無人機攻撃が過激をあおる
◇先週アフガニスタンの米軍基地で8人を殺した自爆犯といわれている男の妻は、夫の行動にショックを受けたが夫がしたことを「誇りとする」と言う。
ヨルダン人の医師、フマム・ハリル・アブムラル・バラウィのトルコ人の妻、Defne Bayrakは、彼女の夫がスパイだったとの言いがかりを疑うが、無駄死にしなかったことで十分だと言った。
「私は夫を誇りとする。そのような戦争で私の夫は非常に大きな仕事を果たした」と彼女は記者に告げた。「彼が殉教者なら、神は彼の殉死を受け入れるでしょう。」
(CNN 8 January 2010)
◇CIAの自爆犯は「ダブルエージェント(二重スパイ)だった」
アフガニスタンで7人のCIA職員が殺された爆弾犯はアルカイダの二重スパイだったとアメリカのメディア報道が伝える。
彼は一年前、ヨルダンの情報機関によって逮捕されたヨルダン出身の医師であるという。
伝えられるところでは、うまく彼を寝返らせたと思ったヨルダン人とCIAによって当時彼はスパイとして補充され、アルカイダの指導者たちを見つける使命を与えられた。
CIAの米軍基地で爆弾を爆発させる前、彼は何週間もアフガニスタンで諜報活動に従事していたと考えられる。
1983年ベイルートのアメリカ大使館が爆破されて以来、前方作戦基地チャップマンでの攻撃は、アメリカの情報機関にとって最悪の事態だった。
アフガニスタンの米軍情報部トップのマイケル・フリン少将がそこでのアメリカ情報局員の仕事を辛辣に批判した記事が発表されたとたんに、爆弾犯の正体に関するニュースが出てきた。
現在、アフガニスタンの米国情報機関は依然として「米国と同盟軍が軍事行動をとることでその情況と彼らが保護して説得しようと努めている人々に関する根本的な問題に答えることができない」でいると彼は言った。
シンクタンク、ニューアメリカンセキュリティ・センターによって公表された報告書は、情報機関のその国に関する有益な情報不足のために米国は「すっかりとまどっていた」との、ある士官の発言を引用する。
・敵味方を変える
自爆攻撃についてワシントンポスト紙は、攻撃犯と言われている者がアルカイダの指揮者の地位に関する新情報を約束する会合にCIA職員たちを誘い出していたと2人の元米国政府職員が言うのを引き合いに出した。
報告書は彼のことを、1年以上前にヨルダンの情報機関によって逮捕されたヨルダンのゼルカ出身の36歳のアルカイダ・シンパ、フマム・ハリル・アブムラル・バラウィと名指しして呼んだ。
彼の特命はアルカイダのナンバー2、アイマン・アル・ザワヒリの跡をたどって見つけ出すことだとみなされた。
CIAは報告書についてコメントするのを丁重に断ってきている。
ヨルダンの情報機関は彼らがフマン・アル・バラウィを彼らの側に寝返らせたと信じてアルカイダに潜入するため彼をアフガニスタンに送ったと、アメリカのネットワークNBCは言う。
報告書で引き合いに出される西側情報機関の職員によると、コースト州の前方作戦基地チャップマンでの会合をアレンジするため、先週フマン・アル・バラウィは彼の管理者たちを呼んだ。そこでザワヒリに関する緊急の情報を中継するつもりだと彼は言った。
いやしくも基地内で彼は自爆して、7人のCIA従業員とヨルダンのメディアがアリ・ビン・ゼイドと名指しして呼んでいる彼の管理者を殺すと報告書は述べる。
先週、爆弾が基地のジムで爆破された後、攻撃者がどうやってうまくセキュリティをパスすることができたかに関し、疑問が提起された。
彼は基地の外でクルマに乗せられ、くまなく調べられずにクルマを駆って入ったとワシントンポスト紙は言う。
そのような人々にはたいてい、彼らの信頼を得るのに手を貸すために完全なセキュリティチェックを全部やれとは要求されなかったと、元CIAの従業員でもある米国職員はAP通信社に語った。
・無人機の基地
タリバンのスポークスマンはアルジャジーラのウェブサイトで、フマン・アル・バラウィは一年間ヨルダンと米国の情報機関を惑わした二重スパイだったと言った。
