見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2008/02/02

バンクシーたちのアートアタック


ガザのエジプト側の壁が倒されて1週間が経過。欠乏している燃料などの生活必需品や医薬品は手に入ったのだろうか。イスラエルの封鎖を破った日、つかの間の自由を手にしたガザの人々の笑顔も2日目以降は、彼らが行ける国境に近い町アリーシュにすでに調達するモノがなく、たとえあっても高値だったりで、手ぶらで戻る人もかなりいたらしい。エジプト政府がアリーシュの商店に仕入れを許さなかったという話も聞いた。
ニュースによると、27日イスラエルのオルメルト首相とパレスチナのアッバス議長の会談でエジプトに壁の修復を要求するというので一致した。エジプト政府が申し出るアッバス(ファタハ)とガザを支配するハマスの直接会談にはオルメルトが反対を表明。アメリカ・イスラエルから圧力をかけられて困った立場のアラブ同胞のエジプトに手を貸そうとのイランの動きもあって、政治的な交渉でなんとかなるとはとうてい思えない。
さて、イスラエルのガザ封鎖に対しては国際的な非難が高まっている。
26日にはイスラエルをはじめとして、英国、フランス、イタリア、米国、南アフリカなどで抗議行動が行われた。1500人のイスラエル人がガザ近くまで行って抗議をしたほか、ロンドンのダウニング街では5000人が英国政府にイスラエルに圧力をかけるよう求めた。また米国でも10を超える都市で抗議活動が行われた。
一方で、約1500人のパレスチナ人(ガザ居住者)がアリーシュの町にとどまったまま、空港などへのアクセスをエジプト政府に認めるように要求している。彼らはハンストに入る用意である。この人たちは国外に仕事があったり、留学していたり、ガザの外での治療を必要とする患者とその家族などで、ガザから他の国に行くことを望んでいる。
政治的な解決方法が見つかりそうもないとき、「生きながら絞め殺しにあってる」人々が唯一頼れるのが、世界の市民がまとまって世界の関心をそこに集めることではないだろうか。そういう意味では、世界のあちこちから政治意識を持ったアーティストたちがベツレヘムに結集する動きには、人をひっぱる知力を感じて感動する。政治のあてにならなさがいっそう露骨になっている。アーティストのような別人種が動かせることってあると思うし、またそういう感性が政治的駆け引きの泥沼化には必要なんじゃないかと思う。

以前にも西岸の分離壁で絵を描くバンクシーのことは書きましたが、補足として昨年クリスマスシーズンにバンクシーの呼びかけに応えてベツレヘムに行った仲間のアーティストの記事をメールマガジン「NewsFanzine」で紹介しました。
イギリスのニューステイツマンの記事はこちらから読めます。「No-187:バンクシーたちのアートアタック
写真は、分離壁に描かれたバンクシーの作品のひとつです。

2008/01/29

帰還兵の殺人90%増


イラクとアフガニスタンから帰還した米兵の121人が殺人容疑で裁かれている。なじみのない遠い国の戦場から、故郷アメリカに戻っても、安堵どころか狂気はインサイドで続いていた。見慣れた街やコミュニティは彼らには国内戦線の場だった。そして家族や隣人がその標的になる。すごい現実です。
以下、1月14日デモクラシーナウ!ヘッドラインからーー。

◇故郷に帰還した退役軍人の121人が殺人罪で告発される
イラクとアフガニスタンの戦争の少なくとも121人の退役軍人が、兵役を終えて故国に戻った後に殺人を犯した容疑を受けているのを、ニューヨークタイムズ紙が暴露している。2001年のアフガン侵攻以来、現役の軍人と新たな退役軍人が掛かり合う殺人で、ほぼ90%の増加を数字が示すとタイムズ紙は報じた。犠牲者の約三分の一は配偶者、ガールフレンド、子ども、または親戚だったこと。そして退役軍人の多くが戦闘トラウマの徴候を見せる一方で、彼らが多くの場合、次のトラウマ的ストレス障害を値踏みされなかったか、殺人後まで診断されなかったと、タイムズ紙は報じる。

