選定済みの核のゴミ捨て場
◇核のゴミ捨て場 無害になるまで数万年
2011年4月2日、渋谷アップリンクにて緊急公開された「100,000年後の安全」という映画が話題を呼んでいる。原子力発電の過程で生じる人体に有害で処分が困難な高レベル放射性廃棄物を地中500メートルの施設に埋める「地層処分」をテーマにしたドキュメンタリー映画だ。
舞台となっているのはフィンランドのオルキルオトという僻地。2001年にフィンランド政府が「核のゴミ捨て場」として選んだのがこの地で、映画では「放射性廃棄物を管理するには地層処分しかない」という意見と、「放射性廃棄物が無害になるには数万年かかる。そのときまで安全だとなぜ言えるのか」 という主張が登場。フィンランドをはじめ欧米諸国で地層処分が深刻な問題となっていることが取り上げられている。
ここ「原発大国」日本でも、核のゴミをどう処分するかという議論が長年続いている。現状ではやはり「地中深くに保管するしかない」ということで、政府は、2030年頃に地層処分を開始する目標を掲げている。しかし、その処分地の選定に携わる原子力発電環境整備機構(通称NUMO)によると、 「現在のところ、候補地に名乗りを上げている自治体はない」状態ということだ。
NUMOの説明では、処分施設の建設地の選定には自治体の自発的な応募が必要で、その後、3段階にわたる調査を行った後に、ようやく地層処分が開始される。つまり、自治体の応募がなければその調査もできないということだ。
しかし、有害で何百世代先にも影響を及ぼす放射性廃棄物をやすやすと受け入れ、「核のゴミ捨て場」になろうとする自治体などあろうはずもない。NUMOは候補地の募集を進めるべく、年間数十億円を投じてPR活動を行ってきたが、福島第一原発の事故があったため、今後さらに選定作業が難航するのは間違いない。
ところが、である。地層処分を推進する機関が、自治体や住民の許可を得ることなく、極秘裡に地層処分に関する調査を進めていたのである。
本誌は、2005年3月30日に、特殊法人・核燃料サイクル開発機構(核燃機構)が作成した報告書を入手した。この資料は処分地の選定を進めていた動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が行ってきた地層処分に関する調査結果をまとめたもの。
「プルトニウム入りの水を飲んでも大丈夫!」というPRビデオを作り、世界から非難を浴びた動燃は、80年代より全国500カ所以上から地層処分を行う「適正地」を探す調査を水面下で進めてきた。これを見ると、北は北海道から南は鹿児島まで、全国88カ所の地域が放射性廃棄物の「処分地として適正」であると報告されている。その4分の1以上が東北と今回の被災地に集中している。
地層処分は、その安全性についてもいまだ議論がわかれている。地層処分を推進する機関は、「地中深くに放射性廃棄物を埋めることで放射性物質が簡単に漏れ出すことはない。地層処分は長年にわたって安全かつ確実に廃棄物を管理する方法である」と謳っているが、原発の安全神話よろしく、地層処分の安全性についても「安全とはいえない」と疑問を呈する声も少なくない。原子力資料情報室の伴英幸共同代表はこう指摘する。
「頑丈な容器に廃棄物を詰めて地中深くに埋めるのですが、問題は500メートルの地中に埋めても、いずれ放射性物質が漏れ出すのは間違いないということです。それが何年後なのかはわかりませんが、現在の技術で数万年後までそれを封じ込めることが可能かどうかは非常に疑わしいのです」
勝手に処分場を決めれば大変な反発が予想されるので、政府も推進機関も表向きは「住民・自治体の理解なく、調査は進めない」と言い続けてきた。にもかかわらず、裏ではなんの説明もなしに調査を進めてきたわけだ。その背景を、伴氏はこう説明する。
「政府は2030年頃から地層処分を行うというスケジュールを組んでいますので、このスケジュールありきで物事を運んできたのでしょう。地層処分に関する調査を行うには自治体の承認が必要ですが、自治体が立候補するのを待っていたらとても開始には間に合わない。だから、立候補する自治体を待つ一方で、独自に"地層処分を行うのにふさわしい地域"を調査していたということです」
さらにこの報告資料を丹念に見ていくと、あることに気がつく。福島県の浪江町、双葉町、飯舘村など、福島第一原発周辺自治体をはじめとして、岩手県釜石市、大船渡市、陸前高田市など、今回の大地震で深刻な被害を受けた東北の自治体の名前がずらずらと並んでいるのだ。
その数、福島、岩手、秋田、青森、宮城、山形の東北6県で合わせて25カ所。これだけでも他の地方と比べて突出しているが(次いで鹿児島、宮崎、長崎と九州地方が16カ所)、茨城と北海道を含めれば41カ所と、4割以上が茨城以北の地域で占められるのだ。あれだけの大地震が起こった地域が「地層処分の適正地」と報告されていた。一体どんな調査が行われたのか。
東北には21基の原発があるが、これは他の地方と比べても遥かに多い。さらに青森には六ヶ所再処理工場があるなど、東北には核に関連する施設が集中している。
そこに加えて、20カ所を超える「適正地」である。原発事故に苦しんでいる東北地方の人々がこの報告書を見れば、「東北はあらかじめ"核のゴミ捨て場"の予定地として、見捨てられていたのか」と強く思うのではないだろうか。
旭川大学学長の山内亮史氏はこのように語る。「"処分場"に選定されると多額の補助金が自治体に落ちてきます。ですから、過疎が進む地域ほど補助金をぶら下げれば誘いに乗ってくると思っているのでしょう。原発もそうやって作られてきましたが、"核と過疎"は密接に結びついているのです」