元ソ連の軍事基地の前方作戦基地チャップマンは、CIAばかりか、兵士と民間人の両方が含まれる州の復興を手がけるチームによっても使われる。
その飛行場は伝えられるところでは、隣国パキスタンの疑いをかけられた戦闘員に対する米国の無人機攻撃に使われた。
米国の作戦の微妙さのために、CIAは殺された職員の名前も彼らの仕事の詳細も公表してきていない。
だが、3人の子どもの母だと報じられる基地の指揮者が、殺された人々のなかにいた。
爆弾犯がこれほど緊密に工作員やそのような高位の職員の仕事仲間でありえたことにCIAは深くばつの悪い思いをさせられるだろうとワシントンのBBCのマーク・マーデルは言う。
**CIAの死者:1965−2009
2009年:アフガニスタンのCIA基地での自爆攻撃で7人が殺される
2003年:アフガニスタンのShkinで2人のCIA請負人が死ぬ、アフガニスタンで演習訓練中にCIA職員が殺される
2001年:アフガニスタンで刑務所暴動中に職員が撃たれる
1993年:情報機関のヴァージニア本部で2人のCIA従業員が殺される
1989年:軍の装備をコンゴ民主共和国からアンゴラまで運ぶ飛行機が墜落して6人のCIA従業員が死ぬ
1985年:誘拐されて拷問された後、CIAのベイルート支局長が殺される
1983年:ベイルートの米国大使館爆破で8人のCIA従業員が殺される
1965年:7人のCIA従業員が死ぬ、そのほとんどがヴェトナムが原因:ワシントンポスト紙
( BBC NEWS 5 January 2010)
http://news.bbc.co.uk/go/pr/fr/-/2/hi/americas/8440535.stm
◇国際テロ組織アルカイダのスパイによって、アフガニスタンの米軍基地でCIA要員7人が殺害された自爆攻撃について、アルカイダの司令官が7日、自爆犯の氏名を挙げ「復讐は英雄的な成功だ」と賞賛する声明をインターネット上に発表した。
アルカイダのアフガニスタンでの活動を指揮するムスタファ・アブ・アルヤジド司令官は、12月末にホースト州の米軍基地で自爆攻撃を実行したのは、フマム・ハリル・アブムラル・バラウィ(32歳)という人物だと明らかにした。同司令官によると、自爆犯は遺書に米軍無人機によるパキスタンの空爆で死亡したアルカイダ幹部らの名前を挙げ、「われわれの殉教者の復讐を果たす」と書き残していた。
「殉教者」として自爆犯が挙げたなかには、イスラム原理主義組織タリバンのパキスタングループを率い、2007年のベナジル・ブット元パキスタン首相暗殺の黒幕と言われ、米軍のミサイル攻撃で死亡したバイトゥッラー・メフスード司令官などが含まれていた。
イスラム原理主義系のウェブサイトによると、バラウィ容疑者は数か月前から欧米の情報機関に三重スパイとして浸透を図っていた。ヨルダンの情報機関は容疑者を二重スパイだと信じ込み、アルカイダのナンバー2、アイマン・ザワヒリ容疑者の捜索目的でアフガニスタン東部に連れてきたとされる。各機関の関係者らは役に立つ情報要員だったと証言している。
アフガニスタンではバラク・オバマ大統領の就任後、米軍の無人機による空爆が急増。2008年8月以降の空爆による死者は650人となり、地元の反米感情をあおっている。部族に詳しい現地の専門家は「無人機による攻撃は(アフガニスタンの旧支配勢力)タリバンを支持しない人間まで過激化させている」と述べている。
一方、報道では、自爆したのはヨルダン人医師のフマム・ハリル・モハメド・バラウィ容疑者だと伝えられている。同容疑者の母親は6日、AFPの取材に対し、「息子は決して原理主義者ではなかったが、10カ月音信不通で、生死は分からない」と語った。
(AFP 2010年1月7日)
写真は、アフガニスタン、ホースト州のCIA基地で自爆したといわれるフマム・バラウィ
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