代償を払っているのは誰
◇イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7月1日、2006年にイスラム原理主義組織ハマスに拉致されたイスラエル軍のギラド・シャリット伍長の解放と引き換えに、収監中のパレスチナ人1000人を釈放する用意があると述べた。
ネタニヤフ首相はテレビ演説で、「イスラエルは国家としてシャリット伍長の解放に高い代償を支払う用意があるが、いかなる代償でも支払うというわけではない」と発言した。
ハマス側は戦闘員を含む数百人のパレスチナ人の釈放を要求しているが、イスラエルはイスラエル人殺害に関与した人物の釈放には消極的。ネタニヤフ首相は、過去25年間に捕虜交換で釈放したパレスチナ人が再びイスラエルへの攻撃を実行する例が多かったと指摘し、「収監者の釈放決定は難しく複雑だ」などと語った。
イスラエル国内ではシャリット伍長の解放を求める世論が高まっており、シャリット伍長の家族と数千人の支援者は政府に圧力をかけようと、6月27日にイスラエル北部を出発しエルサレムまで約200キロの道のりを12日間かけて行進している。
(AFP 2010年7月2日)
◇イスラエルのギラド・シャリット・デモ行進が数千人を引き寄せる
捕まったギラド・シャリット兵士の解放を訴えるイスラエル中のデモ行進に2万人が参加してきていると主催者は話す。
デモ参加者らは国の至る所12日間のデモ行進の半ばにあり、デモはベンヤミン・ネタニヤフ首相の自宅外で終わる。
ネタニヤフ氏はパレスチナ囚人1000人を解放すると申し出ているが、兵士を捕らえるハマスには「どのような代償」にも報いない。
囚人交換にイスラエル社会から圧力が上がるのを軽減しようとしてネタニヤフ氏はスピーチを用意した。
だが、金曜のデモ行進に2万人が合流したと主催者が言っている限りでは、その措置が仇となるかもしれない。
「首相のスピーチが人々に影響を及ぼして一役買う決心をさせた」とフリー・シャリット・キャンペーン統率者のShimshon LiebmanはAFP通信社に語った。
シャリットの両親と支援者らはエルサレムまで行進する。彼らはネタニヤフ氏の官邸外で野営をするつもりである。彼らは現在23歳の息子なしでは引き揚げないと断言してきている。
兵士の父、ノーム・シャリットはネタニヤフ氏のスピーチを非難してきている。
「ギラドがハマスの秘密の地下室で生気を失ってきている4年の結果として、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が何とかやってのけてきているのが彼の前任者の記者会見をリサイクルするだけなのを、私たちは残念に思う」と彼はイスラエル北部Rupinで言った。
ドイツの調停者を介してイスラエルとハマスとの刑務所交換取引に関する会談は昨年末に失敗した。
イスラエルが「人の死に対し責任がある」という数名をハマスが自由にしたがる限りでは、双方の側が囚人リストに承知できなかった。
彼らはまた捕虜が解放される場所についても不和だ。イスラエルは解放される捕虜をガザ地区に送りたい、ほとんどパレスチナ人は移動できないか、またはその領域より強制退去してきているために。ハマスはヨルダン川西岸地区出身者は西岸に帰還させたい。
ネタニヤフ氏のスピーチに応じて、ハマスは、シャリット曹長をめぐってイスラエルからどのような耳新しい申し出も受けてきていないと言った。
△写真はデモ5日目、金曜日の抗議デモのひとつ
(BBC 2 June 2010)
◇首相に難題 拉致された兵と囚人を「交換」 譲歩求め1万人デモ
パレスチナ自治区ガザ地区でイスラム原理主義組織ハマスに4年間監禁されているイスラエル兵の解放を求める世論が、同国のネタニヤフ首相を窮地に追い込んでいる。最大1万人に達するデモ隊は北部を縦断中で、8日にはエルサレムに到着する。ハマスは、イスラエルに収監されているパレスチナ人囚人1000人との「交換」を要求しているが、首相は、人選を含めてどこまで譲歩するかの判断を迫られそうだ。
兵士は06年6月にハマスの武装勢力などに拉致されたギラド・シャリト曹長(23)。ドイツがかねて解放交渉を仲立ちしている。
拉致から丸4年がたったのを機に、交渉停滞に焦る両親らが積極的にメディアに出演し、世論を盛り上げた。また、政府が曹長の解放をガザ封鎖の主要な目的の一つに挙げていたのに、先月中旬以降、封鎖を緩和したことも国民の怒りを買っている。
行進は先月27日、家族が先導して同国北部を出発。最大紙イディオト・アハロノトが賛同者名簿を連日掲載するなどキャンペーンを張り、閣僚3人も加わると宣言した。同紙の世論調査によると、国民の72%が「交換」に賛成している。
ネタニヤフ首相は1日、テレビ演説で「家族と痛みを分かち合いたい」と話し、「1000人」との交換に応じる意思を表明した。しかし、ハマス側の要求には、イスラエル側が「第一級のテロリスト」と呼ぶ一部パレスチナ組織幹部らの釈放が含まれ、これは拒絶する構え。特にパレスチナ解放機構(PLO) の「次期指導者」と期待され、パレスチナ人の間で人気が高いマルワン・バルグーティ氏の釈放については応じないとみられる。演説でも「殺人者を釈放すれば、(新たな)犠牲者を生む可能性がある」と語り、世論を見極めようとしている。
国民皆兵のイスラエルでは、捕虜となった自国兵士を取り戻すことは重大な内政問題だ。人数に大差がある条件でも過去にしばしば交換が行われた。
・イスラエル兵拉致事件:
イスラエル軍のギラド・シャリト曹長(当時は伍長)が06年6月25日、同国南部のガザ境界近くでハマスの軍事組織などとの戦闘の末に拉致された。軍は同月28日にガザに侵攻、11月の停戦までに民間人を含むパレスチナ人400人以上とイスラエル兵5人が戦闘で死亡したが、曹長は救出できなかった。生存の可能性は高いとみられるが、正確な居場所は把握されていない。
(毎日新聞 2010年7月3日)
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