見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2007/08/24

ウィキペディア スキャナー プロジェクト


えっ、CIAとFBIがネット上の百科事典を書き換えている? 
それが、編集したり削除をほどこしたIPアドレスをたどることでバレるーー。
当然あるよね。わたしたち市民の「景観を破壊する高層マンション反対」のサイトに用意した掲示板での、450を超える、侮辱、嫌がらせの書き込みは、このIPアドレスを追跡した結果、マンション事業者3社のうちの1社、日本を代表する大企業「〜信託銀行」の社内から書かれていたことがわかった。後に会社側はひとりの社員の仕業だと言って謝罪している。幹事会社となっている他の1社からも誹謗中傷、ウソの書き込みが1ダースほどあったことも発覚している。
さてニュースから。

米中央情報局(CIA)と連邦捜査局(FBI)が、読者が執筆・編集できるインターネット上の百科事典「ウィキペディア」の「イラク戦争」などの項目を書き換えているのでは?との疑惑が持ち上がっている。
ロイター通信によると、ウィキペディアの管理者は16日、CIAとFBIが所有するコンピュータを通じて百科事典の編集作業が行われていたことを明らかにした。これはウィキペディアの規定違反の疑いがある。
管理者によると、イラク戦争については、死傷者数のグラフの編集作業にCIAのコンピュータが使われた。またキューバにある米軍グアンタナモ基地のテロ容疑者収容施設の衛星写真が、FBIのコンピュータを使った作業によって消去されていたとのこと。
(共同通信)

実は国の重大な場面でこういうことがたびたびあったというのだ。
2005年11月17日、ある無記名のWikipedia(ウィキペディア)ユーザーが、電子投票機メーカー米Diebold(ディーボルド)社に関する項目から15段落を削除した。
インチキができるというのでいろいろ疑惑があったディーボルド社の電子投票機に関する批判的記述をそっくり消してしまったのだ。このような内容変更を行なうと、無記名とはいえ、編集作業をしたコンピュータの場所など、当人についての手がかりとなる「電子的な指紋」が残るのが一般的だ。
この場合は、ディーボルド社のオフィスに属するIPアドレスから編集が行なわれていた。そしてこの件は、決して特殊なケースではない。
13日に開始された新しいデータマイニング・サービスは、何百万件ものウィキペディアへの書き込みから発信源を突き止め、長年にわたる情報操作疑惑の背後にあった包括的なデータを初めて提供するものだ。こうしたデータはこれまで、特定の事例についてクレームがあったときに、調査の過程で断片的に明らかになるだけだった。
カリフォルニア工科大学大学院生ヴァージル・グリフィスが考案した「ウィキペディアスキャナー」は、ウィキペディアでの編集操作と関連するインターネットIPアドレスのブロック所有者のデータを突き合わせることにより、何百万もの無記名による編集と、それを行なったと思われる組織と結びつける、検索可能なデータベースを提供する。
グリフィスがこのツールを開発した直接のきっかけは、昨年、米連邦議会の議員事務所からその議員のデータが編集されたという報道だった。大企業や他の組織でも同じように利己的な姿勢で何かやっているのではないかと好奇心にかられ、知りたくなったのだそうだ。
「どんなことでも、やるなら大規模に、それも自動化したほうがいい」と笑顔で彼は言った。
グリフィスの「ウィキペディアスキャナー」の仕事の成果は、3440万件の編集のデータベースが、CIAや米マイクロソフト社、議員事務所などといった260万の政府機関や組織のインターネットアドレスから何者かによって行われたものであることを突き止めた。
ディーボルド社の場合は批判的な記述を削除したわかりやすい例で、電子投票システムの一貫性に対するセキュリティ業界の懸念を詳細に記した部分や、ジョージWブッシュ大統領に提供する資金をディーボルド社CEOが集めたという情報を、何者かがディーボルド社のIPアドレスから削除した。
ディーボルド社の広報担当者は、この件について調査すると述べたものの、コメントは得られなかった。
米ウォールマート社も、2005年に一連の比較的小さな編集を行なっている。
ウォールマートの場合は、たとえば「同社の賃金は他の小売企業よりも20%ほど少ない」といった記述を、「同社の平均賃金は最低賃金の2倍近い」に変えるなど、テキストの一部を修正して企業イメージの向上を図っている。
また、店舗が、周辺のコミュニティに与えた影響に関する社会運動家からの批判はそのまま残しつつ、コミュニティにおける全雇用数がウォールマート社の進出によって増加したことを示す「明確な」調査を追加している。
同時に、すでに述べたように、政治家の事務所もウィキペディアの編集を盛んにやっている。
たとえば、モンタナ州選出の上院議員だったコンラッド・バーンズの事務所では、「A controversial voice(議論のある発言)」で始まる段落を、「A voice for farmers(農業家の代弁者)に修正し、その後に続く文を、友好的なイメージの内容に書き換えていた。
興味深いのは、自分の利益のための修正と思われる行為の多くが、この議員事務所による項目内容の編集について大きく報道される2006年以前だということ。
どうやら、編集に手を加えるにあたり、ウィキペディアへの対応が洗練されてきているようなのだ。
たとえばCIAのアドレスに属する職員らは頻繁に編集を行なってきているが、CIAに雇われているという立場が露骨に現れるようなもの、つまり特定のバイアスはほとんど見あたらない。
ウィキペディアスキャナー・プロジェクトについて、グリフィスは特に米ハリバートン社のような企業を明確なターゲットにしてスキャンダルを見つけるもくろみで開始したと説明している。
これまでのところ、何百万とある項目からなるデータベースのほんの表面をひっかいたに過ぎない。でも、これをオンラインで公開しているために他の人たちも調べることができる。
(WIRED NEWS 2007年8月14日の記事より抜粋)

あなたの調査能力を活かして追及しよう!
WIRED NEWSでは、ウィキペディアで自社の項目を書き換えた企業や、政府のゴーストライターが歴史を書き直した件などで、読者からの投稿を募集している。グリフィスのウィキペディアスキャナーを試して、発見したことを投稿してほしいそうだ。

写真は、ウィキペディアを換えさせるIPアドレスの指紋をたどるサーチツールをつくったカリフォルニア工科大学大学院生ヴァージル・グリフィス君