見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2009/12/13

うちひしがれたハート



◇ウッズの唯一の選択肢は離れること(無期限欠場)だった

来年1月下旬に彼はカムバックするだろうと私たちは推測し、早ければハワイのシーズン開幕戦か、または2月のドバイのほうを彼は選ぶかもしれないと私たちは思いめぐらす。

だが、タイガー・ウッズの復帰には公私両面を必然的に伴うことになり、じっくりこのすべてを思案するなら、予測のつく当面の復帰を心に描くのは不可能だった。

これは驚くばかりの信用を失うことだった。けばけばしい主張と私生活に関するウワサのさんざんな2週間後、あらゆるスポーツの中で最も優位にある人物のひとりとして、彼のパワーの絶頂から屈辱と深い悔恨まで。

そして、社会の注目への復帰は現時点では考慮に入れられないと世界のトップゴルファーが認めてきている。復帰はかたわらに置いておかねばならない。

くだけた窓、破れた約束、うちひしがれたハート、めちゃめちゃな結婚、くじけた男、こわれたイメージ、彼が最初になおすのはどれか?それは実にひどい混乱でひどく悲しい。

タイガー・ウッズの非難の余地のないピカピカのイメージは色あせてきている。

タイガー・ウッズが部屋に入ってくるやいなや、あなたは圧倒される。それは完ぺきな装いでも、運動選手らしさ、自信のある歩きっぷり、すばらしい笑顔の瞬間でもない。それは目だ。

その目はどんな時にでも決して動揺しない、彼があなたに語りかけるとして彼の目は決してそれない(なんとも皮肉)、まるで部屋にはあなたしかいないかのごとく、その目はあなたにとどまる。うまく逃げるいい加減さはない。ボクは1997年にそれに気づいた。彼のマスターズ初優勝以降、最初のメジャー大会、USオープンの米国議会での満員の記者会見でだ。

スポーツ界の最新のイコンへのボクの最初の質問(彼のキャディに関することだったと思う)で、混雑した記者会見の後ろにボクは立っていて、質問された瞬間から彼は決してボクから目を離さなかった。

それ以降12年間、彼のせっせとビジネスするやり方は決して変わってきていない。彼はいま、後ろめたさを示さず誰をまともに見れるのか?これは彼の問題であり、彼の私生活の再建が彼の公的な評判の面になぜこのように重要なのかだ。

2週間の広報業務の思いがけない大災難で、アメリカのコメンテーターらはこれを正しい先手と呼んでいる。ことによるとそれは危機を脱する、峠を越えたということだが、それを言うのは早急すぎる。

重大事はウッズの手に制しきれていない。彼は「この状況はすべて私のせい」との彼の最初の声明から、「あの罪」の告白をすること、今は「不貞」の追認をすることを余儀なくされてきている。

彼に大金を支払うスポンサーがいま、どうやら自社製品の彼のCMをTVで流すのを止めてきているらしい。


彼は、世界中の受信ボックスの流れを妨げるインターネットのジョークの的、継続するタブロイド紙のせんさくの対象だ。いくらボクたちが彼と彼の家族だけにしておいてやれと世界に望んでも、事態のフルコースがたどられるまで成り行きに任せるしかない。

ウッズが彼の結婚を修復しようとするとき、彼の戦略家たちは彼のイメージを回復させようとつとめている。彼は常に限られた仲間の顧問たちと仕事をしてきており、もしその誰にせよ彼の不貞に関与していたなら、彼らがそのままとどまると、そして彼の結婚が大丈夫と見るのは、ほぼ不可能だ。

二つのシナリオはどうやら相互に相容れないらしい。ゴルフの世界とコマーシャルの企業分配の支配の中心にずっと彼らがいたので、ウッズにとってその固く密着するグループの誰か、あるいは全員を失うことは、大々的な打撃となるはずだ。

ゴルフにとってもまた彼の失墜は損害を与える。PGAツアーは中休みをとるウッズの決定にすぐ支持を表明したが、彼らの最大の名刺の将来を取り巻く不確実性があまりにも高いので来年のスポンサー契約を更新しようとするにあたり見通しが懸念されるはずだ。

膝の故障で全英オープン(ロイアル・バークデールGC)を逃したとき全英オープン(05&06ウッズ優勝)はものともしなかったが、彼が2度優勝している開催地、セントアンドリューでの150周年全英チャンピオンシップに、ありうる彼の欠場の影響はどんなものか?

そうともファンはそれでもひょっこりやってくるだろう、彼がいなくても実際ボクたちはもっとエキサイティングなチャンピオンシップを手に入れるかもしれない。2000年と2005年の彼の優勝はまったく群を抜いていた。だが、たったいま、信用がバリバリと砕かれる企業サイドで手が打たれており、ウッズ事件は一括取引のかなりの犠牲を払うばかりだ。

ペブルビーチでのUSオープンは同様の影響をこうむるだろう。

(BBC 12 December 2009 by Iain Carter)

◇来年4月のマスターズはもちろん、長期欠場の可能性もあるだけに影響は大きく、スポンサー契約を結ぶ通信大手のAT&Tは「契約を見直す」との方針を示し、経営コンサルティングのアクセンチュアは「ウッズの資質はそのままわが社の企業イメージだったが、今はどこよりも不安定な立場に立たされている」とホームページからウッズの写真を削除した。米タイム誌は調査会社アーガイル・エグゼクティブ・フォーラムの分析として「ウッズと何らかの形でかかわりのある企業の76%が関係を棚上げするか、削除するか、中止にする」とウッズ離れが加速するとの見通しを示した。
ツアー通算71勝、世界ランキング1位のウッズに“おんぶに抱っこ”の米ツアーが受ける影響も計り知れない。ウッズが昨年後半、ひざの故障で離脱した際は視聴率が前年比50%も下がっており、来年末に契約更新を控える11年以降のTV放映権料が安く買い叩かれる恐れがある。ウッズ不在なら試合の冠スポンサーから降りるという企業が出てくる可能性も高く、ツアーは試合数激減の危機に立たされる。

(毎日新聞 2009年12月13日)