見つけた 犬としあわせ

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2007/11/03

アパルトヘイトと言った勇気ある人


第64回ベネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞したジョナサン・デミ監督のジミー・カーター元米大統領についてのドキュメンタリー「Man From Plains」がいま米国の限られた都市で上映されている。まもなく全米の劇場で公開される見込みだ。
ジョナサン・デミは「サムシングワイルド」でぶっとんだ映画監督。以降、見逃さないようにしているつもりなんだが、ハイチの音楽ものとか、ドキュメンタリーフィルムは日本ではなかなか見ることができない。

◇「Man From Plains」では親近感を与える意外なジミー・カーター大統領と出会う。カーター氏の最近の著書、議論を呼ぶ「Palestine Peace Not Apartheid:アパルトヘイトでなくパレスチナの平和」出版の宣伝のための全米ツアーの行路を追うことで、「羊たちの沈黙」アカデミー受賞監督ジョナサン・デミはカーターという複雑な人物像を明らかにする。元気な老年の人の決断力と感情の激発とを持ち合わせるカーターは彼のメッセージを理解させるため国の全域に十字を記す。まさにそのメッセージが彼の信用と判断力に異議を唱えるメディアの猛襲を巻き起こす。「Man From Plains」はジミー・カーターの個人的な側面と公的の両方を探検する。衰えていないエネルギーと希望、彼の終生の深遠なる精神版の和解と平和に加えて、彼の強烈な正義感が彼に追求することを強いる。
なお「Man From Plains」の「 Plains」とはジミー・カーターの出身地のこと。
  
◇ジョナサン・デミには、2003年の作品に「The Agronomist(農学者)」というハイチ人ラジオジャーナリストで人権活動家のジャン・ドミニクについてのドキュメンタリーがあり、ゴッサムアワードで最優秀ドキュメンタリー賞を受賞している。ジャン・ドミニクは農学者でジャーナリストで人権活動家、大統領の特別顧問を務めたこともある。政治不安と経済の混乱が続くハイチで、事実を伝えるラジオ番組「レディオハイチ」を始めて反対勢力に何度もつぶされる。2回のクーデターでアメリカに亡命。やられてもやられても信念を貫き通して人々にエネルギーを伝える人だったが、結局は暗殺された。

◇カーター元大統領は、イラン核開発疑惑に対する米軍のイラン爆撃を臭わせる副大統領を先頭とするブッシュ政権の発言に対して、「爆撃は絶対に避け、平和的解決の道を探るべき」と断固発言している。
カーター氏は退任後も精力的に平和活動を続け、2002年にはその業績に対してノーベル平和賞が与えられた。彼が昨年出版した本、「Palestine Peace Not Apartheid」は大反響を呼んだ。
本は、イスラエルが パレスチナ自治区内にイスラエル入植者を守るための高い分離壁を迷路のように作ってパレスチナ人を分断隔離したアパルトヘイト政策の非人道性を指摘している。一部の知識人からは非難ごうごうだったものの、「真実を語ってくれた勇気に感謝」という読者の声も大きく、ベストセラーになった。
「Man From Plains」は、その宣伝のための全米ツアーを巡るカーター氏を追っている。監督のジョナサン・デミは、長いことカーター氏を尊敬していたそうだ。
映画で明らかになるカーター氏の衰えを見せないエネルギーには驚くばかりだ。本のツアーの合間に、ニューオーリンズでハリケーンカタリーナの被害者のための家を建て、カーターセンターの業務をこなし、執筆する、という過密スケジュールを彼は淡々とこなす。

◇ジョナサン・デミが ジョージ・ブッシュ大統領に苦言を呈す
「Man From Plains」がベネチア映画祭のワールド・プレミア上映で好評だったジョナサン・デミ監督はマスコミの取材に対し、「ブッシュ大統領は、戦争といかに敵を壊滅させるかに取りつかれている。それに比べてジミー・カーターは、大統領在任中もそれ以降も、平和のことで頭がいっぱいだ」と話した。
ジョナサン・デミは、昨年秋のパレスチナの人々の抱える問題を取り上げた著書の全米ツアーに同行し、その様子をアル・ゴアの「不都合な真実」の製作会社Participant Productionsと共同で映画にした。作品は複雑な中東の政治問題にも触れている。
「ジミー・カーターは私のような皮肉屋に平和への眺望を信じる可能性を与えてくれる」とデミは語る。

写真は監督のジョナサン・デミ(左)とジミー・カーター元米大統領、後ろにあるのは映画のポスターだ。