見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの、見つけたとき、 それを作品にしたり、思わずなにかの形にして、人に 伝えたくなります。 見つけたとき感じた、しあわせ感覚が、ひとしずくでも 誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

December 29, 2007

クラシックはベネズエラがおもしろい


ベネズエラからとっておきのクラシック音楽が!グスターボ・ドゥダメルって知ってますか。かっこいいし、まるでフットボールプレイヤーみたいですが、彼はクラシックプレイヤー、それもすごい指揮者です。ロスのフィルハーモニーの来期の音楽監督に就任が決まっており、先日ニューヨークフィルで指揮者デビューを飾った際の彼のすばらしさに、ニューヨークのクラシックファンからロスに取られた!と悔しそうな声があがったとか。以下、彼のニュースからーー。

◇いま中南米がクラシック音楽の新たな震源地として熱い視線を集めている。
それを象徴するのがベネズエラで活躍するシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラと、今年26歳の指揮者グスターボ・ドゥダメルだ。ドゥダメルは1981年にバルキシメントというベネズエラ北西部ララ州の州都で生まれ、父はトロンボーン奏者。12歳から地元ユース・オーケストラの指揮を始め、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラの音楽監督になったのは弱冠17歳。彼は今シーズンからスウェーデンのイェーテボリ交響楽団の首席指揮者に就任、2009年から翌年のシーズンには名門ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督就任がすでに決まっている。これは経験と年齢が重視される指揮者の世界としては驚異的に早い出世だ。この事実ひとつをとっても、この若きベネズエラ人指揮者の存在が欧米のクラシック音楽界でいかにセンセーショナルに受け止められているかわかるというものだ。
・麻薬や犯罪防止のための国家プロジェクトの成果
先ごろドイツグラモフォンから彼らの演奏によるベートーヴェンの「交響曲第5番&第7番」のCDが発売され、その高い音楽性、熱気、そして真実味あふれる演奏が世界的な話題になったのは記憶に新しい。続く新譜のマーラー「交響曲第5番」はさらにすばらしく、エリート的な演奏からは及びもつかない、まるで未熟で多感な若者が震えおののいているかのようなのが、すべてマーラーの音楽にプラスに働いているような名演だった。
彼らの音楽は、ラトル、アバド、バレンボイムといったヨーロッパの指揮者の巨匠たちからも絶賛を浴びているが、それには背景がある。
現在人口2600万人のベネズエラには全国30カ所に約130のユース・オーケストラと約60の子供オーケストラがあり、25万人の子どもたちがクラシック音楽に参加している。これらのオーケストラとそのトレーニングシステムは、実は国家ぐるみのプロジェクトによるものだった。クラシック音楽を演奏させることによって貧しい子どもたちを善良な市民に育成し、麻薬や犯罪から守り、社会の発展に寄与させることができるーー元文化大臣ホセ・アントニオ・アブレウ博士が提唱したこの国家的運動は、「ベネズエラ青少年・児童オーケストラ全国制度財団」によって推進されている。そのオーケストラの頂点がシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラなのだ。
「ベネズエラではベートーヴェンはシンボルだ。若者にとってベートーヴェンの音楽は非常に重要なものになっている。すべての人にとってそうではあるが、若い人たちには特にだ」とドゥダメルは言う。
混迷する経済と治安の悪化に苦しむベネズエラにとって子どもたちを銃や麻薬、非行から守り、また罪を犯した子どもたちを更生させる上で、いまではクラシック音楽教育が欠かせないものとなっている。それはプロの音楽家育成や富裕層の趣味とは本質的に異なっている。そしてそのベネズエラの若者たちが演奏するベートーヴェンが、本場ヨーロッパの音楽シーンを席巻し始めている。いま識者の間では、近い将来ベネズエラ人演奏家によってクラシック界は大きく変わっていく可能性があると真実味を持って語られている。
・演奏家も作曲家も、中南米には隠れた才能が眠っている
そもそもベネスエラばかりか中南米はクラシック音楽の演奏家という点では以前から隠れた「供給源」であり、特にピアノでは優れた人材を多く輩出してきた。アルゼンチン出身のダニエル・バレンボイム、マルタ・アルゲリッチ、ブルーノ・レオナルド・ゲルバー。チリ出身のクラウディオ・アラウ。ブラジル出身のネルソン・フレイレといったところが有名だろう。
だが最近はオペラ界での中南米系の歌手の活躍が目立っている。アルゼンチン出身のホセ・クーラ、マルセロ・アルバレス、ペルー出身のファン・ディエゴ・フローレス、メキシコ出身のロランド・ヴィラゾン、ラモン・ヴァルガス、チリ出身のクリスティーナ・ガイヤルド=ドマスなど。いずれ劣らぬ絶好調の一流歌手ばかりであり、彼らの存在を抜きにはザルツブルク音楽祭やミラノ・スカラ座やメトロポリタン・オペラの現在を語ることは不可能といっても過言ではない。
これだけ中南米系の新しい世代のスター歌手がいるということは、彼らが突然変異的に出現したというよりはむしろこうした新たな才能を続々と生み出すだけの基盤がすでに中南米各国の音楽的環境には備わっていると見るべきだろう。
さらに近年最も熱く注目されているのが中南米のクラシック音楽の作曲家である。長いことこのジャンルではブラジルのエイトル・ヴィラ=ロボス(1887ー1959)のみが知られていただけで、あとはほとんど無視されてきたというのが実情ではないだろうか。アルゼンチンのタンゴの革命児アストル・ピアソラ(1921—1992)、ブラジルのボサノバの創始者アントニオ・カルロス・ジョビン(1927ー1994)を、クラシック音楽家が演奏対象とする作曲家として評価するようになってきたのはここ10年くらいのことである。
だが最近では、中南米の作曲家を積極的に取り上げようという動きが目立つ。iTunes storeでは「新世界クラシック〜ラテンアメリカ編」と名づけた編集企画盤をリリースした。こうした中南米の作曲家たちに共通するのは身体感覚に近い親しみやすさ、ボサノバやタンゴ、ショーロと共通の風や土の匂いのする抒情的な旋律美である。今後、中南米の作曲家たちの中から、第2、第3のピアソラが誕生する可能性は十分にある。
(日経ビジネス 2007年9月10日)

