見つけた 犬としあわせ

ニュースのファンジン、世界のニュースのサンプリング。 一枚のCDを聴くように一枚のコラージュを眺めるようにこれを体験して欲しい。

2015/05/02

窒息死する日本のメディア

◇古賀氏「自民圧力に屈した」

「報道ステーション」で元経済産業省官僚の古賀茂明氏が「官邸からバッシングを受けてきた」などと発言したことについて、テレビ朝日は28日、報道局の担当部長ら3人を戒告処分とし、早河洋会長ら3人が役員報酬を自主返上する、と発表した。

古賀氏は3月27日の放送で、テレ朝の早河会長らの意向で「今日が最後(の出演)」と発言。安倍政権に批判的だとして官邸からバッシングがあったと述べて、古舘伊知郎キャスターと口論になった。

会見した吉田慎一社長は「番組進行上、不適切な事態に至ったことを深く反省している。混乱を防げなかった責任は当社にある」と謝罪。これに対し古賀氏は、本紙の取材に「今回の処分は、自民党に対する単なるアリバイ作り」と述べ、「放送法に言及されて、テレ朝は自民党の圧力に屈した。言論機関として恥ずべきことだ」と話した。

立教大の砂川浩慶准教授(メディア論)は「放送現場が萎縮する恐れがある。古賀さんのように自由に発言するコメンテーターを採用せず、当たりさわりのないコメントをする人を使うようになれば、多様な論点が失われる。生放送は避けて不適切な発言は編集でカットするということにもつながりかねない」と指摘。「せめてコメンテーターの発言の自由は担保すると明言するなど、プラスの姿勢を示すべきだ」と語った。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015042902000134.html

◇ニュースメディアを窒息死させる日本の努力行動が徐々に進んでいる
NY Times 26 APRIL 2015

それは慎重に運営される日本のメディア界をぎょっとさせた予想外の抗議の行為だった。TVのレギュラー解説者で政権の猛々しい批評家の古賀茂明は、今日が彼の出演する最後の日と知らせるにつき、局の幹部らが彼の解任を求める政治圧力に屈したためとみなして、ニュース番組(テレビ朝日の”報道ステーション”)の生放送中にいきなり原稿による会話からそれた。

「私は首相官邸による激しいバッシングを経験してきた」と先月、古賀氏は明らかに面食らった番組司会者に話した。そして安倍晋三首相について彼が述べた批判的意見表明のために解説者として解任されたと言った。番組のもっとあとで、1月にフランスの諷刺新聞で殺害されたジャーナリストへの連帯のスローガンを利用して、古賀氏は「私は安倍ではありません」と書いてある掲示を掲げた。

このほとばしりは世間の抗議のあらしを引き起こした、そして見たところでは数百万の視聴者の前でテレビ解説者としてのキャリアを捨てる、気むずかしいような顔をした元官僚トップ、古賀氏の見もののためばかりではない。また大胆な反抗的態度という彼の怒りのショーは、ますます力ずくでニュースメディアに批判的な報道を弱めさせる右傾化した政府に国民の関心を集中させもした。

安倍政権は、彼の前任者が試みたいかなるものをもしのぐ、そして多くのジャーナリストに失望感を起こさせた批判を黙らせる戦術を用いて、政権とニュースメディアの間の力のバランスにおいて、根本的なシフトを巧みに実行しようとしていると、多くのジャーナリストや政治の専門家は言う。これには批判的なジャーナリストや古賀氏のような解説者の上司に対するより好戦的な苦情や、あくまでも政権のあらを見つけることに固執する地方放送局(発表の場)に対してのもっと露骨な報復が含まれる。同時に安倍氏は、非公式の寿司ランチで一流メディアの幹部や著名なジャーナリストを首尾よく味方に引き入れようとしていた。

一週間の訪問で日曜日アメリカに到着した首相は、NHKは政府の見解から離れすぎてはならないと言い放った会長を国の公共放送に新任してもいた。TVのニュース報道が意図的に事実を曲げないことを義務づける法律の下で安倍政権のお仲間は過度に批判的な局の放送免許の取り消しを公然と匂わした。

