がれきからバイオマス発電
◇がれきを発電に有効活用 林野庁、1次補正に3億円計上へ
林野庁は19日、東日本大震災の被災地にある大量のがれきをバイオマス(生物資源)発電などで有効活用する事業を実施する方針を固めた。2011年度第1次補正予算に3億円程度を盛り込む方向で調整している。
政府の推定によると、がれきは家屋によるものだけで2500万トンあり、その約8割が木材とみられている。木材をバイオマス発電に使うには、5センチ以下の木くずにする必要があり、市町村や業者が被災地での利用のために移動式の木材破砕機を購入する際、2分の1を補助する。破砕機の価格は1時間当たりの処理能力で異なるが、数千万円と言う。
バイオマス発電所は全国に100カ所程度あり、民間企業が運営。木くず10万トンで年間1万キロワットの発電が可能とされる。福島第1原子力発電の事故で今夏の電力不足が懸念される中、バイオマスの発電能力を向上させて対応する狙いもある。
発電だけでなく、木くずを接着材と混ぜて板にする「木質ボード」としての有効活用も見込む。木質ボードは住宅の床材や壁材などに使われている。
がれき処理そのものは、環境省の災害廃棄物処理事業費として3000億円程度が計上される方向だが、ほとんどが焼却される見通し。林野庁はがれきの木材のうち、少なくとも1~2割を有効活用したい考え。すでにバイオマス発電所で自家発電している業者や木質ボードメーカーなど6カ所から、木くずを引き受ける申し出があると言う。
(引用元:産経ニュース 2011年4月19日)
◇森のゴミから熱と電気を作る
スウェーデンの木質バイオマスエネルギー
日本と同様に石油資源をほとんど持たないスウェーデンでは水力と原子力が電力の多くを支えてきた。しかし、70年代の後半以来の国民を二分する議論の中、原子力は今後徐々に廃棄されていく見通しにある。また、水力についても自然保護の観点から新たに大規模な開発が行われる余地はない。こうした中、同国では国内に豊富にある森林資源を活用したバイオマスエネルギーが大きな期待を集めている。
・バイオマスを燃料としたコジェネレーションを行うブリスタ(BRISTA)社
ブリスタ社が一年間に作り出すエネルギーは約550GWh。190GWhの電気と360GWhの熱が約4万人の顧客に供給される。熱は、主に2つのコミューンの地域暖房と近くにあるアーランダ国際空港の暖房に利用され、発電された電力は「グリーン」な電力として売電されている。将来的にはストックホルムにも熱供給を行うことも計画されているという。
このようにバイオマスを燃料として利用することは環境の観点から大きなメリットがある。まず、バイオマス燃料は燃やしても樹木が生長時に固定した以上の二酸化炭素を排出することがない。このため二酸化炭素の排出抑制を通じて地球温暖化防止に貢献する。また、電気と熱を同時に作り出すことによって総合的なエネルギー効率は85%にも達する。また、バイオマスを燃やした後の灰は豊富なミネラル分を含むことから、再び森林に戻され樹木の生長に役立つ。このようにバイオマスの利用とコジェネレーション、地域暖房の組み合わせによって総合的にエネルギーの有効利用と環境への負荷の低減を実現しているのだ。
・バイオマスを押し進めるエネルギー政策
スウェーデンは水力発電資源が豊富であるが、1960年以降自然保護の観点から新たなダムの開発がほとんど行われなくなった。このため、電力については原子力発電の推進が目指され、1972年には最初の原子力発電所が運転を開始する。しかし放射性廃棄物の管理と処理に伴う問題や1979年に起きたアメリカのスリーマイル島の原子力発電所の事故をきっかけに、原子力問題は70年代を通じて国民を二分する大問題となる。80年に原子力発電に関する国民投票が行われた結果、25年と考えられている技術的な寿命のある間は稼働中の12基の原子炉の運転を認める一方、新規の原発の許可を認めないことと既存の原発を2010年までに段階的に解消することが決められた。その後、チェルノブイリ原発事故や地球温暖化問題など様々な状況変化の中で、1997年に政府のエネルギー政策「持続可能なエネルギー供給」が採択された。これによってバーセベック原子力発電所が1998年7月までに1基、2001年7月までにもう1基停止されることが決まる一方で、2010年までにすべての原子力発電所を閉鎖するという決定は見直されることになった。このエネルギー政策の第一の目標は環境的にも経済的にも持続可能なエネルギーシステムを実現させることである。このため、エネルギー消費を減少させるとともに再生可能エネルギーからの電力を増やすため、バイオマスエネルギーや風力発電への支援プログラムが含まれている。
こうした支援策とともに、同国でバイオマスエネルギーの普及の後押しをしているのが、税制などの経済的なインセンティブである。1990年から91年にかけての税制改革の一環として、化石燃料に対する炭素税や硫黄税、窒素酸化物税等の環境税が導入された。しかし、バイオマス燃料に関してはこれらのすべての課税が免除されている。
この結果、1970年にはエネルギー供給の3分の2を占めていた石油の割合は1996年には半減するとともに、9%に過ぎなかったバイオマスは18%にまで上昇し、持続可能なエネルギー供給を目指すなかで貴重な国産エネルギーとして大きな期待が寄せられている。
(引用元:Towards Sustainable Future「月刊環境自治体、2000年6月」)
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/5908/swedish_biomas.html
写真は宮城県石巻市がれきの上のこいのぼり(産経新聞 2011年4月17日)
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