山内氏は、80年代初頭から北海道の幌延町周辺で進められてきた地層処分に関する調査・研究に真っ向から反対してきた人物だ。山内氏の話から、国や推進機関がどれだけ強引なやり方で「核のゴミ捨て場」を擦り付けようとしてきたかがよくわかる。
「80年代初頭、ちょうど地層処分に関する議論が盛んになったころ、時の科学技術庁長官だった故・中川一郎衆議院議員が幌延町を訪ねてきて、"この町はこれから人口が増えるということはないし、新しい産業が出てくることもない。多額の補助金が地元におりるから、廃棄物処分に関する施設の誘致に名乗 りを上げてはどうだ"と話をしたのです。この話は一気に広がり、周辺7町村の大半の住民がこれに反対しました。ところが85年のある日の真夜中に動燃が地質を調べるためのボーリング作業を突然開始したのです。これに反対する住民たちを排除するための機動隊まで配備され、逮捕者も出たほどです」
住民の理解を得るのとはほど遠いやり方で調査が進められることになった。結局、幌延町には深地層研究センターが建設され、現在では最先端の地層処分研究を行う町となっている。
(引用元:現代ビジネス 2011年6月9日)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/7207
◇だれにも保障できない10万年後の安全
放射性廃棄物の埋蔵をめぐって未来の地球の安全を問いかけるドキュメンタリー映画「100,000年後の安全」(2009年、79分、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、イタリア) 監督・脚本:マイケル・マドセン
毎日、世界中のいたるところで原子力発電所から出される大量の高レベル放射性廃棄物が暫定的な集積所に蓄えられている。その集積所は自然災害、人災、および社会的変化の影響を受けやすいため、地層処分という方法が発案された。
フィンランドのオルキルオトでは世界初の高レベル放射性廃棄物の永久地層処分場の建設が決定し、固い岩を削って作られる地下都市のようなその巨大システムは、10万年間保持されるように設計されている。
廃棄物が一定量に達すると施設は封鎖され、2度と開けられることはない。しかし、誰がそれを保障できるのか。10万年後、そこに暮らす人々に危険性を確実に警告できる方法はあるのだろうか。彼らはそれを私たちの時代の遺跡や墓、宝物が隠されている場所だと思うかもしれない。そもそも、 未来の彼らは私たちの言語や記号を理解するのだろうか。
(引用元:映画「10万年後の安全」公式サイトより)
http://www.uplink.co.jp/100000/introduction.php
本作品はフィンランドのオルキルオトに建設中の、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場"オンカロ(隠された場所)"と呼ばれる施設に世界で初めてカメラが潜入したドキュメンタリー作品。
フィンランドでは、自国の原発から出る放射性廃棄物の最終処分場として、固い岩盤を掘削し地下500メートルにまるで地下都市のような巨大な施設を作ることを計画している。現段階では正式に運用されるのは2020年を予定する。
映画は、安全になるまで10万年を要するという高レベル放射性廃棄物を、果たして人類が10万年間も安全に管理できるのか!?という問題をフィンランドの最終処分場の当事者たちに問いかける。
マイケル・マドセン監督の言葉:
10万年もの耐久性がある世界初の放射性廃棄物の最終処分場を造るオンカロ・プロジェクトは、建築学的にも哲学的にも、これまでのどの先人の試みをも越えるものです。現代の異様な解決法は、新しい何かを表しており、われわれの時代の象徴になると思っています。
記録しがいのある(暴きがいのある)現実が1つの実体のみで構成されているとは思いません。むしろ、現実とはその解釈によって決まる解釈の余地があるものだと信じています。つまり、私は、どのように現実が解釈できるか、解釈されているのか、その可能性とそれを構成するものに興味があるのです。
△上の写真は映画の公式サイトより
http://www.uplink.co.jp/100000/
◇福島11地点でストロンチウム 原発から60キロでも
文部科学省は8日、放射性ストロンチウムが東京電力福島第一原子力発電所から62キロ離れた福島市など、福島県内11カ所の土壌で新たに検出されたことを明らかにした。放射性セシウムが検出されたところでは、微量に見つかるとされており、それが証明された形だ。放射性ストロンチウムには半減期が長いものがあって、体に入ると長期間影響を及ぼす可能性があり、監視が必要だ。
検出されたのは4月10日~5月19日に採取された土壌。福島市では半減期約29年と長いストロンチウム90が1キロあたり77ベクレル、半減期約50日と短いストロンチウム89が54ベクレル検出された。
最も多かったのは浪江町赤宇木で、それぞれ250ベクレルと1500ベクレル。北西部に36キロ離れた飯舘村では120ベクレルと1100ベクレルで、 これまでに20キロ圏内で検出されていた値よりも高かった。ほかに田村市、広野町、川内村、南相馬市、二本松市でもストロンチウムが検出された。
(引用元:朝日新聞 2011年6月9日)
http://www.asahi.com/national/update/0608/TKY201106080682.html
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