見つけた 犬としあわせ

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2009/05/25

ワーオー!シャルロット


◇第62回カンヌ国際映画祭は24日、オーストリアのミヒャエル・ハネケ監督の「Das Weisse Band(The White Ribbon)」が最高賞のパルムドールを獲得し、閉幕した。

「ファニーゲーム(Funny Games)」や「コード・アンノウン(Code Unknown)」などの痛ましい作品で、邪悪な力によって崩壊する現代の中産階級の暮らしを描くことが多いハネケ監督は、モノクロのこの作品で第一次世界大戦前のドイツの小さな村を舞台に悪意を描いた。

コンペティション部門には20作品が出品された。クエンティン・タランティーノ監督やジェーン・カンピオン監督などの強力なライバルを破ってパルムドールを獲得したハネケ監督は、「人生でとても幸せな瞬間だ」と語った。

ステージに上がったハネケ監督は、2001年の自分の作品「ピアニスト」の主演女優で、今回審査委員長を務めたイザベル・ユペールからシュロ像を受け取った。

ユペールは、批評家からも好評で、ナチスの残虐性のルーツのたとえ話と見られることの多い「Das Weisse Band」を、「メッセージは伝えないが、重要な事を教えてくれる素晴らしい映画」だと評した。

主要部門の受賞結果は以下の通り

・最高賞パルムドール:「Das Weisse Band(The White Ribbon)」ミヒャエル・ハネケ監督 オーストリア
・グランプリ:「Un Prophete(A Prophet)」ジャック・オーディアール監督 フランス
・審査員賞:「Bak-Jwi(Thirst)」パク・チャヌク監督 韓国
      「Fish Tank」アンドレア・アーノルド監督 イタリア
・女優賞:シャルロット・ゲンズブール(フランス)作品「Antichrist」
・男優賞:クリストフ・ヴァルツ(オーストリア)作品「イングロリアス・バスターズ」
・監督賞:ブリランテ・メンドーサ(フィリピン)作品「Kinatay」
・脚本賞:メイ・フェン(中国)作品「Spring Fever」
・功労賞:アラン・レネ(フランス)
・カメラドール(新人監督賞):「Samson and Delilah」ワーウィック・ソーントン監督 オーストラリア

(AFP 2009年5月25日)

◇男優賞を射止めた「イングロリアス・バスターズ」のクリストフ・ワルツ。クエンティン・タランティーノ監督に「この作品にとって要(かなめ)の役。ぴったりの俳優が見つからなければ映画を撮らないつもりだった」とまで言わしめたドイツ人将校ランダを演じ、「クエンティンの情熱が、私の才能を引き出してくれた」と感謝をささげた。

ラース・フォン・トリアー監督の「Antichrist」に主演したシャルロット・ゲンズブールが女優賞を獲得。「今、ここにいることが幸せ。この賞をラースと分かち合いたい」と感激の面持ちだ。

ミヒャエル・ハネケ監督の「Das Weisse Band」のパルムドール受賞について、審査委員長のイザベル・ユペールは、過去の出演経験と審査は無関係ときっぱり。「この作品は、人間への慈愛にあふれています。倫理的でもありますが、評決を下さずあいまいな方法で語るなど、監督は主題との距離を完ぺきに取っています。非常に重要な映画だと思います」と客観的に評価した。

一方、最後までハネケ監督とパルムドールを争っていると目されていた「Un Prophete」のジャック・オーディアール監督は、グランプリにも満足げ。記者団から、パルムドールではなかったことについての感想を聞かれても「授賞式が終わってから2時間しかたっていないのに、すでに40回も同じ質問をされている。うれしいに決まっているじゃないか。(グランプリは)大きな賞じゃないのか?」と切り返し、祝福と笑いを誘った。

また、同性愛を描いた「Spring Fever」が、脚本がない作風にもかかわらず脚本賞を受賞したのはサプライズだった。ロウ・イエ監督は、性描写などエッジの利いたスタイルの映像が特徴のため、中国では映画が製作できなくなっているが、「スタッフに(自分と同じような)影響が及ばないようにと心から願う」と仲間を気遣いながら、「すべての映像作家たちが自由に映画をつくれるようになるべき」と心からの願いを訴えた。

(Variety japan 2009年5月25日)

◇シャルロットは記者から、「賛否両論の声があったが、この賞をどう受けとめるか?」と問われると、「観客の意見がわかれたことは知っています。でもわたしはラースの才能を信じている」とコメント。また、「受賞を一番最初に誰に伝えたか?」と尋ねられると、シャルロットは母親で女優のジェーン・バーキンにメールで伝えたそうで、「ワー!オー!」という反応が返って来たという。一方、クリストフは、タランティーノ監督に電話で喜びを報告したそうで、「(バーキンと同じく)ワー!オー!というのが英語で返って来た」と答えて、会見場は笑いに包まれた。

(シネマトゥデイ 2009年5月25日)

写真は女優賞を射止め笑顔のシャルロット・ゲンズブール