見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2014/08/02

ブライアン・イーノの手紙


ブライアン・イーノがデイヴィッド・バーンにメールを送るかたちで、ガザで起きてる一方的な虐殺にもう黙ってはいられないと声を上げてくれた!

◇ブライアン・イーノによる短い手紙、ガザと文明の損失

編集ノート:金曜の朝、ボクの友人ブライアン・イーノからこのEメールを受け取った。事務所のスタッフと手紙をシェアーしたら、全員がブライアンの重々しい価値のある短い手紙を公開することに大いに責務を感じた。これに応じてブライアンの友人ピーター・シュワルツが、どうやってボクたちがここに至ったかに関して目を見はらせる歴史の説明となる事実でもって答えた。明瞭なのは、誰にも道義上の気高い根拠がないことだ。

Dear All of You:

この手紙で以心伝心のルールを破っているのを感じるが、もう黙ってはいられない。

今日ボクは涙を流すパレスチナ人の男性が泣きながら肉のポリ袋を手に持っている写真を見た。ポリ袋の肉は息子だった。この子は、明らかにイスラエルの信じがたい新兵器フレシェット弾を使用するイスラエルのミサイル攻撃によって切り刻まれた(病院の説明)。フレシェット弾がどんなものか、たぶん知ってるよね、人間から肉を引きはがす爆発物にぐるりと何百もの小さな鉄の投げ矢(ダーツ)を詰め込んだもの。少年はモハメド・カラフ・アル=ナワスラ(Mohammed Khalaf al-Nawasra)だった。彼は4歳だった。

あの袋にボクの子どもの肉があってもおかしくないとの考え方に不意に気がつくと、考えはこれ以上ないほどボクを動揺させた。

それから、イスラエルはガザで戦争犯罪を犯したかもしれない、そして調査委員会を乗り出させたいと国連が言っていたのを読んだ。アメリカはそれに署名しない。

アメリカでは何が起こっているのか?いかにアメリカのニュースが歪曲されているか、いかにこのニュースのもう一方の側についてほとんど知らせようとしないかは、ボク自身の経験から知っている。でも、とんでもない! 正体を見破るのはそんなに難しくない。この一方的な民族浄化の行使についてなぜアメリカはその盲目的支持を続けるのか?どうして?ボクにはまったくわからない。ただ単にAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会。ワシントン最強の親イスラエル圧力団体)の影響力と考えるのをボクはまったく遺憾に思う・・・もし事実はその通りなら、その時はアメリカ政府はまったく根本的に腐敗している。いや、それが理由とは思わない・・・でもボクには全然わからない。
ボクが知っている好きなアメリカは、あわれみ深く、寛大で、独創的、折衷的、寛容で気前がいい。ボクの親しいアメリカの友人はボクにはそれらを象徴する。しかし、どのアメリカが、この実にひどい一方的な植民地主義者の戦争を支援しているのか?ボクにはきちんと答が出せない:アメリカ人が君たちのような人ばかりでないのはわかる、では、なんでまったくそういう意見がはっきり示されないことになったのか?世界の大部分の人がいま「アメリカ」と聞くときに思い起こす心的態度(spirit)はなんで君たちの心的態度でないのか?他のどこよりもそのアイデンティティを自由と民主主義に基づかせる唯一の国が、次には支払おうと申し出てまさしく口先だけでなく実行し、途方もなく人種差別的な神政政治を支持するとき、どれほどゆゆしく見えることか?
昨年ボクはメアリーと一緒にイスラエルに行った。彼女の妹がエルサレムのUNWRA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のために働く。ボクらをあちこち案内するのがメアリーの妹の夫でプロのガイドのパレスチナ人 Shadiと、イスラエルのユダヤ人でパレスチナ人をたたきのめすことを拒否したためにとがめを受けて軍務をやめたIDFの元少佐 Oren Jacobovitchだ。ふたりの間にボクたちは心をさいなむ事態を見ることになる。イスラエル入植者が住人に向かってクソや小便や使用された生理用ナプキンを投げるのを防ぐために板と金網によって閉じ込められるパレスチナ人の家々;登校途中のパレスチナ人の子が、親の拍手喝采による称賛と笑いのために野球バットを持ったイスラエルの子になぐられる;3家族の入植者がパレスチナ人の土地に移ると同時に一村まるまる全部が追い立てられて洞穴に住む;汚水を迂回させて直接下のパレスチナ人の農地に流す丘の頂上のイスラエル入植地;壁;検問所…
そして無限に繰り返される毎日の屈辱。ボクは考え続けた、「アメリカ人は本当にこれを大目に見ているのか?これはオーケーだとアメリカ人は本当に思っているのか?それとも、知らないだけなのか?」
ピースプロセス(和平手続き)に関して:イスラエルはプロセスは望んでも平和は望まない。”プロセス”が続いている間、入植者が土地を横取りして入植地を建設し続ける・・・そうして、パレスチナ人がついに哀れを誘うどうしようもない砲撃で怒りを爆発させるとき、イスラエルには「自衛する権利がある(のに対してパレスチナ人には明らかにない)」ので、彼らは最新式のミサイルや劣化ウラン弾でさんざんたたきのめされて細かく切り刻まれる。そして軍が顔をそむける間、入植者民兵は拳を貸したり誰かさんのオリーブ畑を掘り起こしていつもハッピーだ。ところで、入植者のほとんどは民俗学上のイスラエル人ではない。彼らは、(神から与えられた!)神聖で冒してはならない土地の権利があるということや、アラブ人を社会の害虫(人間のクズ)と同等視するばかげた考えに賛成して最近イスラエルにやって来た、ロシア、ウクライナ、モラヴィア、南アフリカ、ブルックリン出身の本物の回帰ユダヤ人だ。南部ルイジアナの頼りになる白人仲間(いいやつ)が好んで用いたものだったのと同じ傲慢な恥知らずの闊歩で、まぎれもない昔風の人種差別は期待に沿った結果を出した。それがボクらの税金が擁護している文化だ。それはクラン(KKKの支部)に金を送るようなものだ。
でも、これを超えて本当にボクを悩ませるのはもっと重要な事態だ。好むと好まざるとにかかわらず、世界の大部分が見るところでは、アメリカは”西側”を代表する。それゆえ、まったく高圧的な道義や民主主義の講和にもかかわらず、西側もこの戦争を支持すると見なされる。この目にあまる偽善によって、啓蒙思潮運動や西洋文化のあらゆる文明化の業績が、気の狂ったようなムッラー(イスラムの法教義に深く通じた人にあてられる尊称)が大歓喜するほどに、どうも信用を傷つけられているようだ。戦争にボクが容認できる道義上の正当化はなにもない、いや、それにはどんな実務的な価値もまたない。それはキッシンジャーに属する”リアルポリティック”の道理にかなわない。
(デイヴィッド・バーンに宛てて)君にまったくこれをになわせてしまい気の毒に思う。君が忙しいことや政治に対するアレルギーの程度が違うのは承知しているが、これは政治の範囲を超えている。何世代にもおよび築き上げてきた文明化のたくわえを浪費するのはボクらだ。この手紙のなかの問題に少しも誇張した表現はない:ボクには本当にわからないし、わかったらいいのになあ。
XXB
http://davidbyrne.com/gaza-and-the-loss-of-civilization
写真はコードピンク、DCのイスラエル大使館前でドラマティックなシットインをやって8人の活動家メンバーが逮捕された