国の戦後の平和合意を取り外し、第2次世界大戦時期の日本のふるまいについてもっとポジティブな記述を発表するために、彼が保守的なアジェンダを推進しているとき、同時に安倍氏の奮闘には報道に対して熱意を冷ます効果があった。報道機関の言論の自由を妨げることは、たとえば平和憲法を改正すること、または国の失速する原子力産業を再び飛びだたせることでも、幅広い庶民の支持を享受しない可能性のある重要な変更を政府にやりやすくさせると専門家は警告している。

「安倍政権はパラノイアの際にあるメディアを用いて強迫観念を与えている」と、ニューズウィーク日本版元編集長で現在一目置かれるフリー・ジャーナリストの竹田圭吾は言っている。「特定の新聞やTV番組を細かい点に至るまで管理するためにここまで強度の努力行動を僕は一度も見たことがない。」

言論の自由を奪おうと奮闘していることを政府当局者が否定する間、多くのジャーナリストや解説者、メディア専門家らは、政府の作戦行動がすでに安倍政権に関する報道を抑えてきていると言う。解説者として古賀氏を使っていたニュース番組、報道ステーションのような、かつて精力的だった発表の場が、今では当局の激しい憤りを買うのを避けるために自分の報道を検閲するかまたは批判的意見を取り除いていると彼らは言っている。

特に、これらの戦術の幾つかがアメリカのような他の民主主義国家では慣例とみなされて以来、かなりの批判が論争なしにごろりと寝返る代わりに発表の場に至る。多くの主要な報道機関は自己検閲で責められていた、そして権力のお目付役(番犬)として役に立つとの日本の報道機関の中のいくじのない伝統と、ここで専門家が言うものに再び目を向けさせる。

与党は「おい、お前が言ったことは気に入らない、だから体育館の裏でオレと対戦だ」と言ういじめっ子のようにふるまっていると、野党議員の枝野幸男は言った。「そしておとなしく従う側もまた、報道機関として自尊心を欠いている。」

これは、確かな野党がないから数年間政権を握ったままにさせられたらしい首相となんとかやっていかざるをえないと言う多くの日本のジャーナリストによって認められる問題点だ。その他のジャーナリストは朝日新聞の悲運を経験したくないと言う。リベラルな朝日新聞は昨年秋に激しい批判を受け、2011年福島原発事故のような要注意の問題のきわどい調査報道を削減することによって、降伏し、抵抗をやめているように見えた。

学者は、1937年南京大虐殺やいわゆる戦時の軍売春宿の慰安婦の慣習のような話題に対し、安倍政権がもっと政府当局の話に忠実に従うことを教科書出版者に迫っている学校教育を含め、ニュースメディアを超えてより広範の社会に広がる畏れのムードを説明する。

「朝日新聞や他のメディアに対するこれらの前例のない攻撃は、社会全体がなにか同じでないことを言うのを恐れるようになっている、偏狭な順応を引き起こしている」と、早稲田大学メディア学科教授の花田達郎は言っている。「安倍は精通して彼自身の政治目的のためにこれを利用している。」

古賀氏の非難は、以前は強力なニュース番組がいかにその報道をトーンダウンしたように見えるかについて、希少な一瞥を提供する。

決して与党自由民主党のお気に入りではないとはいえ、二人の日本人捕虜の死に帰したシリアでの人質の重大局面の安倍の扱いを古賀氏が批判した1月下旬の番組後、報道ステーションは圧力が増すのを感じた。報道ステーションを放送する局、テレビ朝日の従業員(まだそこで働いているので誰であるか明らかにしないよう求めた)と古賀氏は、番組の前と比較して、局の政治記者たちが首相官邸の政治秘書官から怒りの電話やメールを受け取っていたと言った。

異なる制作スタッフがいる報道ステーションに局の記者を背かせることでその戦術は成功したようだったと彼らは述べた。報道ステーションのプロデューサが抵抗したあるもの、番組が”偏りがない”のを確実にするために、番組は彼らにあらかじめその脚本を示すことを記者と番組編集者らが要求した。2月、安倍政権のトップ官僚、菅義偉官房長官が「テレビの解説者」による人質事件についての「完全に間違ったコメント」に関して痛烈に話すのにジャーナリストとのオフレコのブリーフィングを用いたとき、政府は再び番組に対する圧力を強化した。

