見つけた 犬としあわせ

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2008/01/16

兵士のラヴソングで歓迎されたブッシュ


◇世界的に有名なピアニスト・指揮者であるアルゼンチン出身のイスラエル人、ダニエル・バレンボイム氏(65歳)が、パレスチナの市民権を取得した。イスラエルとパレスチナ間の和平の見本になることを願っているという。
バレンボイム氏はここ数年、アラブとイスラエルの若い音楽家の接触を推進しようとヨルダン側西岸のラマラで活動している。
同氏は12日夜、当地で開いたベートーベンのピアノリサイタルの後「パスポートをいただけるとは大変に光栄なこと」とコメント。「イスラエルの人々とパレスチナの人々の運命は切り離せないつながりがあると信じていることも(申し出を)受け入れた理由だ」とし、「幸か不幸かわれわれは一緒に生きなければならない。私はそれは幸せなことだと思いたい」と語った。
(ロイター通信2008年1月14日)

◇BBC News ティム・フランクスのエルサレムダイアリーより
・1月14日 月曜日 THE VISION OF MUSIC
イスラエルとヨルダン川西岸を訪問中にブッシュ大統領は、独断的に一年以内の和平を予言した。
土曜の夜、ダニエル・バレンボイムは独特の立場のメッセージを伝えた。
たぶんバレンボイムはユニークなんだろう。イスラエルとパレスチナ両方の市民権を持ってる人なんてボクは彼しか知らない。彼が7歳のときに両親はアルゼンチンからイスラエルに移り住んだ。
数ヶ月前、スカラ座の音楽ディレクターで世界で最もみごとなピアニストのひとり、バレンボイムは、パレスチナ人音楽家との仕事のせいでパレスチナ名誉市民権を与えられた。彼は亡くなったパレスチナ系アメリカ人エドワード・サイードと共に中東のあちこちからの若い音楽家たちを結び合わせるウエスト・イースタン評議会を創設した。
街のカルチュラルパレス(文化宮殿)に寄付される就任コンサートに新しいシュタインウエイを演奏するためバレンボイムはラマラにいた。
彼はロンドンでの完ぺきな連作歌曲に向かって飛行機に乗り込む直前、ベートーベンのソナタ3曲を演奏した。
最高のAppassionata(熱情)に入り込むとき、ホールは人と贈り物のバラの花でかんづめ状態だった。
あとで彼は記者たちにこう話した。
「私は政治家ではない。でも、軍事的解決などない、このことはよくわかっている。いっしょに生きることを感謝するか、ののしるか... 聡明な人でなくとも、侵略はやめなくてはならないと言っている。」
同じ街でちょうど2日前に表したジョージ・ブッシュの楽観主義に仲間入りするかどうか彼に尋ねた。
バレンボイムはいつも彼の音楽的教訓を明確に伝えている男の熱情でボクを見すえると、こうなるであろうと見越す。
「長い歳月、私たちはこの軋轢のなかで暮らしてきている。いま、もし誠意をもって期待が高まり、それが実現されないとしたら... これまでにも増して意気消沈することになる。」
ステージで、アンコールとして溶かすように美しいショパンのノクターンを演奏する前にバレンボイムは客席に向かって語りかけた。
「私や私の同僚たちがラマラに演奏しにやってくるとき、それがいつも特別な機会であり続けないことが私の願いです」と彼は言った。
むしろ、彼はこの街で「正規の音楽生活」を送りたかった、「演奏する機会は特別でないので、演奏する機会が特別になるのが問題」だと。
だが、限界があった。
「音楽はこの地域に平和をもたらします。私は政治的スピーチをするためにここにいるのではありません。必要とされる交渉に音楽は関係していません。でも、音楽は各方面を豊かにするはずです。私たちが音楽に対して耳や頭脳や心をオープンにするのであれば。」
ベートーベンのAppassionata(熱情)のアンダンテを彼が演奏するのを聞いている人なら、これにアーメン(かくあらせたまえ)と言うことだろう。

・大統領が街にやってくる
ブッシュ大統領のイスラエルを威勢よく行くスウィングには音楽の象徴的意味があった。
ベングリオン空港でブッシュ氏は星条旗とHatikva=イスラエルの国歌(米国とイスラエルの国歌)に気をつけの姿勢で立った。
ラマラでは、彼はクルマから姿を現すとまっすぐ大統領官邸に向かった。前任者のビル・クリントンとは違って、彼はパレスチナの国歌を聞くつもりはなかった。
「あれは人の感情を傷つける」とTVの映像を見ていたラマラ居住者が私に言った。「むかつかせるふるまいだ。」
また、セレナードを歌うか踊るかする学童も居合わせていなかった。
あるパレスチナ政府顧問によると、それもまたアメリカの外交儀礼先発隊によって妨げられた。
前の日、イスラエルの子どもたちが歌うポンポンはねるヴァージョンのHava Nagila とShalom Aleichemのもてなしに、ブッシュ氏は感動するほどしあわせそうに見えた。
満腹でそのイベントを見ていた他の人たちは、ちっともしあわせでなかった。
でも、ホワイトハウスの外交儀礼はイスラエル軍楽隊がベングリオン空港で演奏した歓迎の曲を承認したんだ?
耳ざといイスラエル人の友人はそれがHaim Hafer による歌詞がついた「兵士のラヴソング」という1963年にヒットした曲だとわかった。
 兵士たちは町を去らなければならない...
 オレたちの愛は炎のように燃える...
 オレたちが別の人をかわいがっても
 それは世界の終わりじゃない
 オレたちは愛しい君のことを考えるだろう...
 いつ戻るかオレたちにはわからない
 でも夏までには
 君は別の人と交際できるよ
(1960年代前半のベルギーのTVから「兵士のラヴソング」を翻訳)

写真はダニエル・バレンボイム