCIAである。米当局は2000年のセルビア、2003年のグルジア(バラ革命)、2004年のウクライナ(オレンジ革命)と、ロシア東欧圏で相次いで親ロシア的な政権を「民主革命」によって潰し、親米反ロを掲げる政権と交代させる反ロシア的な政権転覆戦略を展開した。

サーカシビリは米コロンビア大学を卒業し、ニューヨークで弁護士として働いていた経歴を持つ。政権をとってからはアメリカ帰りの若手を閣僚に起用し、経済の自由市場化を進めた。サーカシビリは英語が堪能なので、CNNなど米テレビの報道番組に出て、ロシアがいかにひどい奴らか力説する。民主主義で自由市場経済の小国グルジアが、独裁で暴虐な大国ロシアに果敢に立ち向う構図は、冷戦的な米ロ対立を再燃させたい米の軍産複合体にとっても好都合だった。

米はグルジアに130人の米軍顧問団を駐留させ、武器も支援してきた。サーカシビリは、ロシア軍との戦争になることが必須な南オセチアへの進軍を挙行する前に、米軍に話をつけたはずだ。米軍の方からサーカシビリに侵攻話を持ちかけた可能性もある。(ワシントンポスト紙 10 August 2008)

米政界では共和党マケイン候補(上院議員)がグルジアとの関係が深い。マケインの主席外交顧問ランディ・シューネマンは、今年3月に問題にされるまで4年間グルジア政府から計90万ドルの金をもらい、米政界でグルジアのNATO加盟への根回しなどのロビー活動をしていた。

シューネマンは「ネオコン」で、かつてイラク侵攻の実現のために米政界で大騒ぎした一人である。グルジアはイラクに2000人を派兵し、米英に次ぐ3番手の駐留兵力数だった(ロシアとの開戦後、一部兵力を母国に戻した)。この派兵も、NATO加盟を有利にするためイラクで兵力不足の窮地に陥っている米を助ける目的で、サーカシビリとシューネマンが動いて決まったことだろう。

サーカシビリ政権はシューネマンなどネオコンを通して米の軍産複合体との関係が深く、この関係性を背景にNATO加盟運動や、ロシアとの敵対戦略を展開してきた。グルジアの軍事予算は3倍に増え、米仏イスラエルから武器を買い、南オセチア州とアブハジア州など、国内にある分離独立派の3州を軍事制圧する準備が行われた。

◇再起動した戦争プロパガンダ装置
ネオコンが画策した戦争は、米軍のイラク侵攻や2006年夏のイスラエル・レバノン戦争など失敗ばかりだが、今回のグルジアの南オセチア侵攻も大失敗となった。しかしその一方で、米の軍産複合体やマケイン候補にとっては米ロ間の敵対関係が扇動され、好都合となっている。

8月8日にグルジアとロシアが南オセチアで戦って以来、米マスコミはグルジアに味方し、冷戦時代を思い起こさせる、ロシアを非難する論調ばかりとなった。一見すると、南オセチアはグルジア領なので、ロシア軍の侵攻が「悪」であり、グルジア軍の侵攻は「内政問題」となる。だが、南オセチアはグルジアからの独立を求めて戦っている地域であり、そこにはグルジアとロシアも参加して定めていた停戦・平和維持の協定があった。

グルジア軍がこの協定を破って侵攻したため、ロシア軍が応戦する形で侵攻したと考えると、悪いのはグルジアの方になる。ロシア側が傘下のオセチア人民兵を使ってグルジア軍を挑発したのが戦争の始まりだという指摘もあるが、プーチン首相が北京におり、メドベージェフ大統領も休暇でボルガの船中にいた8月7日に、ロシア政府が挑発作戦によって開戦を誘発したと考えるには無理がある。

プロパガンダ装置は巧妙だ。ロサンゼルスタイムス紙はグルジアに駐留していた米軍顧問団(米海兵隊)に取材し、顧問団はグルジア軍による侵攻計画を事前にまったく知らなかったと報じているが、これは米軍が発する歪曲情報をうのみにしている可能性が大きい。顧問団は諜報や情勢分析に長けている米海兵隊の特殊部隊であり、侵攻計画を知らなかったはずがない。(LAタイムズ17 August 2008)

フォックスニュースは開戦直後、ツヒンバリにいた米国人少女に電話をつないで放映したが、侵攻を現場で経験した少女がグルジア軍の侵攻を非難し、ロシア軍に謝意を表明すると、早々に電話を切り、キャスターは「戦争には、いろいろグレーゾーンがあるものです」と、少女の意見の効力を打ち消すコメントで話をまとめた。オセチア人はみな、親ロシア反グルジアなのだから、オセチア系と思われるこの少女が、親ロ反グルジア的な意見を言ったのは当然なのだが、反ロシア・プロパガンダ装置と化した米マスコミとしては、視聴者にその事実を知らせるのはまずいというわけだった。

米マスコミにはロシアの立場を代弁する投稿が掲載されたり、オセチア人が反グルジアであることを的確に指摘する記事もあり、全体としてのバランス感覚は残しつつ、微妙に反ロシア的な姿勢となっている。

米議会では、来年度予算で、F22戦闘機など、高価な新兵器開発の予算が削られそうになっていたが、グルジアの開戦で「ロシアと戦うにはF22が不可欠だ」という議論が米議会などで噴出した。軍事産業から献金されている議員たちは一挙に活気づいた。(ウォールストリートジャーナル紙 16 August 2008)