2月24日のブリーフィングの筆記録によると、局はコメントを放送することで法律を破ったかもしれないと菅氏は警告した。「もしそれが私だったら、放送法に違反したと彼らに教えたい」と、筆記録によると菅氏は笑いながら述べた。
その筆記録がテレビ朝日の会長、早河 洋(ひろし)に進んだと古賀氏と他の人は言っている。「私を厄介払いしろとこれがテレビ朝日に警告した」と古賀氏は述べた。「このメモがあらゆる主要のニュース販路によって見られることになるのを、そして早河会長に示されるのを菅は知っていた。」

これがまさしく起こったことその通りだと古賀氏は言った。報道ステーションの解説者として少なくとも月に一度登場する3年半後の2月、もはや番組には戻らないことが彼にはわかった。ほぼ同時に、別の批判的な解説者で政治圧力に屈するのを拒んでいたプロデューサもまた番組から取り除かれた。

この動きが、解説者として最後の出演となる3月27日の彼の激発につながったと古賀氏は述べた。

局はインタビューの要請を拒んだ。局の早河会長は記者会見で、解説者のラインナップを変更することをお決まりの決定と呼んだことで政治圧力が役割を果たしたことを否定した。菅氏は政治圧力という古賀氏の非難は「根拠がなかった」と記者らに告げた。

それでも、与党は圧力をかけ続け、なぜ古賀氏がテレビの生番組で非難するのを許されたのか説明するために2週間前にテレビ朝日の幹部を議会に召喚する。自民党は、これらの非難それ自体が放送法に違反している可能性があるとの警句によって、議会召喚を説明した。

「人によると彼の手段を好まないが、古賀氏は安倍政権のメディアへの圧力に世間の注意を引いた」と独立したオンラインニュース番組を運営するメディア評論家でニューヨークタイムズ紙のかつての研究員、上杉 隆は述べた。「これは、政府と自己検閲(自粛)するジャーナリストの両方にとって不都合な真実でした。」

http://www.nytimes.com/2015/04/27/world/asia/in-japan-bid-to-stifle-media-is-working.html?smid=tw-share&_r=0

△画像はマイルス・デイヴィスのペインティング
http://www.openculture.com/2014/10/the-paintings-of-miles-davis.html

アルジャジーラが世界に伝える

◇アルジャジーラ、辺野古を世界に配信「大きな問題」
沖縄タイムズ 2015年4月24日

名護:中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」取材班が23日、名護市辺野古沖でボーリング調査が続く海上を取材した。近く、新基地建設をめぐる日本政府と沖縄の関係や県民の抗議行動などについて世界配信する。
ハリー・フォーセット日本・韓国特派員は「小さな島で起きている問題ではない。日米政府や米軍基地、日本と沖縄の関係など、さまざまな問題をはらんだ大きな問題だ」と話した。

アルジャジーラはカタール・ドーハに本拠地、世界各地に支局を構える国際ニュース専門局。普天間飛行場や嘉手納基地のほか、読谷村では沖縄戦に関する取材も予定しているという。2分半のリポートにし、英語で世界配信する予定。

フォーセット特派員は「アジア太平洋一帯のニュースは注目されている。本社のドーハに沖縄の企画を伝え、ドーハも沖縄に注目している」と説明。
「日本と沖縄が明確に対立している中で、今後どうなるのか取材したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=112990

▽日本の島民たちは新たな米軍基地の建設に反対する



メーデーを知らない子どもたち

メーデーを知らない日本の子どもたち
▽2015年の世界のメーデー(5月1日)より

#イタリーのミラノ:EXPO2015ミラノ万博でデモ参加者が警察と衝突
(AFP Photo / @f_monteforte)

#メキシコ:メキシコシティのZócaloでアナーキストが祝典を催す

#アルゼンチン:プラザデマヨ(Plaza de Mayo)の大規模なデモ行進
(#DiaDelTrabajador p/v @PTSPrensa )

