見つけた 犬としあわせ

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2007/06/26

シッコで攻撃されるヒラリー



「華氏911」が世界的にヒットしたマイケル・ムーア監督の最新作、米医療保険制度の欠陥を批判したドキュメンタリー「シッコ」が6月22日、ニューヨークで1週間前倒しで公開されることが決まった。
今回はリベラル派はもちろん、かつてムーアに批判的だった人々からの支持も拡大しているとかで、ワシントンで開催されたプレミア試写会には共和党議員の姿もあり「医療危機問題は党派を超えた課題だから」と作品をほめているそうです。
前作では距離をおいて冷静に見ていた政治批評家からも、「ムーアのキャリアのなかでベスト」だという声が上がっているらしい。以下はニュースのカットアップです。

撮影にあたり、ムーア監督は3月、911同時多発テロで救出活動にあたった際に粉じんを吸い込んだのが原因とみられる体調不良に苦しみながら無保険のため治療を受けられない元救助隊員を米政府が自由な渡航を認めていないキューバに連れて行き、医師の治療を受けさせた。この渡航許可申請に不備があったなどとして先月捜査に乗り出した米財務省に対し、ムーア監督が全面対決姿勢を示すなど公開前から注目を集めた。(時事通信)

一般公開を前に6月19日ニューヨークのリージェンシーホテルで「シッコ」の記者会見が行われた。以下はいつものムーア調で爆笑を誘う会見でのやりとりの一部。
Q:政府からいろいろと調査されてることが話題になっていますね。
M:ブッシュ政権から調査を受けている。キューバ入国問題に関してね。ボク自身はジャーナリストとしてキューバに入ったから問題ないけど、いっしょに911のヒーローたちを連れて行ったことがマズいらしい。でもね、ドキュメンタリー撮影は報道活動だろ、映画関係者なのに彼らがその理由で問題になるとしたら、映画撮影がジャーナリズムとしてとらえられないってことになるよな?自由な国であるはずが、これでは矛盾しているとしか思えない。ブッシュ政権としてはおもしろくないからバカげた嫌がらせをしてるとしか思えないよな。
Q:なぜあなたとその映画を「嫌い」と言い続ける人がいるのでしょう?
M:いったいボクが誰に嫌われているのか教えて欲しいね。確かに2003年のオスカー受賞当時はいろいろと批判があったけど、今となってはブッシュ不支持層は70%を越えているんだぜ、ってことはボクの発言が70%支持されてることになる。当時のボクの発言はいま主流ですらあるんじゃないのかな?ボクの撮影スタイルは真実に基づいて作っていくことで、それは今後も変わらないよ。
Q:マイアミのキューバコミュニティから批判を受けるのではないですか?
M:なぜ批判を受けるんだい?彼らはまだこの映画を観てないはずだろ、それに観ればハッピーになるよ。彼らの親戚たちは貧困の国と言われながらも医療保障に関しては最高の治療を受けているというのを証明してるんだからね。ボクは実はキューバではなくてグアンタナモベイの米海軍基地に行った。なぜかと言うと 911で救助中に粉じんを吸って具合の悪い救助隊に対するアメリカ政府の不当な扱いが許せなかったからなんだ。グアンタナモではアルカイダの抑留者らがすばらしい治療を無償で受けている。こんなこと許されるはずがない。だからそこで治療を受けさせるために911の救助隊を連れて行ったんだ。ブッシュはこれがたまらなくイヤなんだと思う。ボクらの英雄が政府に無視されているのを国民に伝えようとしていることがね。

すでに映画の高精度の海賊版がインターネット上に出回っていることについては、「子供の仕業ではない」と指摘、組織的な興行妨害の疑いを抱いていることを示唆した。「シッコ」は高額な米医療保険制度の欠陥や、医薬品業界と政界の癒着などを批判した作品で、日本では8月に公開される。(中日新聞)

ムーアへの対抗戦術を早急に練るはめになっているのは医療業界ばかりではなさそうだ。どうやら2008年大統領選候補者たちもその仲間に入るらしい。ムーアは民主党のリードする3候補者、オバマ、エドワーズ、ヒラリーらの医療制度改革案を「依然として医療保険業界を擁護する妥協案」だと批判する。おそらく一番あわてているのは、映画の中で強烈な批判にあっているヒラリー・クリントンではないだろうか。かつて国民皆保険制度導入を試みたヒラリー上院議員は、最近では医療保険・製薬業界から多額の献金を受けとる議員リストのトップに立ち、2008年大統領選にむけて、「医療危機問題に最も強い大統領候補」と宣伝している。プレミア試写会に彼女の姿はなかったはずでも、ムーアの「医療保険業界廃止プラン」に沿った医療制度改革を唱える民主党候補者、デニス・クシニッチの姿はあった。

「シッコ」の撮影方法などを巡り米国内では論争が持ち上がる
対キューバ禁輸政策に抵触した恐れがあるとして、米財務省に調査されたことが明らかになっているが、それだけではない、ムーア監督の撮影方法に対し、新たな疑問の声が上がっていた。
マイケル・ムーアを尊敬していた2人のカナダ人映画監督リック・ケインとデビー・メルニックがムーアの映画製作をテーマにした映画を作った。ところが、皮肉にもこの映画「Manufacturing Dissent」は、ムーアがどのようにして作品内容と関連のない映像を用い、事実を誇張するかを描く結果になった。
「ムーアの政治志向には賛成でした」と語ったケインは、当初、マイケル・ムーアを称賛する作品を撮るつもりだったという。

医療業界からの攻撃に対抗するため強力なチームを結成
「シッコ」を手がけた映画会社ワインスタイン・カンパニーは、この作品の広報戦略のために、政治戦略家クリス・レハーネを雇った。レハーネ氏は、アル・ゴア元副大統領の報道担当官を務め、ビル・クリントン政権ではホワイトハウスの報道官だった人物。そしてニューヨークの広報活動コンサルタント、ケン・サンシャインもチームに加わった。
「健康管理組織(HMO)から攻撃されれば、やり返すのに2人は必要になる」
ハーヴェイ・ワインスタインは今週、バラエティ誌にこのように語っている。
しかしながら、米医療業界はムーア監督の客観性に疑問を投げかけ、すでに攻撃を始めている。米国研究製薬工業協会は今週、ムーア監督の製作方法に関し、以下のような声明を出した。
「米国の医療制度の批判はバランスの取れたものでなければならず、十分に考慮され、調査されたものでなければなりません」
「マイケル・ムーアからはそんなバランスの取れたものは出てこないでしょう」
「マイケル・ムーアは人気取りをやる扇情主義の政治活動家。彼は公平なバランスなど取ろうとは思っていません」
(AFPBB NEWS)