米大統領選挙では、オバマが「敵とも対話する」という姿勢を基点にしている半面、マケインはもっと好戦的で「ロシアをG8から除名すべきだ」といった冷戦体制の復活をめざす言動が目立つ。グルジアでの戦争勃発前は、米マスコミの論調はオバマびいきが強く、マケインに批判的だったが、開戦とともにがぜん、マケインの出番が多くなった。

◇危うくなるサーカシビリの政治生命
サーカシビリは2003年、2つの公約を掲げてグルジア大統領になった。(1)南オセチア・アブハジアなどに独立を断念させ、グルジアに完全統合する(2)グルジアのNATO加盟を実現する、の2点である。今回の敗戦で、この2つとも不可能になった。

グルジア人の多くは「米と太いつながりを持つサーカシビリに任せれば、NATOに入れるし、欧米の軍事的後ろ盾を使って分離独立派の2州を抑えられる」と期待していた。その期待が消えた今、グルジアの野党は反サーカシビリ色を強めている。サーカシビリは、反対派に言いがかりをつけて次々と投獄する独裁者なので、今のところ野党は慎重だが、すでにサーカシビリが辞めさせられるのは時間の問題だという見方が欧米で出ている。

サーカシビリは自国とロシアが戦争になったら米軍が飛来して助けてくれると期待したのだろう。有事の援軍の約束を米政府中枢からとりつけない限り、小さなグルジア軍が巨大なロシア軍に戦争を仕掛けても勝てない。しかし実際には米軍は来なかった。米政府が出すことにしたのは被災者への人道援助だけだった。グルジアの政府や世論は「アメリカに裏切られた」という怒りに満ちた。

サーカシビリが米から裏切られて挫折したのを見て、おそらくロシア周辺の多くの国々の指導者が「アメリカには頼れない」と思っているはずだ。これも、今回の戦争が米にもたらした悪い事態である。

このほか、中央アジアやアフガニスタン、イラク、アラブ地域などでも、米が今回グルジアを見捨てたことを見て、親米的な傾向を持っていた政権が今後、米を当てにしなくなり、米の言うことを聞かなくなる傾向が予測される。(イスラエル紙ハーアレツ)

◇グルジアを裏切ったイスラエル
今回の戦争で難しい立場に追い込まれているもう一つの国はイスラエルである。8−9世紀にユダヤ教のハザール国の影響圏だったグルジアには、もともとユダヤ人が比較的多かった。イスラエルには8万人のグルジア系コミュニティがある。サーカシビリ政権の閣僚のうち、国防相と国家再統一相はユダヤ人で、イスラエルとの二重国籍を持ち、ヘブライ語を流暢に話す。

サーカシビリが、ネオコン(軍産複合体とイスラエル右派をつないで米政界を牛耳ることを目指した強硬派勢力。ユダヤ系が多い)を通じて米政界に食い込んだこともあり、グルジアはイスラエルとの関係が深い。イスラエル軍は傘下の民間企業を通じ、グルジア軍の特殊部隊を訓練し、無人偵察機など諜報機器を売ってきた。サーカシビリは、ロシアと戦争になったら、米とイスラエルが軍事支援してくれると思っていただろう。

しかし実際には開戦後、米軍は動かず、イスラエルもほとんどグルジアを支援してくれなかった。イスラエルはロシアから圧力をかけられ、グルジアへの軍事支援を止めてしまった。ロシアはイランやシリアと親密で、イスラエルがグルジアへの軍事支援を続けたら、ロシアはイランやシリアへの軍事支援を強化しかねなかった。ユダヤ人であるヤコバシビリ国家再統一相は激怒して「イスラエルは裏切り者の欧米に仲間入りした」と表明した。

今年7月、ロシア軍がグルジア国境近くで軍事訓練を行った際、同時期にグルジア駐留の米軍顧問(海兵隊)はグルジア軍と一緒に対抗的な軍事演習をやっている。米とグルジアはロシア軍が戦争準備をしているのを知っていたどころか、挑発的な対抗軍事演習をしていた。そもそもロシアが4月にグルジア戦争の準備を始めたのは、2月に反ロシア的(セルビアはロシアと同じスラブ人の国)なコソボ独立が米によって決行され、グルジアとウクライナのNATO加盟が検討されて、ロシア包囲網が形成されていたからである。

トルコのアブドラ・ギュル大統領は、グルジアの展開を見て「米はもはや単独で世界の政治体制を形成し続けることができなくなっている。米は(ロシアや中国など)他の諸大国と覇権を共有せねばならなくなった。新しい、多極的な世界体制が出現しつつある」と述べている。ギュルは、今回の戦争を機に、米単独覇権体制の終焉と、世界の多極化が進むと指摘している。

EUはすでに「ロシアとは対立しない。協調を保つ」と決めている。今後、可能性は低いが、もし米軍がグルジア軍を支援するために派兵した場合、ロシアと戦争する気の米と、ロシアとは戦争したくないEUとの意見対立が明確になり、NATOは空中分解する。米がグルジアのNATO加盟をごり押しした場合も同様である。米はNATOを結束させて新冷戦体制に向かうどころか、NATO解体の危機に瀕している。これも、多極化の傾向である。

▲田中 宇の国際ニュース解説は下記のウェブサイトで読むことができます。
http://tanakanews.com/080819georgia.htm

写真は、マドリードの空港を離陸直後に墜落、炎上したスペインの航空会社スパンエアの旅客機MD82の残骸
これを目撃した旅行者は、大規模な爆発が起こる直前に炎を見たと話している。(BBC NEWS)