#トルコ:イスタンブールでのメーデー集会の間に抗議者がトルコの機動隊に花火を向ける
(@PhotographyGO @AFP #POTW) 

#アメリカのシカゴ:重装備の護送隊と共にデモ行進する
(#M1Chi #Mayday  #Chicago)

2015/04/30

海外メディアから批判される理由

◇特派員「外務省が記事を攻撃」 独紙記者の告白、話題に
朝日新聞 2015年4月28日

ドイツ有力紙の元東京特派員が今月、離任に際して書いた「告白」記事が話題になっている。昨年来、「日本の外務官僚たちが、批判的な記事を大っぴらに攻撃しているようだ」と指摘している。米主要紙の東京特派員は、記事中の識者の選定を巡り、日本政府から細かい注文をつけられた。日本の姿を世界に伝える在京特派員と日本政府がぎくしゃくしているのはなぜか。関係者に直接、話を聞いた。

注目されているのは、独紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)のカルステン・ゲルミス記者(56)が書いた英文の寄稿「外国人特派員の告白」だ。日本外国特派員協会の機関誌「NUMBER 1 SHIMBUN」4月号に掲載された。これを、思想家の内田樹(たつる)さんがブログに全文邦訳して載せ、ネット上で一気に広がった。

ゲルミス記者は寄稿で、日中韓の対立について書いた自分の記事に対する、日本政府からの「侮辱」的な抗議について記した。

ゲルミス氏が発端となる記事をFAZ紙に掲載したのは昨年8月14日のこと。「漁夫の利」と題し「安倍政権が歴史の修正を試み、韓国との関係を悪化させているうちに、中韓が接近して日本は孤立化する」という内容の記事だった。

これに対し、中根猛・駐ベルリン大使による反論記事が9月1日付のFAZ紙に掲載された。

ここまではよくある話だが、寄稿が明かしたのは、外務省の抗議が独本社の編集者にまで及んでいた点だった。記事が出た直後に、在フランクフルト日本総領事がFAZ本社を訪れ、海外担当の編集者に1時間半にわたり抗議したという。

寄稿によると、総領事は、中国が、ゲルミス氏の記事を反日プロパガンダに利用していると強調。さらに、総領事は「金が絡んでいると疑い始めざるを 得ない」と指摘した。また、総領事は、ゲルミス記者が中国寄りの記事を書いているのは、中国に渡航するビザを認めてもらうために必要だからなのでしょう、 とも発言したという。

ゲルミス氏は寄稿で、「金が絡んでいる」との総領事の指摘は、「私と編集者、FAZ紙全体に対する侮辱だ」と指摘。ゲルミス氏は「私は中国に行ったことも、ビザを申請したこともない」とも記している。
(略:全文はウェブサイトよりお読みください)

現在勤務する独北部ハンブルクで取材に応じたゲルミス氏は、「海外メディアへの外務省の攻撃は昨年あたりから、完全に異質なものになった。大好きな日本をけなしたと思われたくなかったので躊躇(ちゅうちょ)したが、安倍政権への最後のメッセージと思って筆をとった」と話した。

ゲルミス氏が、機関誌に寄稿したのは「日本政府の圧力に耐えた体験を書いてほしい」と、特派員協会の他国の記者に頼まれたからだ。その後、記事への反応を見ると、好意的なものが多かったが、「身の危険」をほのめかす匿名の中傷も少なからずあったという。「日本は民主主義国家なのに歴史について自由に議論できない空気があるのだろうか」と語る。

シュトゥルム氏(総領事から直接抗議を受けた上司)もこう話した。「我々は決して反日ではない。友好国の政府がおそらく良いとは思えない方向に進みつつあるのを懸念しているから批判するのだ。安倍政権がなぜ、ドイツや外国メディアから批判されるのか、この議論をきっかけに少しでも自分自身を考えてもらいたい」

http://www.asahi.com/articles/ASH4P6GZ3H4PUHBI02T.html?ref=nmail


△「ある海外特派員の告白 5年間東京にいた記者からドイツの読者へ」

カルステン・ゲルミス(Carsten Germis)