全米ホームレス根絶連合が退役軍人省と国勢調査局のデータをもとに推算し、昨年11月11日の退役軍人の日を前に公表した報告書によるとーー。
◇2006年、常時19万5800人の退役軍人がホームレス状態にあり、全体のホームレス人口、74万4000人の約26%にあたること。さらに同年にホームレス状態を経験した退役軍人の総数は49万5400人と推計している。
特にイラク、アフガニスタンからの帰還兵の置かれている状況は深刻。そのうちの20歳〜24歳で失業率が15%にもなっている。また2万人以上が身体に障害を持ち、イラク帰還兵の19%、アフガニスタン帰還兵の11.3%がPTSD(心的外傷後ストレス障害)など精神面での障害に悩まされていると指摘、ホームレスになる危険率が高いことを強調している。

写真は、殺人を犯したある帰還兵が常に持ち歩いたAK47とそのマガジン(弾倉)
その帰還兵は「人殺しは戦争の一部だが、国に帰ってまで人を殺したとは... 消せるものなら消したい」と話した。

2008/01/27

イスラエルの集団懲罰




ガザのエジプトとの国境壁を誰かが何カ所か崩して、そこから大勢のパレスチナ人がエジプトへ出られたとき、「やったー!」って感じで気分が清々した。
でもそのすぐあとにまたイスラエルが「許せない」とばかりにガザを急襲して、ハマスだか普通の市民だかを殺した。

◇23日、欧州議会副議長のルイーズ・モルガンティーニは次のようにコメントした。「壁が倒壊するとき、常に自由の感覚がある。」
「この数時間に何千人ものパレスチナ人がラファの国境の倒れた壁の隙間から、イスラエルがガザ市民に対して行った封鎖を突破していったのは、すべて真の抵抗の行いであり、人々の自由の肯定である。」
24日、エジプトの軍隊と警察は壁のほとんどを閉鎖したが、パレスチナ人の出入りは許されている。ムバラク大統領は、「パレスチナ人をエジプトに入れるように軍に命じた。なぜなら、パレスチナ人は飢えているからだ。武器をもたないかぎり、エジプト軍は必需品を買ったパレスチナ人をガザに戻すことになっている」と語った。エジプトの外務省報道官もガザで人道的な危機が続くかぎり、ラファの国境を開けておくと言っている。
警備にあたるエジプトの将校が「すべてがうまくいくように願っている。ここで起きてる光景を見て、しあわせだ」と答えたのを、イタリア紙の特派員が伝えている。
26日、緊急支援物資をガザに運び込んで、封鎖に抗議するイスラエルの平和団体連合は、「力の政策は失敗した、オリは破られた!封鎖の完全な解除を」と意気盛んだ。
連動してこの日、世界各地で封鎖に抗議する行動がとられた。ローマ、モデナ、ボローニャ、ナポリ、ミラノ、パリ、ポワチエ、トゥールーズ、ストラスブルグ、ボルドー、ナント、オルレアン、クリーブランド、ボストン、フィラデルフィア、サンフランシスコ、ロンドン、モントリオール、ケープタウンなどなどだ。
冒頭の欧州議会副議長モルガンティーニの声明はこう続くーー。
「壁が壊れるとき、常に自由の感覚がある。生きていくのに不可欠な食糧や医薬品などを買うためにエジプトに殺到した男性や女性のガザ南部から届く映像は、ほかでは見られない。4日間の完全封鎖と停電、イスラエルによる非人間的な包囲の自然な成り行きとして、この姿があるからだ。アッバス議長が正しく公言したように、責任はイスラエルの政策にある。閉じ込められ、人間性と国際法を完全に無視して集団的に懲罰するオリから人々が完全に消耗しながらも国境を超えたのはイスラエルの政策のせいなのだ。」
「私はオルメルト政権がこのメッセージを受け取ることを願っている。ガザの封鎖を終わらせ、急襲や軍事作戦を終わらせることだけが、どちらの人々にも安全を保障して和平の達成を尊重するのに必要な調和をもたらすのだ。」

