音楽は世界を救えない
ニール・ヤングは先週ベルリン映画祭で報道陣に「音楽は世界を救えない」と言って驚かせた。「音楽が世界を救えたのは過去の時代」と彼は述べた。「今日の時代にそう考えるのは非常に単純でうぶってことだろうと思う。世界は違う立場にある、科学や物理学や精神性がこの世界を変えるときで、地球を救うために精力的に取り組むときだ。」
あれから、「Ohio」や「Rockin’ in the Free World」を書いた男は、彼の見解を詳しく述べることにした。以下は彼のステイツメントだ。
◇単に歌ってだけ by Neil Young
世界を変えられる歌なんてひとつもない。だからって歌うのをやめるときだと言ってるんじゃあない。
地球のどこかでひとりの科学者がもっぱら独力で進んでいる。彼や彼女が何を考えているか誰も知らない。解決のカギは手の届くところにある。答えがわかっていれば、ボクなら歌にして歌っているだろう。
これは革新の時代だ。希望の問題。でも希望だけじゃあない。革新の時代には人をかきたてるものがきっと見つかるはずなんだ。これが最大の挑戦。誰がこの挑戦、やりがいのある仕事にどっぷりつかっているか?今日、誰が探しているか?昼も夜も。四六時中。それはボクだとわかっている。
あきらめるなと友人たちは書いてよこす。ボクはあきらめてなんかいない。これが変化のときなのはわかっている。でもそれが歌でないのはわかっている。たぶん過去は歌だった。でもいまは違う。行動、仕上げ、思いがけない啓示、新しい手段。人をかきたてるものをボクは探している。それが見つかるか?ああ、見つかると思う。ボクがなぜこの第一級の発見を可能にする助けになりたいと思ってきているかはわからない。ボクにわかっているのは、それを見つけたとき歌に書けるってことだ。それまでボクは探索について歌に書くか、ずっと探して暮らすかだ。でも、歌だけでは世界を変えることにはならない。たとえそうでも、ボクは歌い続けるつもりだ。
(ローリングストーン誌2008年2月11日)
冒頭のベルリン映画祭ではニール・ヤングの映画「CSNY Deja Vu」が上映された。これはニール・ヤングが反戦歌「リヴィング・ウィズ・ウォー」でもって全米を駆けめぐった、2006年のクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの全米ツアー「Freedom of Speech tour」の映像とこれに対する人々のリアクションで構成されるドキュメンタリー作品。「Let's Impeach the President(大統領を弾劾しよう)」の演奏では、これに応える歓声と中指を突きつけるブーイングとで文字通り会場がまっぷたつに割れる。アメリカの置かれた現状が見て取れる。
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