私が今離れてゆこうとしている国は、2010年1月に私が到着したときに見た国とはもう別の国になってしまった。表面的には同じように見える。けれども社会の空気は緩慢に、だが、あらわに変化しつつある。その変化は過去1年間の私の書いた記事にしだいに色濃く反映するようになった。

日本の指導層が考えていることと海外メディアが伝えることの間のギャップは日々深まっている。それによって日本で働く海外ジャーナリストたちの仕事が困難になっていることを私は憂慮している。もちろん、日本は報道の自由が保障された民主国家であり、日本語スキルが貧しい特派員でも情報収集は可能である。それでもギャップは存在する。それは安倍晋三首相のリーダーシップの下で起きている歴史修正の動きによってもたらされた。

この問題で日本の新しいエリートたちは対立する意見や批判をきびしく排除してきた。この点で、日本政府と海外メディアの対立は今後も続くだろう。 
私自身の立場を明らかにしておきたい。5年を過ごした日本に対する私の愛着と好意は依然として揺るぎないものである。出会った多くのすばらしい人々のおかげで、私の日本に対する思いはかつてより強いものになった。ドイツ在住の日本人の友人たち、日本人の読者たちは、私の書いた記事に、とりわけ2011年3 月11日の出来事からあとの記事のうちに、私の日本に対する愛を感じると言ってくれた。

しかし、残念ながら、東京の外務省はそういう見方をしていないし、日本メディアの中にも彼らと同じように私をみなしている人たちがいる。

彼らにとって私は、他のドイツメディアの同僚たち同様、日本に対して嫌がらせ的な記事を書くことしかできない厄介者らしい。日経のベルリン特派員の言葉を借りて言えば、日独両国の関係が「フレンドリーなものでなくなった」責任は私たちの側にあるようだ。

本紙は政治的には保守派であり、経済的にはリベラルで市場志向的なメディアである。しかしそれでも本紙は安倍の歴史修正主義はすでに危険なレベルに達しているとする立場に与する。これがドイツであれば、自由民主主義者が侵略戦争に対する責任を拒否するというようなことはありえない。もしドイツ国内にいる日本人が不快な思いをしているとしたら、それはメディアが煽っているからではなく、ドイツが歴史修正主義につよい抵抗を覚えているからである。

私の日本での仕事が始まった頃、事情は今とはまったく違っていた。2010年、私の赴任時点で政権党は民主党だった。私は鳩山、菅、野田の三代の内閣をカバーし、彼らの政策を海外メディアに伝えようした。私たちはしばしば政治家たちがこう言うのを聴いた。「まだまだなすべきことは多く、もっとうまく国政運営ができるようにならなければならない。」

例えば、海外ジャーナリストは頻繁に意見交換のために岡田克也副総理に招待された。首相官邸では毎週ミーティングが開かれ、当局者は程度の差はあれ直面する問題について私たちと議論することを歓迎していた。問題によっては私たちは政府の立場をきびしく批判することをためらわなかった。しかし、当局者たちは彼らの立場をなんとか理解させようと努力を続けた。

反動は2012年12月の選挙直後から始まった。新しい首相はフェイスブックのような新しいメディアにはご執心だったが、行政府はいかなるかたちでも公開性に対する好尚を示さなかった。財務大臣麻生太郎は海外ジャーナリストとはついに一度も話し合おうとしなかったし、巨大な財政赤字についての質問にも答えようとしなかった。

海外特派員たちが官僚から聴きたいと思っていた論点はいくつもあった。エネルギー政策、アベノミクスのリスク、改憲、若者への機会提供、地方の過疎化などなど。しかし、これらの問いについて海外メディアの取材を快く受けてくれた政府代表者はほとんど一人もいなかった。そして誰であれ首相の提唱する新しい構想を批判するものは「反日(Japan basher)」と呼ばれた。5年前には想像もできなかったことは外務省からの攻撃だった。それは私自身への直接的な攻撃だけでなく、ドイツの編集部にまで及んだ。

