太平洋のキングマンリーフ
イスラエルに配備する高性能早期警戒ミサイルレーダーシステムは、まもなく大統領職を去るブッシュがプレゼントとしてイスラエルに贈ったものだとイスラエル紙は報じている。周辺の緊張を持続させるのにイスラエルはよろこんでこれを利用するだろうし、ブッシュのことを忘れないかもしれない。
さて、ナショナルジオグラフィック誌にこんなニュースがーー。
写真は、太平洋のキングマンリーフにあるテーブルサンゴの上を泳ぐオグロメジロザメとバラフエダイ。
2008年8月ブッシュ大統領が、世界で最も汚されてない遠く離れた太平洋諸島とその周辺海域の一部を海洋ナショナルモニュメントに指定する提案を発表した。指定海域にはこのキングマンリーフも含まれる。
◇ブッシュ大統領が世界最大の海洋保護区を提案
だが、科学者たちは、「今回提案された西太平洋と中央太平洋の海洋保護区に完全保護区域の地位が約束されなければ成功しない」と警戒する。完全保護区域として指定されれば、石油および天然ガスの掘削や漁業、鉱物資源の採掘など、あらゆる破壊活動が禁止される。
ブッシュ政権は常に産業界の味方だった。つい先日も、ブッシュ大統領の管轄下にある米国海洋大気庁(NOAA)が、絶滅の危機に瀕するタイセイヨウセミクジラの生息する海域について、大型船の航行を禁止する保護緩衝地帯の「縮小」を提案したところだ。自然保護団体は「この動きは海運産業の意向に沿ったものだ」と批判している。
ナショナルモニュメントとして提案された中央太平洋諸島には、ジョンストン環礁やキングマンリーフ、ジャービス島、ハウランド島などが含まれ、保護区域はおよそ200万平方キロメートルになる。また、西太平洋では北マリアナ諸島が対象となっており、保護区域はおよそ30万平方キロメートルになる。指定海域には地球の表面で最も深い場所のマリアナ海溝があり、サンゴ礁が円状に並んだ環礁も数多く見られる。大統領には、アメリカの資源の保護に関して非常に強い権限があり、自然保護団体は今回の新提案が正式に法案化されるのを期待している。
海洋生態学者エリック・サラは、「今回の提案の対象となる中央太平洋諸島の海域には世界でも有数の自然なサンゴ礁生態系が存在している」と話す。海域のひとつひとつにフロリダキーズ全体の5倍のサンゴ種が生息しており、数百種の魚類、数十種の海鳥、そしてさまざまなクジラ、イルカ、ウミガメが集まっている。
「何百年も前と同じ姿をしている海は、残すところこの海域しかない」とサラは述べる。たとえば、キングマンリーフの海域は、オグロメジロザメやネムリブカといったさまざまなサメが支配している。「ここは私たちが知っている他のどの場所ともまったく異なっている。捕食動物が全面的に支配している。」
だが、自然保護団体Ocean Conservancyのデニス・ハイネマンは、「ナショナルモニュメントという新しい地位を得ても、漁業や掘削、採掘といった活動から完全に保護されなければ意味がない」と言う。遺跡保存法の下で大統領にはナショナルモニュメントに対し連邦全域におよぶ保護指定を与える権限があるが、保護指定にはさまざまなレベルがある。人や企業がなにか捕獲するのはもちろん、訪れるのも許されなくなる、「捕獲および立ち入り禁止」にすることが重要である。
ブッシュ政権の政策に対して自然保護団体は常に非難の声をあげてきたが、今回は多くが楽観的に見ている。環境擁護基金のアマンダ・リーランドは「もう任期切れ間近だ。実行できれば、最高の海洋保護政策を実現した大統領として歴史に名を残すことができる」と言う。商業的価値があまりないというのも楽観的になる根拠だが、海洋生態学者サラは、「漁業だけは別だ。間違いなくマグロ漁業産業が反対するだろう」と警戒する。
また、ブッシュ大統領が提案した海域が完全保護区域としてナショナルモニュメントの地位を与えられたとしても、それを管理するだけの資源が政府にあるのかは疑問である。2006年に指定されたパパハナウモクアケア海洋ナショナルモニュメントは、今回の提案海域に比べて6分の1の面積だが、すでにほころびが見えている。はたして世界最大の海の聖域は誕生するのか。そして聖域として持続可能だろうか。
(ナショナルジオグラフィックニュース 26 August 2008)
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