1月25日ヘッドライン デモクラシーナウ!
◇エジプトがパレスチナのガザ地区との国境横断に断固たる措置をとる
ガザの進行中のイスラエルの急襲と全面封鎖から、ほっと安心の息抜きと救済を求めるパレスチナ人の殺到に、エジプトの部隊が断固たる措置をとりはじめている。
戦闘員らがラファの国境壁の数カ所を爆破して以来、ガザの人口150万人の半分ほどの人々がエジプトに流れ込んできている。今日早くにエジプトの治安部隊が群衆を押し戻そうとして水の大砲を使った。今日後ほど国境を非常線などで包囲する計画だとエジプトは述べた。全住民は生き延びようと努めているだけだと、ガザ居住者は言った。
ガザ居住者:「私たちは食べ物と、ガザに供給電力を持ち込むためのディーゼルエンジンを手に入れるために来た。私たちは食べたいし飲みたい、それだけです。」
イスラエルのガザへの急襲が続くとき、国境に絶望がわく。前夜、ラファ国境近くでハマスの戦闘員だと申し立てられる4人をイスラエル戦闘機が殺害した。ここ10日間にイスラエルは40人以上のパレスチナ人を殺してきている。イスラエルが燃料、食糧、医療救援物資を制限するとき、援助当局者らは人道危機について警告し続ける。イスラエル人数人が負傷しているパレスチナのロケット弾攻撃を止めるため措置を講じているのだとイスラエルは言う。ダボスの世界経済フォーラムで、イスラエルのシモン・ペレス大統領はガザは要するに「自分で自分を封鎖」しているのだと述べた。

イスラエル大統領シモン・ペレス:「われわれは封鎖していない、ガザがガザを封鎖している。彼らが発砲をやめた瞬間、どんな問題もなくなる。決してわれわれが彼らに向かって発砲を始めたのではない。われわれへの発砲をやめる瞬間、停戦となるのだ。」
ダボスではまた、アラブ連盟外相ムーサ事務局長がイスラエルの集団懲罰(虐待)を非難した。
アムル・ムーサ:「イスラエルはこの地区とその全住民を押し込めて締めつけてきている、彼らを飢えさせ、エネルギーや薬剤や食料、どんなものも与えるのを止めた、そしてこれは占領する強国としての彼らの負いめ(恩義)に反する。ご存じのようにガザとパレスチナ自治領はイスラエル軍の占領下にある、そしてこれは国際的な人道法に従うか、適用されるべきことである。イスラエル軍による重大な人道法の違反がある。その結果、住民らはカイロに行くことを除いては生き延びることができなかった、だからエジプトは彼らは助けてきている。もちろん、私たちはほかにもできることはする。」

◇武装勢力は壁の爆破後にブルドーザーで道をならし、車も通過できるようにした。住民らはエジプト側のラファのほか約40キロ離れたシナイ半島北部のアリーシュにも向かい、封鎖のために不足している乳製品や砂糖、炭酸ソーダ、たばこ、ガソリン、セメントなどを買い込んだ。
3回往復したという教師のアブムハンマド(45歳)は「まるでお祭りのようだ。生活苦の悲劇が毎日続くが、久しぶりに喜劇を体験できた」と皮肉を込めて語った。
イスラエルは昨年6月にハマスがガザを武力制圧してから、境界を全面封鎖し、人道物資以外の供給を大幅に制限している。ガザでは燃料不足のため数時間の計画停電が毎日続く。建築資材や機械のスペア製品などは輸入を禁止され、労働者は働き場を失った。
(朝日新聞2008年1月25日)

写真は、RafahToday.orgより1月26日の様子。離ればなれになっている親戚にエジプトで再会し抱擁している人たちの姿も見える。このサイトには見るのもつらい写真がたくさんある。でもそれがパレスチナ人、特にガザの人たちの現実だと思うと、なにもしないでいる自分が恥ずかしくなった。
写真はクリックすると拡大版で見ることができます。