安倍政権の歴史修正主義について私が書いた批判的な記事が掲載された直後に、本紙の海外政策のシニア・エディターのもとをフランクフルトの総領事が訪れ、「東京」からの抗議を手渡した。彼は中国がこの記事を反日プロパガンダに利用していると苦情を申し立てたのである。
冷ややかな90分にわたる会見ののちに、エディターは総領事にその記事のどの部分が間違っているのか教えて欲しいと求めた。返事はなかった。「金が絡んでいるというふうに疑わざるを得ない」と外交官は言った。これは私とエディターと本紙全体に対する侮辱である。

彼は私の書いた記事の切り抜きを取り出し、私が親中国プロパガンダ記事を書くのは、中国へのビザ申請を承認してもらうためではないかという解釈を述べた。

私が? 北京のために金で雇われたスパイ? 私は中国へは行ったこともないし、ビザ申請をしたこともない。もしこれが日本の新しい目標を世界に理解してもらうための新政府のアプローチであるとしたら、彼らの前途はかなり多難なものだと言わざるを得ない。当然ながら、親中国として私が告発されたことをエディターは意に介さず、私は今後も引続きレポートを送り続けるようにと指示された。そしてそれ以後、どちらかといえば私のレポートは前より紙面で目立つように扱われるようになった。

この2年、安倍政権の偏りはますます増大してきている。
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2014年に事態は一変した。外務省の役人たちは海外メディアによる政権批判記事を公然と攻撃し始めたのである。首相のナショナリズムが中国との 貿易に及ぼす影響についての記事を書いたあとに、私は召喚された。私は彼らにいくつかの政府統計を引用しただけだと言ったが、彼らはその数値は間違っていると反論した。

総領事と本紙エディターの歴史的会見の2週間前、私は外務省の役人たちとランチをしていた。その中で私が用いた「歴史をごまかす(whitewash the history)」という言葉と安倍のナショナリスト的政策は東アジアだけでなく国際社会においても日本を孤立させるだろうとう考えに対してクレームがつけられた。口調はきわめて冷淡なもので、説明し説得するというよりは譴責するという態度だった。ドイツのメディアがなぜ歴史修正主義に対して特別にセンシティブであるかについての私の説明には誰も耳を貸さなかった。

政府当局者から海外特派員へのランチ招待数が増えていること、第二次世界大戦についての日本の見解を広めるための予算が増額されていること、そして海外特派員のボスたちがしばしば招待されていること(もちろん飛行機はビジネスクラス)は私の耳に届いていた。たぶん彼らへの提案は慎重に行われたのだと思う。 このエディターたちは最高レベルの政治的PRにさらされてきており、そういうものに慣れ切っているから、うかつなことをすると逆効果になるからである。

私が中国から資金を受け取っているという総領事のコメントについて、私が公式に抗議したとき、私が告げられたのは、それは「誤解」だということであった。

以下は離日に際しての私のメッセージである。
日本の政治的エリートたちの内向き姿勢と、海外メディアとオープンなディスカッションを避ける政府高官たちの無能はいまのところ報道の自由に影響を与えるほどには至っていない。それでも民主制においては、政策を国民と国際社会に対して説明することがどれほど重要であるのかを安倍政権がよく理解していないということはあきらかである。

海外特派員の同僚たちから、自民党は広報セクションに英語を話せる職員を配置していないとか、外国人ジャーナリストには資料を提供しないとかいう話を聞いても、私はもう驚かなくなった。海外旅行が多いことを自慢している現首相が、海外特派員協会で私たちを相手にスピーチするための短い旅についてはこれを固辞していると聞いても、もう驚かなくなった。ただ、私の気持ちが沈むのは、この政府が海外メディアに対して秘密主義的であるだけでなく、自国民に対しても秘密主義的であるからである。

過去5年間、私は日本列島を東奔西走してきた。北海道から九州まで東京以外の土地では私が日本に対して敵対的な記事を書いているという非難を受けたことは一度もない。反対に、さまざまな興味深い話題を提供され、全国で気分のよい人々に出会ってきた。

日本は今もまだ世界で最も豊かで、最も開放的な国の一つである。日本に暮らし、日本についてのレポートを送ることは海外特派員にとって誠に楽しい経験である。

私の望みは、外国人ジャーナリストが、そしてそれ以上に日本国民が自分の思いを語り続けることができることである。社会的調和が抑圧や無知から由来することはないということ、そして、真に開かれた健全な民主制こそが過去5年間私が住まっていたこの国にふさわしい目標であると私は信じている。

(全文は内田樹氏のブログ↓をお読みください。)
http://blog.tatsuru.com/2015/04/10_1343.php

インターネット政党

◇インターネット政党「新党憲法9条」

選挙に時間や労力や費用をかけない!
日本のメディアを変える!