◇ベネズエラのチャベス大統領に関して言えば、ブッシュが軍事介入するのではないかと言われたり、右派の宗教家パット・ロバートソン師が「暗殺せよ」と発言して物議を醸したり、アメリカとの関係はかなり悪化している。
そのベネズエラから11月末から12月にかけて「音楽大使」がニューヨークにやってきた。オーケストラの名はシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラで、それを率いてきたのが音楽監督のグスターボ・ドゥダメルだ。このオーケストラは、ベネズエラからコロンビア、エクアドルにかけての地域をスペインから独立させた英雄、シモン・ボリバルの名を冠した国営で、全国組織の青少年音楽教育プログラムの頂点に立つ存在だ。といっても普通の音楽エリート教育とは違っている。犯罪者の子どもや、非行に走りそうな貧困層の少年などの更生プログラムと連動している。
この青少年オーケストラとドゥダメルの公演はカーネギーホールで行われて盛況だった。また指揮者としてドゥダメルがニューヨークフィルへのデビューを飾った公演のほうは歴史に残るほどのできで、若い才能が成功への階段を駆け上ってゆくときに見せる、なんとも言えぬ輝きに満ちたコンサートであった。
弱冠26才の、テンポとリズムの感性が特徴的なドゥダメルは、実はニューヨーク滞在中にロサンゼルス・フィルハーモニーの音楽監督に就任が決まっている。ニューヨークのメディアからは「ロスに取られた」というような反応もあり、ニューヨークフィルの音楽監督に決まっているアラン・ギルバートはこれからは常にドゥダメルと比較されるプレッシャーを感じていることだろうと記事は書いた。
それにまたニューヨークフィルはこのデビュー公演で金庫にしまってあった故バーンスタインの3本のタクトのうちの1本をこの若者に託したそうなのだ。
興味深いのは、ちょうど彼らがニューヨークで公演をしている最中に本国ベネズエラでは憲法改正の国民投票が行われていたことだ。大統領の再選の無期限化やメディアの統制など、チャベス大統領は独裁強化を可能にする修正案を投票にかけたのだが、結果は否決される。その際にチャベス大統領は政治的な敗北を認める声明を出している。国の指導者としてチャベスを支持しながらも国民は独裁的な大権を与えなかった、そして指導者はそれを受け入れる。これには政治的な成熟が見られるといってよく、これによってアメリカとの無用な軋轢も減ることだろう。音楽大使としてドゥダメルにそうした政治的なメッセージがあったかどうかはともかく、ドゥダメルがニューヨークの街に受け入れられた、いや大喝采を浴びたというのは、ベネズエラとの緊張緩和の象徴だと言えるのではないだろうか。
(ニュージャージ在住の作家 冷泉彰彦氏の<from911USA レポート>より一部抜粋)

写真は26歳のグスターボ・ドゥダメル!

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