"憲法9条は最強の安全保障政策!"と言って
天木直人元駐レバノン大使がインターネット上に
仮想政党「新党憲法9条」をたちあげたよ!

党名は、政党として成り立ったとき、
みんなの意見を聴いて決めてもよいとのことです!

http://new-party-9.net/archives/322

2015/04/28

核廃棄物で埋まる中間貯蔵施設

◇日本:多量の核廃棄物が福島で蓄積されているのを無人機がとらえる
映像は2015年4月に無人機が記録した福島の中間貯蔵施設
(RuptlyTV)




4月16日、海外メディアが無人機によって撮影された中間貯蔵施設の映像を公開した。
今年3月から福島県の中間貯蔵施設に津波による福島第一原発大災害で生じた汚染土壌を格納した袋が運び込まれていることは知っていた。でも、ここまでの量に膨れあがっているとは想像もつかなかった。もちろん、日本のメディアは国民にこの事実を知らせてくれない。これほどすさまじい事態になっているとはね!言わずもがなだが、この袋は今後ずっと増え続けるわけだ。石棺でもなんでもいいから、とにかく漏れ出ないように蓋をしてくれ!と思わずにはいられない。こんなことを体験しても、再稼働するとは、世界が驚愕するわけだ。

この記録は、人間の誤った選択から生じた悲惨さを語る上で人類の歴史に永遠に刻まれるのだろう。
でもこれは福島だけのことではない。不幸にも、受け入れた先の他県、茨城、栃木、千葉でも同じなのだ。


2015/04/26

ウクライナの冷血な殺人

◇暗殺されたウクライナ人作家オレシ・ブジナ(Oles Buzina)によって語られるウクライナの歴史
これが、欧米が見たいウクライナの民主主義か?
RUSSIA INSIDER 16 April 2015

もしもロシアで反対勢力の3人の人物、有名な作家と二人の政治家が二日の範囲に殺害されたならば、どうなっていたか想像できますか?ネムツォフをめぐって欧米のヒステリーの後、私たちはどのようになりそうか漠然とした印象を抱く。
4月13日Sergey Sukhobok、4月15日オレフ・カラシニコフ(Oleg Kalashnikov)、4月16日オレシ・ブジナと、オレシの暗殺はこの4日間で続けて3人目の政治的殺害だった。
この政治的な暗殺について、なぜ欧米メディアは沈黙してるのか?このすべてが、この2カ月のウクライナの9件の怪しげな自殺の後に起こった。
人に読めるのは、犠牲者に「親ロシア派」や「反マイダン(Maidan:政権転覆の独立広場)」と名称をつける欧米のジャーナリストを基にしたロシアやウクライナからの幾つかのツイートだけだ。この点では、彼らは暗黙の内に正当化してこの冷血な殺人の重要性を見くびりたいと思っている。「この暗殺はクールだ、次に進もう」と言っているのが聞こえるともいえるところである。
オレシは自分のことを真のウクライナ人愛国者とみなしたので、間違いなく親ロシア派ではなかった。しかしながら、学識による歴史家として、ウクライナ人とロシア人との間の深くて破ることのできない歴史的、宗教的、文化的つながりについて多くを知って以来、反ロシアでもなかった。
キエフでの最近の2件の親ロシアの公人の暗殺は「挑発」でウクライナを「不安定にする」企てであるとの、ポロシェンコ(ウクライナ大統領)の声明は皮肉それ以上のものだった。キエフ警察の現トップはネオナチのアゾフ大隊元副司令官。透明でわかりやすい調査を本当に期待できるのか?
国家保安機関のウクライナ人顧問アントン・ゲラシェンコはすでにオレフ・カラシニコフとブジナ両人の殺害に関して、二人をプーチンの神聖な犠牲者と呼んでプーチンを非難した。
http://russia-insider.com/en/listen-very-interesting-short-history-ukraine-assasinated-oles-buzina/5751
△写真は、内戦、マイダン(Maidan:政権転覆の独立広場)、ポロシェンコ、ヤツェニュク(Yastsenyuk:ウクライナ首相)に反対した有名なウクライナ人作家でジャーナリストのオレフ・カラシニコフ。
◇ウクライナの怪しげな自殺
ロシア・インサイダー 05 April 2015
主流メディアは、反マイダンの政治家の一連の怪しげな死を含め、どんな否定の行為も無視されるマイダン後のウクライナ政府のためにひどく不在状態だ。
2月27日ロシアの野党指導者で元副首相のボリス・ネムツォフのモスクワでの殺害に次いで、欧米には待望の好機があった。強烈なあてこすりからクレムリン指導の政治的殺人のあからさまな非難までに及び、欧米のメディアと政治家はロシアのウラジミル・プーチン大統領をフットボールの練習用標的人形として扱う機会を見逃さなかった。

欧州議会はネムツォフの死への国際的調査をせきたてる決議を採択して、欧州安全保障協力機構、欧州理事会、そして国連が、徹底的調査で役割を果たせることを示唆した。

アメリカの上院議員ジョン・マケインとリンジー・グラハムはネムツォフ殺害を非難する上院決議を提出した。決議はまた、殺害に独立した調査を遂行することや、言論の自由、人権、法の原則をロシアで前進させるための努力を強めることを、バラク・オバマ大統領と国際社会に求めもした。
加えて、ロシア連邦での人権侵害に制裁規定を引き続き設けたまま、ロシアの人権活動家に対してアメリカの支援を増すようにオバマをせっついた。
もちろん、それは欧米中に伝わった。
そうこうするうちに、ウクライナ南東部の親ロシア領域の外側で同じ時期に以下が報告された:
*1月29日:ハリコフ(ウクライナ北東部の市)管区の地元自治体の前議長(委員長)、Alexey Kolesnikが、首をつった。
*2月24日:野党(Partia Regionov)議員、Stanislav Melnikが、銃で自殺した。
*2月25日:メリトーポリの市長、Sergey Valterが、彼の裁判の数時間前に首をつった。
*2月26日:メリトーポリ警察の副長官、Alexander Bordiugaが、彼のガレージで死体で発見された。
*2月26日:ウクライナ議会の元議員でZaporizhiの元市長、Alexander Peklushenkoが、射殺死体で発見された。
*2月28日:元国会議員の野党(Partia Regionov)党員、Mikhail Chechetovが、キエフの自分の17階のマンションの窓から”落下”した。
*3月14日:オデッサで32歳の検事、Sergey Melnichukが、9階から”落下”して死んだ。
Partia Regionovは党員の死にあからさまにウクライナ政府を非難して、この重大事の発生に反応を示すよう欧米に訴えた。「直ちにウクライナの状況に反応を示し、ウクライナ政府の犯罪行為に対し法的査定を言い渡すように、私たちは欧州連合、PACE(欧州評議会議員議会)、欧州および国際的な人権団体に訴えます、ウクライナ政府は対抗馬を冷笑的に傷つけている。」
これらの死のすべて、またはなんであれ、ウクライナ政府に責任があったと、私たちは上に述べたことから推断することはできない。だが、アメリカのメディアや政治家にもかかわらず、ボリス・ネムツォフの死の責任がロシア政府にあったこともまた私たちには推断できない。
巨大なネクサス・ニュース・データベースの検索は、上記の最後のSergey Melnichukを除いて、ウクライナ人故人のどのような言及も見つけられなかった、しかし、これは明らかに同一人物ではない。そういうわけで、上記のリストにある死亡者のいずれも、欧米側のウクライナ政府のせいにされなかったと思われる。
死者のいずれかの国際的調査の要求はどこか?アメリカ、またはヨーロッパのどこに?マケイン上院議員はどこですか?
http://russia-insider.com/en/ukraines-mysterious-suicides/5320